異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

文字の大きさ
227 / 247
ガンガルシア王国編

209話 主人公、恐怖を知るー2

しおりを挟む
 

 穴から出てきたのは、巨大な翼竜だった。

 ドラゴンに似た姿。しかし尻尾が、ヘビの頭のようになっている。シグルトが言っていたが、これがワイバーン?

 しかも、このワイバーンには、その尾が8本もあるのだ。
 雰囲気が尋常ではない。ものすごいプレッシャーを感じる。少しでも動けば、殺られる。そんな感じがする。

 自分がドラゴンであると分かってから、こんな感覚を感じたことはない。ドラゴンは精神耐性が高い。だから、何事にもあまり動じなくなると言われていたが、その僕が動揺している。

 怖い。いますぐ逃げたい。そう感じているのだ。

「なっ、何よ、これ。仲間?いえ、ドラゴンじゃない…?」
「…。これ、ワイバーン。だけど何か違う…。」

 アリシアとシグルトも、ワイバーンの違和感に気付いたようだ。

 あまりの恐怖にアリシアが走り出す。

 ダメだ!いま動いたら!

 走り出したアリシアに向かって、ワイバーンの8本の尾のひとつから何かが放たれる。

 危ない!
 僕はアリシアをかばう。

 僕の身体に何かが突き刺さる。ドラゴンの防御能力は最高のはず。その僕の身体に傷をつけたのは、小型のヘビのような生物だった。刺さったまま、身体の中へ侵入しようとしている。

「いやーっ!!!」

 アリシアの悲鳴がする。アリシアを見ると、防御結界を突き抜けて、小型のヘビがアリシアの腕や腹に食い付き、身体の中に入ろうとしていた。

 しまった!全てを防ぐことはできなかったのか!それに防御結界が破られた?

「タクミ!いまガルシア様を呼んだだよ!アリシアはオラが診るから、タクミはシグルトを守るだ!」

 隠れていたタムとミライが飛び出してきた。

 ミライは僕の頭の上に乗る。
「タクミ!あれは特A級のワイバーンだよ!過去に数回しか現れたことは無いけど、そのどれも、ものすごい数の被害が出てる。マズイよ。あれは…。その食いついてるヘビみたいなヤツは、ディル!炎で焼けば離れるから、自分で炎出して!」

 自分で自分の身体に炎を吐くの?
 嫌だが仕方ない。このディルに身体を食い破られるのは、もっとイヤだ。

 僕が炎を吐くとすぐにディルは離れる。僕はすかさず地面に落ちたディルを焼却する。

 シグルトはそれをジッと動かずに見ていた。獣人の本能で、動いてはいけないと分かっているようだ。

 僕はドラゴンの姿からドラゴノイドに変現して、シグルトにハルバードを渡す。

「…。タクミ?タクミがドラゴン?」
 少し混乱しているようだ。
「黙っていてごめんね。でも、今は事情を説明してる時間はない。あのワイバーンから、逃げなくちゃ。あれはヤバイ…。」

 僕の真剣な表情に、シグルトは黙ってコクリと頷く。

「アイツのディルは、防御結界も突き破る。叩き落として、炎で焼くしかない。いいね!」

 ワイバーンは悠然としている。
 僕達のことなど、何とも思っていない。動いたから攻撃した。それだけのようだ。

 怪異と呼ばれる怪物は人を襲う。しかし、このワイバーンは人を見ても、自ら襲ってくる気配はない。

 もしかして、これがタイジュが言っていた異世界の異形のモノ?
 ワイバーンは、こちらの動きをよく見ている。ドラゴンによく似た頭と8本の蛇の頭。それぞれがこちらを見ている。前も後ろも全てをみているワイバーンには、隙がない。今すぐ攻撃する気は無さそうだが、逃がす気も無いようだ。

 僕とシグルトは警戒しながら、タムとアリシアに近付く。移動する僕ら目掛けてディルが飛んでくる。それを弾き飛ばしながら、走る。

 シグルトの腕にディルが数匹食い付いたが、炎で引き剥がして、焼却する。

「アリシアのケガはどう?」

 防御結界を破られたショックと、ディルに身体を食い破られる感触に耐えられなかったアリシアは気絶している。

「腕のキズは大したことないだが、腹のキズが…。無理矢理ディルを引き剥がそうとしたから、内臓が傷付いてるだよ。オラはあまり、治癒は得意じゃないから時間がかかるだ。」

 アリシアのお腹のキズを押さえているタムの手から、血があふれている。

 僕は、治癒の術を習っていない。
 くそっ、こんなことならちゃんと教えて貰うんだった。

 自分には防御能力があるから、大丈夫だと思い込んでいた。仲間を助けるためには、それだけじゃダメなんだ。

 出来ることが多い方がいいだろ?って誰かに言われた記憶があるが、本当にその通りだ。

「このキズでは、アリシアは動かせない。ここで時間を稼ぐしかないだよ。ガルシア様もいつ来るか分からないし。」

 今すぐここから逃げたい。その一心だが、そういうわけにもいかないようだ。アリシアを守らなくては!

「シグルト、僕がヤツの気を引く。君はタムとアリシアを守ってくれ。」

 僕の言葉に、シグルトは素直に頷く。
 ハルバードでも倒せない相手がいること。挑んではいけない相手がいることを、ようやく理解したようだ。

「シグルト、ディルが飛んできたら一度ハルバードで弾くのだ。そうすれば、防御結界で防げる。」
 デュラハンがシグルトに助言している。パートナー精霊は一度受けた攻撃を分析し、回避行動を模索する。ディルを防ぐための最善の手段がそれなのだろう。

 タムと碧は、アリシアの治癒に集中している。ここはシグルトに任せるしかない。

 僕は覚悟を決める。
 出来るだけ、この場所からあのワイバーンを引き離す。勝てるとは思えない。僕は戦闘の素人だから。
 それでも…。
 それでもやらなくてはいけない。

 仲間を守るために!


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

処理中です...