異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

文字の大きさ
228 / 247
ガンガルシア王国編

210話 主人公、恐怖を知るー3

しおりを挟む
 

 デュラハンの助言では、ディルは一度弾くと防御結界で防ぐことが出来るらしい。

 僕はソラに教えてもらった精霊球を何個か作り出して、タム達を囲むように空中に浮かせる。

「ディルが飛んできたら、弾くように命令した。精霊球で撃ち逃したディルは、シグルトが処理するんだ。後は頼んだよ。」

 僕はそう言うと、タム達からできるだけ遠くに離れるために走り出す。ミライは僕の肩に乗ったままだ。

「ミライ、危ないからタム達と一緒にいるんだ。」

「それはダメ!あの特A級は危険!ミライはタクミを助けるための存在!ミライも一緒に行く!それにタクミの、ドラゴンのチカラを食べてるから、炎耐性も物理攻撃耐性もあるよ!」

 ミライは僕のチカラを取り込んで、成長している。少しずつ、ドラゴンに近い存在になっているのだろう。

「わかったよ。でも、危ないと思ったら防御結界を使うんだよ。ミライは、ラトニーやデュラハンとは違う。実体があるんだから。」

「あい!」

 僕の言葉に素直に返事をするミライは、とても愛くるしい。僕が居なくなったら、ミライにチカラをあげることができなくなる。そうなったら、ミライはどうなってしまうのだろう…。

 絶対生きて帰らなくては!

 覚悟ができた僕は、仲間から離れた位置で、もう一度ドラゴンの姿になる。

 あのワイバーンとやり合うなら、この姿の方がいい。頭の上には、ミライがいる。ワイバーンの攻撃を分析して、助言をくれるはずだ。僕は一人じゃない。だから、頑張れる!

 ワイバーンは、8本のヘビ頭のひとつからディルを吐き出して、飛ばしてくる。
 僕は鱗を飛ばして、それを撃墜する。
 それを見たワイバーンが、こちらに注意を向けた。

「タクミ!この特A級のワイバーンには、ヘビの頭のような尻尾が8本ある。それぞれが特殊攻撃してくるんだ。分かっている攻撃は、ディル、毒霧、石化光線、溶解液、火炎、氷塊。後の2つは記録に無いから、気をつけて!」

 やっぱり、ヤバイ相手だったか!
 上手く注意を引いたから、後は少しずつ、この場所から引き離そう。

 僕はワイバーンに向かって、ドラゴンの炎を吐く。ソラは言っていた。強い気持ちが自分を強くするのだと。

 僕は負けたくない。仲間を守るために。そして、自分とミライを守るために!

 僕の覚悟がドラゴンブレスの威力を強化したようだ。ワイバーンが嫌がっている。

 効果があるかよく分からないが、もう細かいことには構ってられない。少しでもワイバーンの気を引くために、僕は体当たりをする。

 すると、ムキになったワイバーンがこちらに向かってきた。

 よし!今だ!僕は飛んで逃げる。
 ワイバーンが追ってくる。

 いいぞ!これで少しは距離を稼いだ。
 さぁ、ここなら周りに誰もいない。僕も本気で攻撃させてもらうよ。

 仲間とかなり離れた位置まで来た僕は、時間を稼ぐために、こちらから攻撃することにした。このワイバーンを野放しにすることは出来ない。何の準備もなく遭遇したチームでは全滅するだろうし、もしコイツが町へと侵入したら…。

 僕は映像で少しだけ見た龍王達の闘い方を思い出す。たしか、口から炎だけではなくて、何かのチカラの塊を吐いていた。以前、トールとサーシャのドラゴノイドスーパーノヴァを見たが、アレに近いのかもしれない。

 僕はイメージをする。そして、自分にもできる、と自己暗示をかける。

 集中した僕は、チカラの塊をワイバーンに思い切り当てるようなイメージで、咆哮した。

 口から炎ではなく、純粋なチカラの塊が吐き出される。それは、まさしくドラゴノイドスーパーノヴァ。それが、ワイバーンの羽に当たり、羽に穴が開く。

 はじめてだけど、できた!
 そして、羽を封じることができたぞ!
 これで、ヤツはもう飛べない。

 そこからはもう夢中だった。蛇頭の尾から吐き出されたディルを鱗を飛ばして撃墜し、ディルの攻撃を封じる。そして、ドラゴンの爪を強化して、ディルを吐き出す蛇頭を根本から切り取る。が、すぐに再生する。

 再生能力があるのか?!
 羽は再生しなかったのに…。

「タクミ!ディルは炎に弱い。もしかしたら、炎が効くかも。切り取った箇所を炎で焼くんだ!」

 ミライの助言の通り、切った箇所を炎で焼く。
 やった!再生しない!
 さすがミライ!いい分析だ!

 毒霧や溶解液を吐くという他の尻尾も切り落として、炎で焼く。
 その間も、たくさんの鱗を刃に変えて攻撃を続ける。当たると爆発するから、ワイバーンは鱗の刃に気をとられて、ドラゴンの僕本体の攻撃に集中できていないようだ。

 無我夢中で攻撃を続けること数十分。
 ワイバーンが突如倒れた。

 やったのか?
 ホッとして思わず気を抜いてしまった。

 その瞬間、僕の腹に何かが突き刺さる。
 倒れたワイバーンの残った尻尾の蛇頭が、根本から分離して僕の身体に突き刺さり、大きな穴をあけた。

 ウソだろ…。僕の硬い鱗を貫くなんて…。

 ドスッ!ガスッ!
 倒れたと見せかけたワイバーンの残った尻尾が再生しては、突き刺さる。

 油断した…。
 最後が肝心だって、タムも言っていたのに…。

 身体にいくつもの穴があいた僕は、そのまま後ろへと倒れ、意識を失ったのだった…。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...