235 / 247
ガンガルシア王国編
217話 主人公、異世界最強を知るー3
しおりを挟む「セシルさまは、自分の魂と姫の身体をひとつにしようとしている。それで本当に紋章システムは継続可能なの?」
「理論的には可能。※※※※は…。アイツは不思議なチカラの持ち主だった。異世界の穴を閉じるなんて、ボクにはできない。でも、アイツは笑ってこう言ったよ。自分には異世界に行くなんてできないよって。アイツは、異世界への扉を開けたり閉じたりすることが出来た。でもそれを実行するには、その世界にいる必要がある。ボク達ドラゴンのように、自由に異世界へ行くことはできないの。ボクとアイツはお互いに補う存在だった。」
「ソラが出来ることは精霊王には出来ない。でも精霊王が出来ることはソラには出来ない。そういうことか。じゃあ、二人は上手く力をあわせてこの世界を守っていたんだね。」
「アイツは、ボクにとって唯一無二の存在。だから、いなくなったと知った時は、何とも言えない気持ちになったよ。」
ソラはドラゴンだ。ヒトとは違う思考の持ち主。なのに、精霊王の姫にとても協力的なのはどうしてだろうかと不思議に思っていた。
精霊王は、ソラにとって大切な存在だったんだ。この世界に帰ってきた時に、残っていた精霊王の強い思念を感じ取ったソラは、精霊王の代わりに姫を守ろうとしたんだな…。
「継続は可能だけど、根本的な解決にはならないよ。チカラが尽きれば同じこと。」
「いまの紋章システムは、精霊王の城と姫を核にしてるけど、それはドラゴンでも可能だと思う?」
「ドラゴン用に術式を変更する必要があるけど、可能だよ。まさか?タクミが核になるつもり?」
「僕は長命になるって、ソラが言ってくれたからね。それもいいかなって。僕はずっと考えていたんだよ。紋章システムを使用するには、なにか仕事をしなくてはいけない。僕は仕事を探すためにも、この世界のことを知りたいと思って、すべての国に行った。そして、僕は自分にしかできないことがあるなら、それを仕事にしたいと思ったんだ。」
「自分にしかできない仕事?それが紋章システムの核になるってこと?」
「うん。僕が紋章システムを引き受けたら、異世界の穴を塞ぐのは、精霊王の城と姫で大丈夫だよね?」
「そうだよ。元々あの仕組みは、セシルの魂が強くなるまで継続できるものにしてある。アイツのようなチカラを得るためには、最低でも2000年。そのくらいの期間なら問題ない。」
「やっぱり僕を核とした紋章システムの構築が一番現実的だよね…。あとは、いまの紋章システムが継続できなくなるまでに、開発が間に合うかってことだけど…。」
「タクミ…。なぜタクミがそこまでする必要があるの?ここはタクミの生まれ故郷じゃない。核になったら、眠り続けることになるんだよ?それでもいいの?」
「そんなに変なことかな?僕は、この世界で出会った人達が好きなんだよ。そして、この世界の仕組みもね。すべての人が幸せに暮らせるってスゴいことだよ。僕はそれを守りたいんだ。僕にできるかもしれないなら、そうしたいんだよ。」
ソラは不思議なものを見る目で、僕を見つめてくる。
ソラはドラゴンとして、自分の好きなように生きてきた。自分より他人を優先することが理解できないのだろう。
「ボクには、タクミの気持ちが分からない…。」
ソラは、哀しそうにつぶやく。
「そんなこと無いよ。ソラだって、タムが幸せになると嬉しいよね?自分の好きな人が幸せになると、自分も嬉しくなるんだよ。」
「……。うん…。タムが笑っていてくれるのが一番嬉しい。だから、タムには長生きしてほしい。」
「僕も同じ気持ちなんだよ。自分が好きなった人達に幸せでいてほしいんだ。」
「だから、自分が犠牲になるの?」
「犠牲じゃないよ。きっと、ジル達が違う方法を見つけてくれるよ。この世界は紋章システムのおかげで、様々な技術が進歩したんだから!僕はそれまでの間、眠るだけ。」
「タクミがそんなことをする必要はない。タクミがするくらいなら、ボクが!」
「何言ってるの?ここにいるソラは分身体。分身体には本体のようなチカラは無いって言ってたよね?」
自分の発言に、ハッとする。
ここにいるソラは分身体のはず…。
でも何か違和感を感じる。少年の姿から、成人女性に容姿が変化したせいだと思っていたけど…。
「ソラ…。まさか今の君は…。」
「……。ふふっ、タクミは鋭くなったね…。」
ソラは力無く笑う。
「ソラ?どういうこと?」
「ばれちゃったか…。これも運命なのかな…。タイジュがタクミ達に未来を託したように、ボクもそうする時なのかも…。」
ソラは一瞬目を閉じた後、僕の目を見て語りかける。
「タクミに知ってほしいことがある。そして、セシルとエルにも。」
セシルさまとエル?
「セシリア王国の王宮の地下に秘密の扉がある。その奥で待ってる。タイジュに案内させるけど、他の人にはナイショだよ。」
その言葉を言い終えると、ソラの姿は、僕の目の前からフッと消えた。
「ミライ、セシリア王国の王宮の地下って言ってたね?」
「あい!」
「急いで行くよ。何かイヤな予感がするんだ。」
僕とミライは、セシリア王国に急遽行くことになったと碧に伝言を頼み、セシリアへと向かう。碧は事情を察してくれたようだ。あとのことは、上手くやってくれるだろう。
胸騒ぎがする…。
ソラに一体何が?
0
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした
☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。
日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。
フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ!
フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。
美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。
しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。
最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる