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ガンガルシア王国編
218話 主人公、ソラの秘密を知るー1
しおりを挟む各国の王宮の地下には、他国へと通じる扉がある。ガンガルシアの地下にあるセシリアへの扉を開けると、セシルとエルの姿がすぐに目にはいる。扉の前で待っていてくれたようだ。
「セシルさま!お久しぶりです。元気ですか?」
「元気じゃよ。田中はしばらく見ないうちに、大きくなったようじゃな。」
田中!なんだか懐かしい。
そうだ。僕の名前は田中拓海。平凡なサラリーマンだった。
「田中は相変わらずですね。本当に少しは成長したのですか?」
ハハッ、エルも相変わらず僕に厳しいなぁ。
苦笑していると、セシルとエルの後ろからタイジュが現れた。
「タイジュ、ソラはどこ?無事なの?」
「よぉ、タクミ。久しぶりだな。なんだ、セシルはお前のことを田中って呼んでんのか?あの記憶が気になってんだな?オレは平気なのになぁ。」
タイジュは、相変わらず人の話を聞いていない!マイペース過ぎる…。
「タイジュ。僕はソラが心配なんだよ。」
「まったく…。タクミは心配性だな。ソラは大丈夫だよ。この世界最強なんだから。」
タイジュは少し呆れた顔をしながら、僕達を案内する。
「セシルさまは、エレメンテに戻って来てたんですね。」
タイジュの案内で地下の通路を歩きながら、セシルに話しかける。
「リオンとシオンにひどく怒られてしまってのぅ。」
「それはそうですよ!自分を犠牲にするなんて!その方法には僕も反対です!」
「でも仕方ないのじゃよ。他の方法が見つからないからのぅ。我の魂と姫の身体が再び結合することで、紋章システムはあと500年は継続できるはずじゃ。その間に解決方法を見つけることができれば…。」
「それはダメです。その方法に賛成なのは、セシルさまだけですよ。いま皆がどうしたらいいか考えてますから、早まらないでくださいね。」
「田中は本当に逞しくなったのぅ。」
セシルが驚いている。
そんなに変わったかな?
変わったように見えるのなら、たぶん覚悟ができたからだ。
僕は、僕にしかできないことをしようと思う。そう覚悟している。
「ほら、ここだよ。」
タイジュが立ち止まった先は、ただの壁だ。
「本当にそんな秘密の扉があるのですか?私にも秘密なんて、どういうことです?」
エルが怒っている。エルはこの城が出来た時からここにいる。そんなエルにも知らない空間があるとは…。
「それは、中にいるソラに聞いてくれ。」
タイジュはそう言うと、扉を開けて中に入る。
僕達も後を追う。
中は不思議な空間だった。
この感じ、どこかで…。
あっ!アースからエレメンテに来るときに通った不思議な場所!セシルはそこを次元の狭間と呼んでいた。そこに似ている。
普通のヒト種だと、体調が悪くなる場合もあると聞いたが…。セシルは平気なようだ。
「タイジュよ。ここは次元の狭間じゃな。我の城の地下にこのような空間があったとは…。お主、どうして教えてくれなかったのじゃ?」
「オレも知らなかったんだよ。じつは精霊王の城でタクミ達と会った後に、ソラが現れたんだ。その時にはじめて、この空間の存在を知った。詳しいことは、ソラ本人に聞いてくれよ。」
「えっ?ソラはどこに?」
「目の前だよ…。」
タイジュが指し示した場所は、漆黒の暗闇だ。ソラがいるようには見えない。
「見えないよね?見えるようにしてあげる。」
誰かの声と同時に暗闇がほのかに明るくなる。そして、そのほのかな光の中にぐったりとしたドラゴンの姿が浮かび上がった。
ソラ?!
目の前のドラゴンはソラに違いない。でもとても弱々しい。とてもこの世界最強の存在には見えない。
「なっ!ソラに何が?どうしてこんな姿に…。」
「これがボクの本体だよ。チカラを使い果たして、ここで眠りについてる。もうすぐ100年になるよ。」
本体?100年?
「やぁ、タクミ。この姿では久しぶりだね。」
少年の姿のソラが現れる。
この姿のソラは分身体に間違いない。
「ソラ、ここに僕達を呼んだってことは、説明してくれるつもりなんだよね?」
「うん。すべてを話すよ。どうして本体がここにいるのかを…。」
小さな男の子の姿のソラは、セシルとエルの方を見る。
「セシルもエルも久しぶりだね。元気だった?」
「うむ。その姿のソラは懐かしいのぅ。あの頃は、いろいろ世話になった。また会うことがあれば、ありがとうと言いたかったのじゃよ。会えて嬉しいぞ。」
「マスター、ソラに感謝など必要ありません。ソラはマスターが大変なのを知っていたのに、勝手にまた異世界へと行ってしまったのですから!※※※※様がこの世界から消えてしまった時も、異世界で遊んでいた自分勝手なドラゴンですよ!そんなドラゴンに感謝するなんて!」
エルってドラゴンに厳しいと思ってたけど、これが原因か…。
「エルはドラゴンに厳しいねぇ。怖い怖い。」
「茶化さないで下さい!どうして本体がこんな姿になっているのかは分かりませんが、どうせ遊びに夢中で疲れてしまっただけでしょう?」
エルの言葉はとてもキツイ。きっと、ソラが居なくなってからもいろいろなことがあって、ソラに頼りたい時もあったのだろう。でも、ソラはいない。大変だったセシルの姿を見ているからこそ、ソラのことを許せないのだ。
「遊びに夢中ね…。確かに、こんなになるまで夢中になってたのは、否定しないよ。」
エルの言葉に少し哀しげな顔をする。
「何か理由があるんでしょ?」
僕にはわかる。きっと、なにか理由があったに違いない。そうしないといけなかった理由が…。
「これから話すことは、本体の記憶。500年前、どうして異世界に行くことにしたのか、そこから話すよ。」
幼い姿には似合わない達観した表情を浮かべて、ソラは話し出した。
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