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ガンガルシア王国編
220話 主人公、ソラの秘密を知るー3
しおりを挟む「この世界の人々は、今までの中で一番楽しそうだ。良い世界になったんだと思う。この世界はボクとアイツが作った世界。アイツが異世界の穴を塞いで、それ以外の問題はボクが解決する。そうしてきたことを続けるだけ。」
「ソラ!タムはどうするの?運命の相手にやっと会えたのに!」
「仕方ないよ。タムにとっては、ボクは運命の相手じゃなかったんだよ。好きになって欲しかったけど…。」
哀しそうに、そうつぶやくソラ。
「ソラ!タムはソラのこと、嫌ってなんかないよ!お互いに素直な気持ちを話してごらんよ。」
「…。やだ。怖い。これ以上タムに嫌われなくない…。」
好きな人に嫌われる心配で、話せないなんて…。ここにいるソラは異世界最強には見えない。見た目どおりの10代後半の女の子そのものだ。
「驚きです。ソラにようやく、人並みの感情が芽生えましたか…。」
エルが驚きを隠せない表情で、ソラを凝視している。
「そうね。驚きだわ。でも良かった。私、昔からソラにはそういう相手が必要だと思ってたの。一人でも楽しいけど、二人の方がもっと楽しいって、父さまと母さまも言ってたし。」
「話すのが怖いなんて変だよね。こんな気持ちになるなんて…。」
「良いことじゃない?いろいろと教えてあげましょうか?これでも、そういう経験は豊富だから。」
フフンと笑いながら、ソラをからかうセシルは、とても嬉しそうだ。ソラとセシルはきっと、仲が良かったのだろう。ソラが居なくなって、セシルもきっと寂しく思っていたのだ。
「ソラが紋章システムの核になるって話は、とりあえず保留だ。身体を休めている状態じゃ、何も出来ないだろ?」
タイジュがソラの本体の身体を気遣う。
タイジュの言う通りだ。このままではソラは動けない。が、僕は思い付いたことをソラに提案にする。
「ソラ。少し試してみたいことがあるんだけど、いい?」
「何をする気?」
「ガンガルシアで、ソラがタムにしてたことだよ。僕のドラゴンのチカラをソラにあげる。僕のチカラじゃ足りないかもしれないけど。」
「タクミには無理だよ。アレは簡単そうに見えて、いろいろ難しいんだぞ!」
「うん、分かってる。僕一人なら無理だと思うけど、僕にはミライがいる。」
「あい!ソラがタムにチカラを与えていたのを見てたから大丈夫。分析完了してるよ!相手のチカラの波に同調させてチカラを送り込む。そうでしょ?」
「ボクのしてたことを見ただけで分かるって言うの?この時代のパートナー精霊はどうなってるの?」
驚くソラに、タイジュが笑い出す。
「ハハッ!時代は常に進化してるってことだよ。いまのエレメンテは、知識の統合、共有化によって、全世界の人々が研究者なんだ。衣食住に困らないから、どんな些細な研究も出来る。そして、戦争が無いから知識が失われることもない。ソラの想像以上にいろいろなことが出来るんだよ。オレの作った紋章システムはスゴイ道具だろ?」
タイジュは本当に嬉しそうだ。自分が開発した道具が人々を幸せにしているって、開発者にとって一番嬉しいことなのかもしれない。
「タクミ!いまのソラの状態を解析したよ。前にリブロスにドラゴンのチカラを込めたの覚えてる?その要領でいいと思うよ。ソラの身体に手を添えて、チカラを注ぎ込むんだ。細かいサポートはミライに任せて!」
僕は横たわるドラゴンの身体に近付くと、手を添える。
弱々しい波動だ。まるで、傷付いて羽を休めている小鳥のようだ。
ソラはボクにとって大事な存在だ。この世界にドラゴンはもう居ないと聞かされた僕は孤独感を感じた。そんなときにソラに出会い、ドラゴンについて、様々なことを教えてもらった。ソラはこの世界での僕の家族だと思っている。父のようで、母のようで、そして、妹のように思ってる。大事なソラを助けたい。
僕は強い思いを込めて、チカラを注ぎ込んだ。
ソラの身体が淡く光る。
僕のチカラに同調して、ミライが上手くサポートしてくれている。
僕のチカラがソラの身体全体に染み渡る。
分身体のソラが幼い男の子の姿に戻る。
「精神が本体に戻っていったよ。これで目覚めるといいけど…。」
しばらく様子を伺っていると、ソラのドラゴンの身体が輝きはじめた。
そして光がおさまった後には、分身体のソラは消えて、女性体のソラが立っていた。
「ふふっ。すごいね。タクミは。しばらく会わなかっただけなのに、とても強くなってる。タクミのチカラを受け取ったよ。ありがとう。」
「ソラ?本当にソラ…?」
今まで会っていたソラとは、雰囲気が違う。これが本当のソラ!弱くなったって言ってたけど、そんなことはない。圧倒的なオーラを感じる。それに、分身体の身体を借りていた時と同じ容姿なのに、魅力が増している。なんだか目が離せない。
「もうボクにはチカラが無い。それでも、今のタクミよりはまだ強い。だから、ボクがその役目を引き受けるよ。」
「ダメだよ、ソラ!言い出したのは僕だよ!」
言い合いになる僕達に、セシルが声をかける。
「ソラとタクミの気持ちは分かったわ。でも、それはダメ。私がやろうとしてたことと同じよ。私は二人を失いたくない。きっと、他に方法があると思うの。ソラはこの世界の未来を見たのよね?その話を詳しく教えて。」
僕達はセシルさまの提案で、王宮の一室へと場所を移す。
ソラから、未来のことをじっくり聞こう。この世界を救うヒントがあるに違いないと信じて。
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