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ガンガルシア王国編
221話 主人公、未来を知るー1
しおりを挟む「未来はね。ある地点で枝分かれしているものなんだよ。こうなるかもしれない世界、可能性の数だけ存在するんだ。ボクはいろいろな未来を見たよ。セシルが魂と身体を結合して、紋章システムを継続した未来もあった。でも結局、他の方法を見つけられず、セシルのチカラが尽きて…。」
「このままではダメってことね。」
「呪いを無くそうとして、姫の身体と王達をアースに移住させる未来もあったよ。これは悲惨だった。エレメンテでは、異世界の穴が開いたままになって特A級の異形のモノがたくさん入ってきた。それに対抗できずに、人がたくさん死んだよ。アースでは、怪異が出現するようになって、アースでも人がたくさん死んだ。」
今のアースには化け物と闘う技術がない。一体出現しただけでも、パニックだろう。
「異世界への穴を完全に塞ぐって未来もあったけど、これは紋章システムの寿命を縮めただけだった。完璧な道具なんて無いんだよ。」
「そうか…。理論上は可能だと思ったんだが…。」
タイジュが悔しそうにつぶやく。
「ソラ。結局、呪いって何なの?ソラになら、分かる?」
「アレは、人が持ってる悪意を具現化したものだよ。魔が差すの『魔』、そのものだ。」
グールは精神が堕ちた者に取り憑き、感情の爆発を食べて怪異となる。そして、怪異は人を襲う。
常に善良でいられる人はいない。他人を恨んだり憎んだり、心が暗い感情で満たされることもある。
「王妃の一族が生きていた時代のアースは、混沌としていた。そこらじゅうで戦争をしていて、人がいっぱい死んでいた。そんな時代の負の感情が呪いの正体だと思う。異世界に来ることで、具現化してしまった。」
「7つの大罪は、自らを滅ぼす負の才能。そういうことね。」
「怠惰の性質はどんな人でも持っているものです。ですが、怠惰が過ぎると大変です。タイジュは、食べることも面倒クセーと言って、食べないことがよくありました。タイジュは、マスターの中でも一番の問題児でしたよ。」
エルが昔を懐かしむように話す。
「オレって問題児だったか?ちょっと研究に夢中になってただけで…。」
「あなた、それで何度か倒れましたよね?あれほど食べてくださいとお願いしたのに!」
「わっ、悪かったよ。エル、そんなに怒らなくても…。」
タイジュがしどろもどろだ。タイジュはエルが苦手のようだ。転生者といっても、いまのセシルとは別人格。それぞれ個性があるのだろう。
「人が人でいる限り、呪いは無くならない。それがボクの結論だよ。感情を捨ててしまえば、無くなるのかもしれないけど。でも、感情の無い人は人では無い。別の何かだよ。」
呪いは無くすことはできない。人がいるところにはグールが必ず発生する。アースにも…。
「タイジュ、アースでも紋章システムって開発できると思う?」
「同じ仕組みでは無理だろうな。アースは精霊が少ない。そんな場所では、うまく稼働できない。でもパートナー精霊のような存在なら、開発できるかもな。いまはかなりAIの研究も進んでるだろ?AI搭載の情報端末に、使用者の精神安定機能、危険時の録画録音や位置情報通報機能を搭載する。使用者を守る高機能スマホだ!そういうものの開発が、現実的だろうな!」
僕はタイジュの発言に驚く。
「ちょっと待って!タイジュはどうしてスマホとか知ってるの?」
「それは、オレがアースで生活してたからだよ。オレは、この世界エレメンテでただのヒト種として生まれた。そして、すぐに異世界の穴に落ちたんだよ。その先がアースだった。しかも、西暦2000年の日本。オレは15歳まで、日本で暮らしてた。16歳の誕生日にソラが迎えに来るまでな。」
!!!
なに?その生い立ち!
「だからスマホも知ってるし、ソラが未来に来る危険性も知っている。オレを迎えに来たソラは、その後しばらく身体を休めていたから。」
「じゃあ、まさか…。紋章システムって…。」
「タクミの想像通りだ。日本で見た技術の応用。パソコンやスマホを参考にしたんだよ!」
そうだったのか!
似てるなとは思っていたけど。
「それなら、タイジュにはカシムの気持ちが分かるよね?カシムは自分だけが幸せになっていいのか悩んでいる。カシムが生まれたアースの国では、まだ戦争をしているから。」
「そうだな。カシムにその気があるのなら、開発に協力してもいいぞ。」
「じゃあ、私が資金提供するわ。アースで開発するには、お金が必要でしょ。」
セシルは、アースで会社を何社か所有していると言っていた。
「もちろん、売れるものにするわよね?」
「それは、当たり前だ。どんなに良い物でも売れなければ広がらない。商人の記憶があるお前なら分かるだろ?」
タイジュとセシルは、目配せして笑っている。
なにか見てはいけないものを見たような…。
「善良なだけでは、商売は儲かりません。本気になった商人は怖いですよ…。」
エルが僕に囁く。
なんだか聞いてはいけない気がするので、詳しいことは聞かないでおこう。
「じゃあ、それをカシムに提案してみよう。」
カシムはアースで紋章システムを開発して、アースを平和な世界にしたいと思っている。そのために僕に協力してほしいのだ。でも僕はこの世界を守る方を選んだ。カシムの案を否定するだけではダメだ。代案を出すことで、話し合いは進む。
「では、次はリオンとシオンのことを考えましょう。」
セシルは、双子の意見も尊重したい。双子にも代案は必要だ。そうでなければ、納得してもらえない。
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