異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

文字の大きさ
6 / 247
序章

6話 主人公、転生者の話を聞く

しおりを挟む
 

「500年前、その時はドワーフ族の男じゃったな。ドワーフ族は職人の一族でな。様々な技術を継承しておった。ただし、一族限定。門外不出というヤツじゃな。我はその技術で紋章システムを作ったのじゃ。」

 セシルさまの爆弾発言に、僕は少しの間フリーズしてしまっていた。

「田中!聞いてますか?わざわざマスターが、話してくれているのです。」
 エルに怒られてしまった。
「すみません。転生者という人は、僕がいた世界には居ないので、ちょっと理解不能でして…。」

「こちらの世界にも居ませんよ。転生者として確認されているのは、セシルねえさま、唯1人です。」
「セシルが転生者だと知っているのは、王と王宮で働いている者だけだ。つまり、日本に行ったことがあるヤツってことな。」
「いいんですか?僕にそんな重要なことを教えてしまって。」
 申し訳ない気持ちで、セシルを見る。

「構わないのじゃ。だって、田中は我の王宮で働くことになるのじゃから!」

 何?なんて言った?セシルさまの王宮で僕が働くって言いました?勝手に決められてるんですけど…。

「まぁ、先祖返りですしね。それが妥当ですね。」
 トールも同意している。
「確かに!俺の国に居たら、間違えて討伐されるかもしれないしな。危ないな!」
 ガルシアも激しく同意。

 僕には拒否権もないようだ。まぁ、仕方ないよね。僕、ドラゴンだし。王宮というからには、きっとお給料もいいのだろう。ちょうど会社をクビになったところだし、それもいいか!
 うん、僕はエレメンテに来てからは、まるで別人のように心が軽くなってるな。これが竜種の精神耐性ってヤツ?

「王宮で働くことはひとまず置いておいて、転生者が何者なのかを説明しようかのぅ。転生とは、どういう意味かわかるか?」
「えっと、生まれ変わりを繰り返す、ということですよね。」
「そうじゃ。我は一度や二度ではない。何度も生まれ変わりをしておる。今回で何回目じゃったかのぅ。」
「今回で103回目です。マスター。」
 エルが即座に答える。
「このエルはの、我が最初に転生する前からの従者じゃ。」

「この世界、エレメンテには大いなる呪いがあってな。我が転生を繰り返すのも、その呪いに関係があるのじゃ。」
「呪われてるから、転生してるってことですか?」
「いや、そうではない。この世界の呪いを解く方法を探すために、転生をしているのじゃ。それと同時に王という、呪われし者を見つけるためにな。」

 王様が呪われてる?
 ということは、ガルシアさまもトールくんも?僕は思わず、2人を見てしまった。

「おぅ、そうらしいな!」
 ガルシアが明るく応じる。
「タクミさん、話は逆なのです。呪われた存在だからこそ、王になるのです。」
 トールが左手の甲を見せてくる。
「あれ?紋章が無いんですか?ガルシアさまにはありましたよね?」
 すると、ガルシアが左手の甲を見せる。
「あれ?ガルシア様も紋章が無い?さっきは服とか靴とか出してくれましたよね?」

「王はな。紋章システムが使えないのじゃよ。」
「いや、でも、さっき、ガルシア様が。」
 砂漠で見た光景をはっきりと覚えている僕は、困惑していた。
「俺たち王はな。朔夜みたいな紋章は持ってないんだ。その代わり、王限定の能力があってな。自分の国にいる限りは、紋章に似た力が使える。だけど、自分の国以外では、無力。何もできない、役立たずが出来上がるのだ!」 
 またもや、ガルシアのドヤ顔!

 だから、なんでドヤ顔!自慢することじゃないと思うんだけど。

「そうです。僕たち王は、自分の国に居ないと、王の力は使えません。しかも、自国であっても、王宮の中では使えないのです。だから、王を助ける仲間が必要なのです。朔夜はガルシア様を手助けするために、この王宮で働いてるのですよ。」

「そう、この王宮のオカンとなるべく、俺が勧誘したのだ!」
「誰がオカンやねん!自分は仕方なくガルシアさまの面倒を見とるだけや。」
 朔夜が呆れたように反論する。


われはな。このエレメンテの呪いを解くために、転生を繰り返し、呪われし者を見つけるために、紋章システムを開発したのじゃ。」

「タクミさん、こちらの世界に来るときに、あなたにまとわりついていた黒い影を覚えていますか?」

 あのドロドロとした、気持ちの悪いもの。アレに包まれていると、自分の全ての感情が制御不能で、ひどく暴力的な感じに囚われていたような。

「タクミさんに付いていた影はグールと呼ばれています。グールもエレメンテの呪いの一つです。ヒトを消費して、怪異かいいを誕生させ、ヒトを襲います。」

「ヒトを消費する、って…。」

「はい。グールは取り憑いたヒトの本性を刺激して、全ての感情を爆発させます。グールは、感情の爆発を食べることによって、こちらの世界で怪異と呼ばれている化け物を誕生させるのです。グールに取り憑かれたヒトは、まず助かりません。深く根付いてしまったら最後、確実に怪異の糧になるのです。タクミさんが助かったのは、運が良かったにすぎません。」

 そうだったんだ…。

「ドラゴンで命拾いしたな~、タクミ!」ガルシアが明るく言う。

「グールはな。なぜか異世界、特に日本に多く発生しておる。田中よ。日本にはたくさんの神様を信仰する風習があるな?」

「う~ん。信仰とは違うと思いますけど。宗教ごちゃ混ぜになってますね。
 クリスマスは街中がイルミネーションで光り輝くし、お正月は神社にお参りして、お盆にはお寺に行くし、最近はハロウィンとかイースターとかも盛り上がるし。日本はイベントが盛り上がれば、神様とか関係ないんですよ。節操ない感じです。」

「田中よ。節操がない、は間違いじゃ。様々なものを取り入れることができるのは、寛容、というのじゃよ。」セシルが少し考え込む。

「うむ。言葉を間違えたかのぅ。日本には確か、八百万の神を信仰する風習があったと思ったが。」

「山には山の神様が、海には海の神様がいる、というヤツですか?」 

「そう、それじゃ。日本には、全ての物に神が宿るという考えがあるな。それはエレメンテの精霊と同じなのじゃ。エレメンテでは、全ての物に精霊が宿る。日本では、全ての物に神が宿る。似たような考えがあるからか、日本は、エレメンテへの扉が開きやすくてのぅ。だから、我らは日本に滞在して、グール狩りをしているのじゃ。」

「タクミさんは、もしかして○×商事にお勤めだったのではないですか?」
「えっ、トールくん。なんで知ってるの?」

「あそこの会社に勤めている者が、よくグールに狙われるのじゃよ。あの会社はいわゆるブラック企業というヤツじゃな?」
「えっ?僕がいた部署は、みんな、そんなに残業してませんでしたよ。ノルマも特別キツイものでは、なかったと思いますし…。僕は、中途採用だから、早く仕事に慣れようと、残業してましたけど。」

 そうだった。最後まで残業してるのは、僕一人だけってことがよくあったな。

「残業代は、出てなかったじゃろう?田中がいた会社はな。中途採用者を生贄に使っておるのじゃ。」

 生贄?
 どういうこと?確かに残業代は無かったけど、それは、僕が中途採用だから、慣れるまでは出ないのかなぁって。でもソコソコのお給料出してくれてたし。

 採用の時には、貴方の力を弊社で十分に発揮してくださいねって、言ってくれて、落ちまくっていた僕はその言葉に感激したのに。

「生贄ってどういう意味ですか?」

「あの会社に中途採用されるのは、決まって気弱そうで真面目な感じの者ばかりじゃ。言われたことを素直に実行し、口答えなんか、絶対しない感じの者を、使い捨てるために採用するのじゃよ。都合の悪いことが起こると、ソヤツの所為と言って責め立て、辞めさせるのじゃ。あくまでも自己都合でな。
 そして、こう言うのじゃ。これだから、中途採用は!っとな。」

 !!!

『田中!お前には責任を取ってもらうからな!これだから、中途採用は…。』
 あの時、上司はみんなに聞こえるように言ってた。

「中途で採用された者は、少しでも早く仕事に慣れようと、無理してでも働いてくれる。だから、今までいた社員を無理して働かせるより、効率がいいのじゃ。さらには、頑張らないとお前たちもこうなるぞ、という脅しにもなるしな。」

「いやっ、でも、あの会社の採用担当の人は、なんらかの事情があって前の会社を辞められた方にも力を発揮して欲しいので、積極的に採用してますって言ってましたよ。特に資格とかも無い僕でも、それなりのお給料出してくれたし。だから、とてもいい会社だなって。」

「それなりの金を出しておけば、少し無茶な仕事でも頑張ってくれるだろうし、辞めさせる時も後腐れがないじゃろう。」

「何ヶ月かに1人、あの会社から出てくるヒトにグールが纏わりつくことがあります。とても落ち込んでいたり、精神的ショックが大きい事があったり、というヒトをグールは狙っているのです。僕たちは気配がする度に、グールを蹴散らしに行っていました。深く憑かれる前ならば、救うことは可能ですから。」

「田中の話じゃと、これからも中途採用者を使い捨てることは止めないだろうのぅ。そろそろ、潰しておくべきかのぅ。」

 セシルが何かを小声でブツブツ言っている。なんか、聞いてはいけないことを言っているような…。

「まぁ、そういうことでな。田中には、日本でのグール狩りをしばらく手伝ってもらうかのぅ。」
 それはいいですけど。
「あっ、僕、仕事をクビになったので、新しい仕事を探さないと。もう実家は無いですし。会社が用意してくれた単身用のマンションに入ってたので、住むところも見つけないと。」

 祖母が亡くなったときに、実家も売りに出して、今はもう無い。あの家は、色々な思い出が多過ぎて、住むのがつらかったのだ。

「それならば、大丈夫じゃ。我の王宮で働いてもらうと言うたじゃろう。」

「朔夜の後輩ができたな!タクミに王宮のこと、いろいろ教えてやれよ!ガハハ!」ガルシアが朔夜に声をかける。

 あっ、そうか。朔夜さんみたいな仕事かぁ。でも、僕、料理はあまり上手くない。掃除くらいなら、なんとか。それでも大丈夫かなぁ。

 そうだ、肝心なこと聞かなきゃ。

「朔夜さんは、この国に雇われているということですよね。お給料はどうなってるんですか?」

 こんなすごい王宮に雇われているのだ。きっとたくさんお給料を貰っているに違いない。僕も朔夜さんの半分くらいは、貰えたらなぁ。

「お給料なんて無いで。」朔夜があっさりと言う。

 !!!

「タダ働きなんですか?ブラック企業よりヒドイじゃないですか!」

 僕は憤って、声をあげる。僕が働いていた会社も残業代は無しだったけど、それなりのお給料は出ていた。

 そこにセシルが、あり得ない言葉を言い放つ。

「田中よ。この世界にはな。カネという仕組みはもう無いのじゃ。」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

処理中です...