39 / 247
セシリア王国編
36話 主人公、異世界の歴史を学ぶー2
しおりを挟む「それで、そのドゥイガーン王国はどうなったの?」
ライルの話に聞き入っていた子供が、続きを促す。
「ドゥイガーン王国は、侵略した国の民に酷いことはしませんでした。むしろ手厚く保護したのです。戦争で破壊された街を再建し、病院を建て、親を無くした子供達のための施設を作りました。」
「ドゥイガーンの王様は、賢い王様だったんだな。侵略した後のケアが大事だって理解してたんだ。」
体格の良い討伐者風の男が、そう感想を述べる。
「えっ!でも、本当に賢い王様なら、戦争はしないんじゃない?」
男の近くにいる女の子が答える。
「それは、戦争しか方法が無かったから、仕方ないんじゃねぇのか?作物が取れないんじゃ、民は飢えて死ぬだろうが。」
冒険者風の男が反論する。
「んーっ、でも。戦争をする前に、例えば土壌改良とか、作物の品種改良とか、色々とできることはあったと思いますけど。」
今度は、良く日に焼けた健康そうな女性が発言する。
「土壌改良や作物の品種改良には、長い時間が必要だからな。その間に国民がどんどん死んでいったら、どうすんだよ?」
冒険者風の男が言う。
「はい。みなさんの言うことはどれもいい意見だと思います。もし、自分がこの王様の立場ならどうしただろうと想像することが重要です。想像することで、王様の立場を疑似体験することができるのですから。歴史から学ぶ、とは、このような事も含まれるのです。」
そこでライルは一呼吸おいて、参加者の顔をそれぞれ見る。
「では、このドゥイガーン王国はどうなったのか?結論は先に言ってありましたよね。世界統一まで、あと少しだったと。」
「うん!最初に言ってたね。でも、どうしてダメだったの?」
「ドゥイガーンの王様が、いくら街を再建しても、子供達を保護しても、哀しみは無くならなかったからです。親を殺された子供はいつまでもドゥイガーンが憎いでしょう。例え、その親が兵士として戦った末、殺されたのだとしても。兵士だから、一般人だから、という割り切りはできないのです。兵士だったから、殺されても仕方ない。それが戦争なんだから、と納得できる子供は少ないでしょう。そして、戦争に巻き込まれて亡くなった人々の遺族は、さらに納得できないでしょう。」
「でも、それはドゥイガーン王国だけが悪いって訳ではない気がします。侵略を武力で対抗しようとしたんだから、その国も悪いと思いますが。」
顔色の悪い学者風の男が、意見を言う。
この発言を聞いたライルは、その男に質問する。
「では、あなたがいま、その隣にいる大きな男性に殴られたとしたら、あなたはどうしますか?無抵抗ですか?話し合おう、と言葉で返しますか?」
「僕なら逃げます。この方はとっても強そうなので。」
「では、あなたの後ろには、あなたがとても大切にしている人がいたとしたら?そして、その人は足が悪くて逃げられないとしたら?」
「むむっ。そうですね。その場合は戦います。大切な人を守るために。」
「侵略された国も同じですよ。大切な国民を守るために、武力には武力で対抗するしかないのです。もちろん、侵略されないように日頃から気を付けておくことが大事ですけどね。」
そして、ライルは続ける。
「もし、いまここに怪異が現れたとしたら?やはり対抗できるのは、武力だけです。だから、エレメンテでは、ファミリアで戦闘訓練もしますよね?怪異は、今では、ガンガルシア王国にしか出現しませんが、それまではエレメンテ中に現れていたのです。今でも、数は少ないですが、ガンガルシア王国以外でも、出現しているのですよ。」
「そうなんだ!知らなかった!」
この中で一番小さな男の子が言う。
「だからファミリアでは、いつどこで怪異と遭遇しても生き残れるように、戦闘訓練をするのです。
話が少し逸れてしまいましたね。
でも、ドゥイガーン王国があと少しで世界統一できなかった理由は、この怪異にあったのですよ。」
「どういうこと?」
「ドゥイガーン王国が侵略してから、数年は何も起きませんでした。戦後というのは、復興でやる事がいっぱいありますからね。ところが、やっと復興し始めた国に異変が起きます。各地で怪異が出現したのです。そのどれもが、超特大の怪異でした。実はその頃は、怪異がどうして発生するのかの原因がわかっていませんでした。怪異は天災のようなものだと考えられていたのです。」
ライルは近くの女の子に聞く。
「怪異がどうして発生するか、知っていますか?」
「はい。何かとても悲しい事があった人など、心が弱っている人に取り憑いたグールが原因ですよね。」
「そうですね。グールはそういう人に取り憑き、感情を食い尽くすことで、怪異に変貌します。今では解明されているので、グールに取り憑かれないように、みなさんの精霊それぞれがあなた達を守ってくれています。」
「僕達には、まだいないよ?」
小さい男の子が、抗議する。
「君達の精霊は、まだ見えないだけで、確実に君を守ってくれていますよ。左手に紋章があるだろう?その中で、君が大きくなるのを待っているんだよ。」
ライルの言葉に、男の子は左手の紋章を右手で優しく撫でる。
「そっかぁ。守ってくれてるんだ。早く会いたいな。」
「グールや怪異について知識の無かったドゥイガーン王国は、こうして滅びました。超特大の怪異には、自慢の武力も通じなかったからです。心の闇が深いほど、大きくて強力な怪異が誕生することが、今では分かっています。戦争で親を失った子供や、子供を失った親、愛する人を亡くした人々が次々に怪異となってしまいました。このドゥイガーン王国の滅亡によって、軍事国家での世界統一は無理だということがわかったのです。」
じゃあ、最後に残った民主主義国家が世界統一したってこと?
でも、今のエレメンテって王国だよね。民主主義国家には、王様っていないと思うんだけど。日本の天皇のように、象徴ってことなんだろうか?
0
あなたにおすすめの小説
最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~
渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。
彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。
剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。
アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。
転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった!
剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。
※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる