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セシリア王国編
40話 主人公、リブラへ行く
しおりを挟むイリスと別れた僕達は、リブラに向かっていた。
昨日のラートルで理解できなかった単語、リブラ、リブロス、メモリアの意味を双子に聞いたところ、リブラとはファミリアにある施設のひとつだから、連れていってくれると言う。
5つのホームを囲うように建っている建物のひとつがリブラらしい。
「タクミに分かりやすく言うと、図書館が一番近いかな。」
「でも図書館にしては、広くないんだね。そんなに本が置いてないのかな?」
僕がそう言うと、双子はそろって意地悪そうな笑みを浮かべる。
「「まぁ、中を見てみなよ。」」
リブラの中は、一言で言うと、"真っ白"だった。何もない空間なのだ。
図書館みたいなものって言ったのに、なんだよ!はっ、もしかしたら!また双子にからかわれたのか?
すると、今まで誰もいなかった空間に女性が現れる。
「ようこそ、リブラへ。今日は何をお探しですか?」
その女性は丁寧に話しはじめるが、僕は別の所が気になって仕方なかった。
「リオン、シオン。この人、透けてますけど…。」
2人に説明を求める。
「その人はリブラ。この建物の主だよ。タクミに分かりやすく言うと、立体映像ってとこかな。僕達のウサ子やウサ吉と一緒で、精霊を具現化したらしいんだけど、詳しいことは知らない。このエレメンテでは、自分の興味があることしか学ばないからね。」
リオンがそう教えてくれる。続けて、シオンが口を開く。
「昨日のラートルは、どうだった?大人も多かったでしょ?エレメンテでは、興味が出た時点で学ぶことが普通になってるんだよ。だから、子供の頃は、エレメンテの歴史に全然興味は無かったけど、いま学びたいっていう気持ちになった人がファミリアに来て、ラートルに参加するんだ。」
そうか!だから、昨日はあんなに色々な人がいたのか!討伐者風な人、学者風な人もいたな。
「アースとは、全然違うでしょ?アースでは、得意不得意、関係なく全員が同じ内容を学ぶよね。基礎的な学習は必要だけど、それ以外を学ぶ時間って無駄じゃない?だって、自分の好きなことだけ学んだ方が、効率いいよね。」
「だから、いま学びたいって人のためにリブラがあるんだよ。特に子供達のためにね。」
よく意味が分からない僕の顔を見た双子は、それぞれリブラに話しかける。
「リブラ、エレメンテの歴史について、特に大いなる呪いについて解説してあるリブロスが見たいんだけど。」
「僕は、エレメンテの国土について、基本的なものをお願い。」
リブラは、双子の声にすぐ答える。
「リオン、貴女の条件に合うものが35点見つかりました。過去の閲覧履歴から、ライルのラートル映像はどうでしょうか?人気もありますし、面白いと思います。」
「シオンには、マルクトールのナナが書いた、エレメンテの国土考察初級、というのはどうでしょう?新進気鋭の若手研究家の著書です。マルクトールで、とても人気がありますよ。」
二人それぞれに、オススメしている。
「「じゃあ、それお願い。」」
双子がそろってそう言うと、リブラの手のひらが光り、手の中にビー玉のようなものが現れる。リブラは、それを双子に渡すと、現れた時と同じく、音もなく目の前から消えた。
リオンは、「この玉がリブロスだよ。よく見ててね。」と言うと、受け取った球を左手の紋章に掲げる。すると、今度はライルの立体映像が現れ、『今日は、エレメンテの歴史中級だよ。大いなる呪いについて、話そうと思う。』と、ライルの映像が話し出す。
「タクミに分かりやすく言うと、これは動画だよ。この映像は、ライルのラートルを記録したものなんだよ。」
リオンがそう教えてくれる。
「じゃあ、次は僕だね。」とシオンは言いながら、リオンと同じように紋章に掲げる。すると、今度は分厚い本が現れた。
「これが、いまマルクトールで評判のナナの本かぁ。なかなか面白そうだね。」
シオンはそう言いながら、パラパラとページをめくる。
「「タクミ、わかったかな?」」
二人の行動を見ていた僕は、こう答える。
「リブラは、この施設の管理人であり、案内人のような方で、こちらの要求に答えてくれる存在だね。で、リブロスは何らかの記憶媒体ってことだ!映像だったり、本だったり。そうか!だから、この施設はこの大きさで、中には何も無いんだ!それぞれが、自分の好きなものを出して貰うからなんだね!」
「「正解!!」」
リオンとシオンはそう言って、にっこり笑ったのだった。
「個室でじっくり見たい時は、リブラにお願いすると、あの壁に扉が現れて、希望通りの部屋を用意してくれるんだよ。」
「だから、子供達は時間がある時にここに来て、好きなものを見ることができる。リブラはその子の好みを把握してるからね。こういうのはどうですか?と全く興味がなかった内容のものまで、オススメしてくれるんだよ。でも、そういうのから意外と興味がわいて、将来の仕事にしてる子もいるからね。」
「じゃあ、メモリアっていうのは?」
「メモリアは大人にしか使えないんだよ。紋章システムの一つだからね。」
「ウサ吉!ライルのメモリアにつないで!」
リオンがウサ吉にお願いする。
「了解しました、リオン。では、どの辺りにしますか?」と、ウサ吉がすぐに応じる。
リオンは少し考えると、「これと同じものをお願い。」と、ライルのラートル映像を指差す。
ウサ吉が手を振ると、ライルの映像が現れて、『今日は、エレメンテの歴史中級だよ。大いなる……』と話し出す。さっき見た映像と全く同じだ。
「僕達大人は、精霊を通して、各個人が収納しているメモリアを見ることができるんだよ。タクミに分かりやすく言うと、インターネット経由で各個人が公開してる動画を見てるって感じかな。」
いつでも、どこでも見れるってことか!便利なシステムだなぁ。紋章システムって、物を出すだけのものじゃないんだな。
「大人は自分で検索して、条件に合う個人のメモリアを見ることが出来るんだけど、そうすると、毎回似たようなものばかりになっちゃって。」
「そうそう。そういう時に、リブラに来るんだよ。自分の出身ファミリアにあるリブラなら、僕達個人の情報も理解してくれてるからね。思いもよらない物を紹介されて、とても勉強になるよ。」
なるほどな。大人なのに、リブラに来る理由はそれか!確かに、自分で選ぶと同じようなものばかりになることあるな。たまには、違うジャンルも見た方が勉強になるよね。
こうして僕はまたひとつ、エレメンテのルールを学んだのだった。
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