95 / 247
グランエアド王国編
85話 主人公、王様?に会う
しおりを挟む店のドアを開けると、きらびやかで奇抜な服が店中に置いてあるのが目に入る。
目がチカチカする。すごいセンスだな。どういう人が着るんだろう?
不思議に思っていると、その服を着たガタイの良い人物が現れる。
「ブランカの店へようこそ!だけど、今はちょっと忙しいのよ。後で来ていただけるかしら?」
見た目は50代のおばさん。口調は女性のようだが、声がとても低い。
男なの?女なの?
僕が不思議に思っていると、リオンとシオンが親しげに話しかける。
「ブランカ、久しぶり!元気だった?」
「今日も素敵な服だね!僕達はエア様に会いに来たんだけど。」
「あら、リオンとシオンじゃない!相変わらず可愛いわね。エア様に会いに来たの?ごめんなさいね。いまエア様は衣装合わせ中なの。しばらく待っててくれる?」
そう言うとブランカは、店の奥へ消える。
「仕方ない。しばらく待とう。」
「エア様は、舞台衣装優先だからね。気が済んだら、出てくると思うけど。」
ブランカも気になるけど、 エア様って一体どんな人なんだろう?
映像で見たエアリーは、とても可愛くて歌と踊りも上手かった。年は10代後半くらいに見えたけど。この世界の人の年齢って、よくわからないからなぁ。
「エアリーって何歳なんだろう?」
思ったことをつい口にしていた僕の背後から、声がした。
「アイドルに年齢を聞くなんて失礼だよ!」
振り向くと、ウサギ耳の男の子が立っていた。サクラとモミジくらいの年齢かな?男の子にしては、可愛い顔をしている。
「君はエアリーのファンなの?ごめん。そうだよね。何歳でも関係ないよね。エアリーは歌もダンスも上手くて、すっごく可愛いんだから。」
そう素直に謝ると、
「お兄さんもエアリーのファンなの?すっごく可愛いってホント?」
と、ウサ耳男子は興奮した様子で近づいてくる。
んっ?近くで見るとこの子、どこかで見たような。
すると、リオンとシオンが慌てた様子でこちらに寄ってくる。
「「エア様!!」」
エア様?どこに?
ここには、僕とミライとウサ耳男子しか居ないけど。
まさか?!
「よっ!はじめまして!ボクがエアだ!君が噂の先祖返りだね?うわー、初めて見たよ。ちょっと変現して見せて!」
ウサ耳男子が、どこかで聞いたような言葉を言う。
反応が、リオンとシオンと似てる……。
2人ともエア様が苦手って言ってたけど、それって似た者同士だから、話しづらいって事なのかな?
「はじめまして、エア様。僕はタクミと言います。王宮に泊めていただいて、ありがとうございます。」
慌てて挨拶する。が、エア様は気にしてないようだ。
「そんな堅苦しい挨拶はいいよ。それより、その人工精霊ってどうなってるの?動きも自然だし、見た目も可愛いな。ボクには勝てないけどね。」と言いながら、ミライを撫でくりまわしている。
「いや~、やめてよ~。」
ミライは迷惑そうだ。
「さすがジルだな。ボクにも造ってくれないかな?」
そんな事をつぶやきながら、ミライを抱きしめるエア様。
「うん!抱き心地もいいね!」
喜ぶエア様に、双子が注意する。
「エア様!ミライが人工精霊だってことは、秘密だから!」
「そうだよ!あまり大きな声で言わないように!」
「大丈夫だよ。ここにはブランカしかいないし。そうそう、やっとブランカが王宮に仕えてくれることになったんだよ。だから、ブランカにはバレてもいいだろ?」
「「えっ?ブランカが王宮に?」」
驚く双子に、声をかける人物が現れる。
「そうなの!王宮に仕えたら、アースに連れて行ってくれるって言うから!」
奥からブランカがやって来て、そう言う。
「エア様の依頼で、この衣装を作ったのだけど、アースっていう異世界にはこんな可愛い物がいっぱいあるって言うじゃない?ぜひ見てみたいのよ!」
ブランカが手に持っている衣装は、日本のアイドルが着ているような制服をモチーフとした可愛い服だ。
「今度のライブ用の衣装だ。アースで見たアイドルの服が着てみたくて。ボクの描いたラフ画をもとに、ブランカが作製してくれたんだよ。」
どんどん会話が進んでるけど、僕はある事が気になって話に入れない。
「あっ、あの!エアリーって、エア様なんだよね?でもエア様って、男の子?ってことは、エアリーも男の子?」
思い切って、疑問を口にする。
「えっ?そうだけど?」
それがどうかしたのって顔で答えるエア様。
「エアリーって可愛い女の子だと思ってた…。」
「可愛い?そうだよね!ボクってホント可愛いよね!ボクは可愛いから、アイドルやってるの!性別なんて関係ないよ!可愛いは最強なんだから!」
僕にはよく分からない理由で、アイドルをやっているというエア様。
「タクミ。この世界には性別による区別は、もう無いんだよ。混血が進んで、見た目じゃ性別が分からない人も増えたからね。」
「エア様は、いわゆる男の娘ってヤツだよ!」
男の娘?僕には分からない世界だ!
「エア様は可愛いから、なんでも許されるのよ!それに比べて私なんて…。」
ブランカが、そう自分を卑下する。
「ねぇねぇ、ブランカって男なの?」
ミライがサラッと言い放つ。
ミライ!それは言っちゃダメだよ!
僕も気になってたけど!
「だ~れ~が~、男だって~?」
ブランカの逆鱗に触れたようだ。
気配を察して、僕は素早くドラゴンの瞳を発動する。
「ブランカは正真正銘、素敵な女性だよ!ミライ、失礼なことを言っちゃダメだ!」と、ミライを叱る。
「ごっ、ごめん。タクミ。」
シュンとなるミライ。
「ブランカ。ミライはまだ生まれたばかりで、思ったことをすぐ口に出してしまうんだ。ごめん。僕からちゃんと言っておくから、許してくれないかな?」
そう謝る僕に、ブランカは大きな身体で抱きついてくる。
「いいのよぉ!私のことを一目で女性だってわかるなんて!貴方、女性を見る目があるわね!」
ブランカは喜んでいる。
が、痛い!痛いよ!
ブランカは、力がとても強いようだ。
ドラゴンの瞳を発動して良かったぁ。
心からそう思う。
ドラゴンの瞳で見たブランカの情報は、性別女性、ジャイアントオーガ族の血が強く発現。そして、20歳であった。
0
あなたにおすすめの小説
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした
☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。
日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。
フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ!
フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。
美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。
しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。
最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~
金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。
そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。
カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。
やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。
魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。
これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。
エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。
第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。
旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。
ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる