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グランエアド王国編
91話 主人公、遺跡の秘密を知るー1
しおりを挟む「ドラゴノイドってことは、トールくんと同じってこと?」
「タクミ、サーシャはトールの師匠なんだぜ。サーシャ、こいつがタクミ。先祖返りのドラゴンだ!」
ガルシアが僕とサーシャにお互いを紹介してくれる。
「あんたがタクミかい?噂は聞いてるよ。一度、手合せ願いたいね。」
サーシャは僕を鋭い視線で見る。
「無理です!無理です!僕は戦闘とかしたことないですから!戦えませんよ!」
「そうかい?残念だね。まぁ、いいさ。アタシの狙いは、ソラっていうドラゴンだよ。行けば戦ってくれるんだろ?ドラゴンと戦ってみたいと思ってたんだよ。」
サーシャは、そんなことを言いながら、拳を握っている。
うわぁ、この人ヤバイよ!
「サーシャが一緒であれば安心です。エア様、この条件を飲んでいただけるのなら、同行を許可しましょう。」
「ガルシアはイヤだけど、この機会は逃せない。うーん。仕方ない!ガルシアのことは我慢する。」
「では、このメンバーで行くことにしましょう。何があるか分からないので、少数精鋭で行くことにします。」
こうして、僕達はグランエアド王国の遺跡に行くことになった。
グランエアド王国の祭壇がある場所は、巨大なクレーターのような地形だった。
くぼみの中心が湖のようになっていて、その湖の周りを囲むように、古い遺跡が建っている。
ギリシャのパルテノン神殿みたいな太い柱が特徴的な建物群だ。風化が進んでいるのか、ところどころ崩れている。
フラルアルドで行った特A級の神殿を想像していた僕は、不思議に思う。
ここには、屋根のない建物しか残ってないよ。本当にここであってるのか?
祭壇は湖の中心にあり、祭壇まで一本道が出来ている。その道の入り口にあたる場所に閉じた門のような遺跡があった。
ジークはその前で立ち止まる。
「タクミ。この門にドラゴンの紋様が見つかりました。我が国のドラゴノイドに確認してもらいましたから、間違いないと思いますが、タクミも確認してください。」
そう言われた僕は、ドラゴンの瞳を発動させる。確かにあの紋様が確認できた。
「へぇ、これがドラゴンの紋様かい?」
サーシャもドラゴンの瞳を発動したようだ。
ん?でもドラゴンの紋様以外にも何かが見える。文字のようだが、意味が分からない。
「サーシャ、何か文字みたいなものが見えるんだけど、分かるかな?」
「タクミ、すまない。アタシはドラゴンの瞳を上手く使いこなせなくてね。アタシには、ドラゴンの紋様が薄っすら見えるだけだ。」
「そうなんだ。もっと精度を上げてみるかな。」
僕は神経を集中して、その文字を見る。
ウンディーネを祀る神殿、セイレーン族の文字。
データとして把握できるのはこれくらいだな。文字は意味が分からないと解読できない。これは僕には理解できない文字の配列のようだ。
でもこれが、この遺跡の秘密を解く鍵に違いない。みんなにもこの文字が見えたらいいのに。見えるようにならないかな?
「タクミ!出来るよ!表示しようか?」
僕の心の葛藤を感じたミライが、そう提案する。
「えっ?ミライ。そんなこと出来るの?」
「あい!タクミが見ているものを表示するね。これだよ!」
ミライはそう言うと、いま僕が見ている文字を空中に再現してみせた。
「んっ?この文字には見覚えがあるよ。」
「うん、昔、ライルが解読してた文字に似てる気が。」
その文字にリオンとシオンは、見覚えがあるようだ。
「この遺跡は、ウンディーネを祀る神殿だったようだよ。そして、その文字はセイレーン族が関係していると思うんだけど。」
「セイレーン族…。あっ、たしか!ウサ子!ライルのメモリアに繋いで。セイレーン文字の解読一覧があった気がする。」
リオンがウサ子にお願いする。
が、ウサ吉が現れて、「解読一覧から、文字を照合。解読に成功しました。表示しますか?」と、言う。
うーん、仕事が早いね!
この世界の精霊って、ホントに万能な秘書、執事だなぁ。
「お願い!」というリオンの声で、空中に解読された文字が現れる。
『響け、音よ。弾けろ、音よ。歌えよ、高く。歌えよ、低く。音は溶け込む、大地に空に。水に響けよ、〇〇〇』
最後の文字は分からないようだ。
そして、良く分からない数字の羅列が続く。
「これで解読は合ってるのかよ?さっぱり分からねぇな。」
ガルシアが首を傾げている。
「野蛮なガルシアには分からないだろうなぁ。」
「なんだよ!エアには分かるっていうのか?」
表示された文字と数字をジッと見ていたエアが、なにかに気付いたようだ。
「ジーク。ハープ出して、僕についてきて。ウサ吉は、このデータをジークに送って。みんなは、ちょっとここで待っててね。」
エアはそう言うと、ジークを連れて祭壇の方に歩いていく。そして、祭壇の真ん中でジークになにやら指示をすると、ジークがハープを弾き始める。
ジークって、楽器弾けるんだ!
しかも、かなり上手だ。
ハープの音が響き渡ると、場所に異変が起こった。
音が共鳴してる!
このくぼみになってる空間と柱が特徴的な建物。それらが複合的に作用して、音が響き合う。
空気が震えている。
でも、何かが足りない。僕はそう直感する。
が、次の瞬間、さらに音が空間を震わせる。
エアが、ハープの音色に合わせて歌い始めたのだ。
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