異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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グランエアド王国編

99話 主人公、批評家を知るー1

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 ライルの話を聞いてから数日たったある夜、リオンとシオンから水の神殿に来るように連絡がはいる。

 同じ階に滞在してるんだから、直接話してくれればいいのに。どうしたんだろう?

「何かあったのかな?ミライ、どう思う?」
「あい!水の神殿の中を見せてくれるのかも!」
「あっそうか!国民に公開する前のプレオープンに急遽特別招待ってこと?だといいね。」

 楽しみだなぁ。
 ワクワクしながら、王宮前の広場に向かう。
 もう夜遅いので、人通りは少ない。

 荘厳な神殿が水の中に浮いてるような光景は、とても神秘的だ。

 しかもライトアップされているみたいに、ほのかな光が神殿にあたっている。

「タクミ、あれは精霊工学を利用した光発生装置だよ!」

 最近ミライは、僕の疑問を感じ取ると答えを教えてくれるようになった。優秀な解説員がすぐ横にいるようだ。

「精霊工学って、キノカが研究している分野だよね?」
「あい!精霊工学は精霊を利用した道具や装置を研究、開発する分野だよ。精霊にも特性があって、光を溜めやすい精霊だけを集めて光らせているんだ。」
「へぇ。精霊ってそんな事につかわれてるんだ。」
「精霊は、アースの空気みたいな存在。空気を動力源にして動いてるって感じだよ。ちなみに、ホバーの動力も精霊なんだよ!」
「空気が動力源!アースでそんな技術があったら、エコだね。」
「あい!精霊は動力源として利用されるけど、循環してるから力が無くなることはないんだよ。」

 なんと!ホントこの世界の技術はすごいなぁ。

「紋章システムによる知識の統合で、どんどん世界に優しい技術が開発されたんだ!」

 アースでも、そういう技術が開発されたらいいのに。

 そんな会話をしながら歩いていると、神殿の扉の前にリオンとシオンが立っているのが見えた。

「あっ、来た来た!タクミ!エア様が中を見せてくれるって!急に決まったから、ミライに連絡したよ。」

「ありがとう!じゃあ、早速見せてもらおう。」



 双子と共に中に入る。

 あのとき見た神殿の内部は豪華な装飾だけだったが、今は舞台と椅子が設置してある。

 なるほど!エア様はこの神殿を劇場にしたんだ!
 ここで歌ったら、ものすごく響くだろうな!神秘的な雰囲気もあるし。ここで演劇やコンサートをやるなら、見にくる人はたくさんいるだろう。

「皆さま、ようこそ。エア様が国民に公開する前に見て欲しいというので、ご招待しました。」
 ジークが出迎えてくれる。

「ですが、あと1人、まだ到着してないようですね。」

 誰のことだろう?
 不思議に思っていると、扉から女性が入って来た。

 あっ、エアリーのライブで見たホンファだ!
 でも、なんで?知り合いだったのか?

「ホンファ、ようこそ。エア様はまだですので、少しお待ちください。」

「ご招待ありがとう。でもなぜ私を?もしかしたら、あの批評のことかしら?でもあれは私の素直な批評よ。直接文句が言いたいってことなら、聞くわよ。」

 批評?何のことだろう?

「タクミ。ホンファは今朝、エアリーのライブについての批評を公開したんだよ。内容を抜粋しようか?」
 ミライがこっそり教えてくれる。

 ホンファの刺々しい雰囲気に、何かあったことを察してヒソヒソ声で、ミライにお願いする。

「ホンファの批評はこうだよ。
『初めてエアリーのライブに行ったが、内容はとても素晴らしいものであった。公開されている他の映像を見て、本当にこんな現象があるのかと疑っていたが、目の前で見せられては信用するしかない。驚くべき舞台演出の数々、そして、エアリーの歌、ダンス、共に素晴らしく、これは誰にも真似できないものだ。』
 と褒めているんだよ。」

「えっ?じゃあ、なんであんなに厳しい雰囲気なの?」

「これには続きがあって、
『しかしながら、エアリーはこの国の王である。王には特別な力があることは子供でも知っている。
 王の力は自分のためには使えないというが、もしその力をライブを観に来た観客のために使用していたとしたら、この不思議な舞台演出も楽にできてしまうのだろう。
 エアリーのライブは不思議過ぎる演出が多く、特に空中を歌いながら飛ぶ演出はどの技術でも説明ができない。
 夢のように不可思議な現象や咲き誇る華のような豪華な衣装。
 もし王の力を使っているのなら、王の力の使い方を間違えていると指摘するしかない。そして、この王の力でランキング1位になってるとしたら、自分の力で頑張っている他の人達に失礼ではないだろうか。』
 だって!」

「えっ?そんな批評をしたの?」

 たしかにエア様は王の力を普段、思いっきり使っている。でもそれは、この街に住んでいる国民のためだ。ライブに来たファンのためには力は使えないと思うんだけど。

「それで、ホンファがここに呼ばれたんだね。」
「文句言うつもりかなぁ。」
 双子もヒソヒソと会話している。

「では、ホンファ。エア様が来る前に、エアリーのマネージャーである自分に、批評の説明をしていただけますか?」
 ジークがニッコリ笑って言う。

 あっ、あれはかなり怒ってる。
 ドラゴンの瞳で確認しなくても分かる。

 ジークは笑顔で、静かに激しく怒っていた。

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