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グランエアド王国編
101話 主人公、批評家を知るー3
しおりを挟む神秘的な神殿の中を舞台としたエアリーのライブは、以前見たものより、もっと素晴らしかった。天井が高い空間いっぱいにエアリーの歌声が響き渡る。
うん。やっぱり良い声だよね。
ホンファが言っていた空中を飛ぶ演出で一曲歌い切ると、エアリーが僕達の前に降りてきた。
そして僕に、いま空中を飛んでいたトリックがわかる?と聞いてくる。
僕にはホンファみたいな本質を見抜く力はない。ドラゴンの瞳で見ろってことだな?
発動して、エアの周りをよく見る。
んっ?エアの上空に何かいる。
しかも、ひも?ロープ?何かが出てるぞ!
「あっ!そういうこと!エア様、それってワイヤーアクションってヤツだね?」
「はい!正解ー!」
エアがそう言うと、今まで見えなかったものが見えるようになる。
エアの上空には手のひら大の球体が2つ、フワフワと浮かんでいる。そして、その球体からロープが出ていて、ロープはエアの身体に繋がっている。
「これは、精霊球だよ。タクミは初めてかな?」
「タクミ、さっき話してたライトアップに使ってるのもこの精霊球だよ。こちらの指示で自在に動いてくれるの!」
ミライが説明してくれる。
「そう。これは物を浮かす時に使う精霊球で、それを改良して作ってもらったんだー。」
「あっ、それってジルに頼んだヤツだね!」
「そうだよー!この仕掛けに見えなくなる術をかけて、飛んでたってこと!この仕掛け、ホンファも分からなかっただろー?」
エアに話しかけられたホンファが、プルプルと震えている。
「なっ、何よ!こんな原始的な仕掛け!分かるわけないでしょ!変だと思ったのよ。何か制限があるような動きだったから!」
「びっくりした?でも、ワクワクしただろ?どうやって飛んでるんだろう?って!ボクはそんなドキドキを観てる人が感じてくれたらいいなと思って、ライブをやってるんだよ!」
「そう。わざわざ私を呼び出したのは、これを見せつけて、私の間違いを痛烈に批判するためね。いいわよ。何とでも言ってちょうだい。間違った批評をした私が悪いんだから。」
ホンファは、泣きそうな顔になっている。余程ショックだったようだ。
「えっ?ボク別に怒ってないよ?批評してくれるって、良いことじゃん!しかもあのホンファだよ!まぁ、批評というより、批判だったけどさ。」
「エア様は、優し過ぎますね。」
ジークが呆れたような声で言う。
「ジークが厳しいだけじゃん!ボクがさ。このアイドルをはじめたとき、誰にも相手にされなかったんだよね。良いって言ってくれる人は居ないし、観てもくれなかった。だから、いっぱい試行錯誤したよ。観てもらうためにね。」
「エア様の素晴らしいところは、それでも決して自分を曲げなかったところです。普通なら、流行りの曲を歌うなどして、ブレていくんですけどね。」
「ボクはアイドルをやりたかったんだよ!ブレるわけないじゃん!」
「うらやましいわ。私なんて、もう心がくじけそうよ。」
そうポツリと呟いたホンファの顔は、泣くのを必死でこらえてる子供みたいだった。
「ホンファはさ。どうしてエアリーの批評を書こうと思ったの?書きたいと思ったからじゃないよね?」
批判めいた批評を書かれたのにも関わらず、エアはあっけらかんとした様子で聞く。
うわぁ、ど直球。
「そっ、それは…。」
ホンファが口ごもる。
何か言えない理由があるのかな?
言葉が出てこないホンファに代わって、返事をする者が現れる。
「それについては、私がお話ししますわ。」
ホンファのパートナー精霊だった。
それを見たエアが喜んでいる。
「ねぇねぇ、それって、ドロシーだよね?ボクも小さい頃、読んだよ。『ドロシー母さんには全てお見通しよ!』ってとこ、大好きだったなぁ。ホンファも好きなの?」
「ホンファもよく読んでいました。だから、私はこの姿なのです。皆さま、はじめまして。ドロシーと申します。」
二足歩行の眼鏡をかけた手のひらサイズの羊が、優雅に頭を下げる。
「ホンファをあまり責めないでください。このような批評の公開を止められなかった私にも責任があるのですから。」
「わぁ!話し方までドロシー母さんにそっくり!」
ドロシー母さんって何だろう?
「ドロシー母さんは、30年くらい前に公開された小説の登場人物。ホームでお母さんをしているドロシーが、困っている人を洞察力と推理力で助けてあげるって話だよ。」
ミライがこっそり教えてくれる。
「ホームでお母さんをやってる?」
「ドロシー母さんは、育児研究家として、あるホームの指導者をしてるっていう設定なの。子供たちの育児の悩みを聞いて、それを解決したりね。」
「あっ!エルも同じようなことしてたね。」
「子供がたくさん集まるとケンカとか起こるでしょ?それをドロシー母さんが上手く仲裁してくれるって話なんだよ。」
「エアリーのライブの日に見たホンファみたいだね。」
僕とミライの話を聞いていたのか、ホンファが反応する。
「ドロシー母さんは、『愛のない言葉は使っちゃダメよ』っていうのが、口癖なの。私の大好きな言葉だったのに。エアリーに対する批評には、愛がなかった。私が悪かったわ。」
目に涙をいっぱい溜めたホンファが、半泣きで非を認める。
「どうしてホンファがこんな批評を公開したか、私が説明いたしますわ。」
ドロシーは、静かに理由を話しはじめた。
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