異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

文字の大きさ
117 / 247
グランエアド王国編

107話 主人公、公開するとは?を学ぶー2

しおりを挟む
 

「紋章システムを作った初代王はね。このシステムを使用する人達には、"寛容"になってほしいって言ってたらしいよ。」

「寛容?」

「自分とは異なる意見や価値観を受け入れるってことだよ。500年前は戦争が多かったって聞いたよね?」

「セシルさまは、だから紋章システムを開発したって言ってたけど。」

「その頃は、異種族間で戦争するのが多かった。ヒト種と獣人種、ある特定の思想を信奉する人とそうではない人。つまり、異なる意見や価値観の人達同士で戦争をしてたんだ。」

「えっ?そうなの?でも今のこの世界は混血ばかりだって聞いたよ。」

「うん。紋章システムが出来てから、両親が子供を養う必要は無くなった。国が衣食住を保障することで、両親の庇護が必要無いようにしたんだ。そして初代王は、色々な種族の子供達を集めてホームとファミリアを作った。ここに住んでる全員は家族なんだから、仲良くしろよって言って。」

「そうです。子供の頃から様々な種族の者同士で暮らすことによって、偏見や無理解は無くなりました。これにより、異種族間の子供が増え、混血ばかりになったのです。」

「昔、セシルに聞いた事があるんだ。どうしてファミリアを作ったのかって。『この世界に生きる者は、すべて同じだ。違いなんか無いんだから、戦争するより一緒に仲良く暮らせばいいんだ』って言ってたよ。」

「争いは、価値観の違いと無理解によって起こりますからね。」

「紋章システムで創作として公開されているものの中には、色々な作品がある。それこそ、見ただけで気分が悪くなるような作品もね。でも、それを良いって言う人もいるかもしれないし、そんな感情を揺さぶることができる作品を創作できるっていうのは、ある種の才能だと思う。ボクは、グロいの苦手だから、まったく理解できないけど。」

「こういう行為も世の中にはあるのかもしれない、こんな人もいるかもしれない、いや、こんな人はいたら困るな、などと色々想像しながら作品をつくるのが創作です。自分は、創作で猟奇的なものを書いていますが、じつは戦争中に実際に行われた拷問の方が残虐なんですよ。」

 中世ヨーロッパ、魔女狩りの時代には様々な拷問器具が開発されたって本で読んだことがある。それこそ、どうやって使うんだよ!って思う道具で残虐な行為が実際におこなわれていたという。

「そう。『本のせいで悪いことをしたのだから、そういう本は無くしてしまえ』っていう主張は大間違いだよ。結局、それを読んだ人の心の問題だ。本を読んでなくても、悪いことをする人はいるんだから。」

「アースにも似たような言葉があります。『本を焼く者は、やがて人間も焼くようになる』と。」

「この世界で創作が限りなく自由なのは、そういう考えもあるんだなっていう寛容さを学ぶためだとボクは思ってる。自由であるはずの創作に、この作品はダメだ公開するなって主張する人は、やがてこんな作品を作ったこの人はダメだ、と人間を攻撃するようになる。」

「寛容さの無い人は、どんどん他人を攻撃するようになります。
 そして、誰からも自分を認めてもらえない人も、他人を攻撃するようになります。」

 ホンファもそんな気持ちで批評を書いてしまったのだろうか。でもたしかに、誰からも認めてもらえないのは悲しいし、暴力的な気持ちになることもあるかもしれない。

「でも、この世界にはパートナー精霊がいる。他人から認めてもらえなくても、パートナー精霊は常に見てくれていて、認めてくれる。だから、頑張れるんだ。
 みんながうらやましいよ。ボクには、精霊がいないからね。」

「エア様には、王宮に仕える皆がいますよ。1人ではありません。」

「そうだね。」

 エアは一瞬、悲しそうな顔をしたが、すぐに表情を変え、話を続ける。

「ホンファに足りなかったのは、寛容だよ。世界には色々な人がいることが分かれば、あのおっさんの意見なんか聞き流せるようになる。そして、パートナー精霊だけは自分を認めてくれるって、心から理解できたら、もっと良いものが書けるようになると思うよ。だからジークは、ホンファには経験が足りないって言ったんだ。」

 なるほどね。

「タクミ。この世界の創作が自由でいられるのは、パートナー精霊がいるからだってことが、理解できた?」

「うん。人には感情があるから、感情に任せて行動してしまうこともある。その状態で公開するって、とても怖いことだ。でもこの世界では、自分でも止められないものをパートナー精霊が補ってくれる。だから、自由でいられるってことだね?」

「そうだよ。この世界の自由は、秩序のある自由だ。ボクから見たら、アースは無秩序な自由の状態だ。特にネットに関しては、誰も止める者がいないだろ?自由だからって、何をしてもいいわけじゃない。
 アースには、パートナー精霊がいないからね。公開する怖さも知らずに無責任に匿名で意見を言う人も多いだろう。特定の個人に対して匿名で意見を言える状態が変なんだよ。何か言いたいなら、こちらも実名を晒すべきだ。もっと、言葉に責任を持つべきなんだよ。大人ならね。それに、子供が自由に書き込みできる状態も変だよ。エレメンテではあり得ないことだ。」

「この世界では、成人までの試用期間に言葉の重みを叩き込まれます。一度口から出た言葉は取り消せません。暴言は、言った方は忘れていても、言われた方は忘れません。
 この世界の争いは当人同士で解決するのが普通です。そのため、パートナー精霊に記録機能がある。記録されていると知っているので、不用意な発言はしません。」

「でも、それって監視社会ってヤツじゃ?」

「それは、自分ではない誰かにされているからそう感じるのです。この世界では、それぞれの精霊が記録しています。自分ことを一番に考えてくれるパートナー精霊が記録してくれているのですよ。これほど安心できるものはありません。」

「そうか。いま日本でも何かあった時のために、ドライブレコーダーを付ける人が増えてるって聞いたことがある。どこかの監視カメラをアテにするより、何かあった時のために自分で記録してた方が安心だ。」

「そうだよ。だから、この世界には警察や裁判所は無い。自分が何をしたかなんて、自分が一番知っているだろ?もし、何かの病気で正常な判断ができない状態になったとしても、パートナー精霊が止めてくれる。この世界は、それで成り立っているんだよ。」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

処理中です...