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マルクトール王国編
110話 主人公、王宮図書館に行くー2
しおりを挟むエレーナの後について、図書館の中にはいる。扉を2つ開けて入った中の光景に、僕は言葉を失った。
なんだこれ?あり得ない!
ドーム球場くらいの広さの空間いっぱいに、本が置いてある。しかも壁に近いところには階段があり、2階、3階に上がれるようになっている。
広過ぎる!
これじゃ、どこに何があるかなんて分からないんじゃないか?
「ここには貴重な書物が置いてあります。エレメンテ中の古代神殿から発見された古文書は、この建物に保管されているのですよ。」
ライルの説明に、僕は納得する。
たしかに、見えている本の様式や大きさがバラバラだ。
「そういえば、どうしてライルはここに?」
「あぁ、まだ詳しい説明をしていませんでしたね。エレーナとアドラにも聞いてもらいましょう。ですが、ここでは落ち着かないので、場所を変えますよ。」
今度はライルの後について歩く。壁際の階段を3階まで登ると、そこにある扉から通路に出る。
どうなってるんだ?
不思議な造りの建物だなぁ。
この建物は、図書館部分のドーム状の建物を囲うように、もう一つドーム状の建物を被せたような造りになっていた。各階に図書館部分を一周できる通路があり、図書館部分の反対側にはたくさんの扉がある。
「ここは、個室になっています。エレメンテ中の研究者がここに来て、古文書の解読に没頭しています。ここの古文書は、持ち出し禁止ですし、紋章システムでの再現も禁止されているものもありますからね。」
そうなんだ。じゃあ、エレーナは1人でここにいる訳じゃないんだね。
良かった。こんなところに1人でいるのは寂しいだろうなと思ってたから。
「できれば来てほしくないのです。エレーナは1人が好きなのだから。早く帰れと思っているのです。」
フランス人形のアドラがそう話す。
そっ、そうなんだ。
寂しくないのかな?って心配してたんだけど。
アドラってば、毒舌だね。
それとも、エレーナの心の声なんだろうか?
「分かっていますよ。僕達も用がすんだらすぐ出ていきますから、それまで我慢してくださいね。さぁ、着きましたよ。」
ライルが1つの扉の前に立ち、扉を開く。
「この部屋は、この建物の応接室みたいな場所です。ここで、話をしましょう。好きな場所に座ってくださいね。」
広い部屋には大きな窓があり、外の景色がよく見える。
「景色いいね。」
僕のこの言葉にミライが反応する。
「マルクトール王国も自然がいっぱいの国だよ。この国は日本みたいに四季があるんだ。いまはちょうど秋。もうすぐ冬になって、雪が降るんだよ。」
「そうです。ここはもうすぐ閉ざされた世界になるのです。だから、早く出て行くことをオススメするのです。」
フランス人形のアドラは表情がないので、どういう感情でこの言葉を言っているのかが、いまいち分からない。
が、僕はテーブルいっぱいに用意されたものを見て驚く。エレーナが色々な種類のお菓子とお茶を出して、僕達の前に置いてくれているのだ。
やっぱり、誰かが来てくれることが嬉しいんだよな?
本当に出て行ってほしいなら、こんなにたくさんのお菓子を出したりしないと思うし。
素直になれない子なのかな?
「では、僕がここに来た理由を説明しますね。まずはこれを見てください。」
ライルの言葉に、シオンが古文書を取り出す。
何か荷物を背負っていると思ってたけど、この本だったんだ。
古文書の装丁は豪華で、2冊並ぶとまるで美術品のようだ。ライルは古文書を手に取ると、2冊の背表紙を合わせて置く。
「これをよく見てください。こう並べた時に、2冊の本の模様が何かに見えませんか?」
「1つのデザインとして見るってこと?」
「んっ?どこかで見たような紋様に見えるね。」
リオンとシオンが、口々に言う。
「それは、流浪の民の紋様なのです。」
エレーナの腕に抱かれたアドラが、そう答える。
「流浪の民の紋様?」
「あい!エレメンテで発見される不思議な古文書や道具に刻まれてる紋様のことだよ。エレメンテ各地で発見されるから、世界を旅する特殊な部族がいたんじゃないかってことで、流浪の民の紋様って名前になったんだよ。」
「ミライ、解説ありがとう。流浪の民というのは正式な呼び方ではありません。この紋様がついたものが発見されるのは、年代も場所もバラバラなのです。それで仕方なくそのような呼び名が付いた。アースにも似たようなのがありますよね?オーパーツっていうのを知ってますか?」
「オーパーツ?」
「その年代の作品としては説明がつかないほど精巧な工芸品のことです。水晶髑髏が有名ですね。」
「水晶髑髏なら聞いたことあるよ!現代の技術でも再現するのは難しいって言われてるものらしいけど。」
「そうです。世の中にはまだまだ解明されていないことがいっぱいある。このエレメンテでも同じです。この流浪の民の紋様がある品は、まさにその通りで、誰が何のために作ったか不明なものが多い。ここには、この流浪の民の紋様がついた古文書が何冊かあったはず。禁書になっている物もあるので、これは王宮に仕えた者しか知りませんが。」
禁書?
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