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マルクトール王国編
114話 主人公、戦闘訓練をするー1
しおりを挟む「良し!ここなら大丈夫だ。タクミ、ドラゴノイドに変現して!」
シオンの指示でドラゴノイドに変現する。
僕は、全身とまではいかなくても、腕と脚にはドラゴンの鱗をまとえるようになっていた。
ここは王宮図書館から、数キロ離れた草原。最近、このあたりに大きなケモノが出没するようになったらしく、僕達はそのケモノの討伐にきていた。
この世界のケモノは大きさも形態も様々だ。アースに存在するゾウのような巨大なケモノもいるし、リスのような小動物もいる。しかし、小動物だからといって油断してはいけない。吸血するタイプのケモノもいるので、不用意に触るのは禁止だと教えてもらう。
「この辺りは大きなケモノのテリトリーに近いからね。たまにここまで降りてくる個体がいるんだよ。」
「うん。いつもはこの子たちが撃退してくれるんだけど。」
リオンはそう言うと、上空にフワフワ浮かんでいる精霊球を見上げる。
「人が住んでいる場所の近くには、この精霊球が飛んでいるんだよ。」
「生体反応センサーでケモノを感知して、撃退してくれるんだ。」
「撃退ってどうなるの?」
「こうなるよ。」
シオンはそう言うと、同じような精霊球を出す。フワフワ浮いた精霊球は、小動物みたいで可愛い。
が、その精霊球が一瞬光る。
!!!
地面が黒く焦げた。範囲は狭いが確実に燃えている。
「痺れる程度のレーザーが発射されるんだ。」
いやいや、これって痺れる程度じゃないよね?
「普通はこれに懲りて、ケモノはここには近寄らなくなるんだけど、たまにおバカな個体が何度もやってくる。そうなると、討伐するしかないんだよねぇ。」
「普段はそこに住んでる誰かが討伐するんだよ。精霊球が、この付近の注意情報を常に公開してるから。」
「じゃあ僕達は、ここに出没するケモノを撃退したらいいんだね?」
「タクミ、今回は討伐優先だ。」
「討伐?殺すってこと?そこまでする必要はないんじゃないかな?」
「この精霊球は手加減はしない。同じ個体だと認識した時点で、火力が上がっていく。それでもまだ出没するということは、異常種の可能性が高い。」
「異常種は放っておくと何をするかわからない。だから、討伐することになってるんだよ。これは人とケモノが共存する上で必要なことだ。住み分けをキッチリしないと必ずどちらかが傷付くことになるからね。」
「厳しいね。」
「ヒトとケモノは同じではない。意思の疎通ができない者同士は、離れて暮らす方が平和なんだよ。」
近づきすぎると不幸になるってことか?
「そのケモノがいつ現れるか分からないから、それまでは訓練をするよ。エレーナ、君の武器を出して。」
エレーナはアドラを抱いたまま立っている。表情を変えないから、こちらの話を聞いているか、よく分からない。
「エレーナ、何か気になることがあるの?」
僕は、何の反応もないエレーナが心配になり声をかけるが、リオンとシオンにそれを止められる。
「エレーナはいま考えている。しばらく待つんだ。」
???
数分後、アドラが話し出す。
「異常種かどうかは、直接見てから判断するべきなのです。討伐か撃退かは、対峙してから決めるのです。」
異常種?
あっ、さっきのケモノの話だな?
「分かったよ、エレーナ。ケモノが出現したら観察してもいいよ。だけど、危険があると僕達が判断したら、討伐する。それは了解してね。」
「分かったのです。」
アドラはそう言うと、精霊球を数十個、エレーナの周りに出現させる。
エレーナは、僕達から少し離れたところに移動すると、精霊球がまるで意思を持っているかのように動き出した。
「エレーナ、投げるよ!」
リオンはそう言うと、袖からクナイを出してエレーナに投げる。
クナイって!忍者か!
僕の見ている目の前で、数十本の刃物がエレーナを襲う。
大丈夫なのか?
エレーナの周りの精霊球からレーザーが発射されて、クナイは全て撃ち落とされる。
「次だよ!」
今度はエレーナの周りにいる精霊球と同じような物体だ。すごい速さでランダムに動いている。しかし、これも難なく撃ち落とす。
すごい反応速度だ!
本当にエレーナが動かしているのか?
「最後はこれだよ!」
リオンは似たような精霊球を出す。
また同じ?何度やっても撃ち落とされるだろ?
そう思って見ていると、レーザーが当たった瞬間、ものすごい爆発が起こる。爆風でエレーナが倒れそうになる。
「今度のは少しの刺激で大爆発するよ。さぁ、どうする?」
リオンの言葉で、エレーナの精霊球の動きが止まる。
「降参かな?」
リオンの精霊球がエレーナの精霊球に近づく。
撃ち落とすと大爆発、触っても大爆発。エレーナの精霊球は逃げるしかないはず。
そう思って見ていると、エレーナの精霊球が思わぬ動きをした。
リオンの精霊球を囲うように近づき、包んでしまったのだ。
包まれた精霊球が爆発を起こす。が、被害はない。
「なるほど、考えたね。精霊球で包んで、結界を発生。その中で爆発させて処理する。さすがエレーナ。」
全ての精霊球を爆発させたところで、リオンが終了を告げる。
「エレーナ、ありがとう!データとれたから、今日はこれでおしまいだよ。」
データ?
何かの実験だったのか?
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