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マルクトール王国編
117話 主人公、エレーナの秘密を知るー1
しおりを挟む「「エレーナ!」」
僕の腕の中で意識を失っているエレーナの元に、リオンとシオンが駆け寄ってきた。
「意識を失っているだけのようだな。」
「はぁ、良かった。」
「しばらく寝かせておこう。」
リオンとシオンはそう言うと、自分達のコートを脱いで草の上に置き、エレーナをそこに横たえる。
そして僕に、「「何をしたのか説明してくれる?」」と、怖い顔で迫ってくる。
「ごっ、ごめん!この辺りの精霊達にお願いをしただけなんだよ。」
「「お願い?」」
「ちょっとこの辺りから、居なくなってくれって。」
リオンとシオンは不思議な顔をしている。
「はぁ?お願いしただけで、精霊がいなくなる?」
「ドラゴンって、そんなことできるの?うそでしょ?」
そこにミライが僕の肩に戻ってくる。
「ここを中心とした半径1キロは、精霊の気配が無いよ。タクミ、すごいね!」
ミライが僕を褒めてくれるが、双子がそれに抗議する。
「スゴイけど、ダメ!これはマズイよ!」
「そうだよ!早く元に戻して!この辺りの精霊球が動いてないと、ケモノが入ってきてしまう。」
「そうだよ!あの異常種が入ってきたら、マズイから!」
わっ、わかったよ。
僕は精神を集中する。
精霊達、お願い聞いてくれてありがとう!
もう大丈夫だから、戻ってきて!
僕がそう願うと、周りの空気が変わるのが分かるくらい変化した。
精霊が集まりすぎて、なんだか息苦しい!
そう思った瞬間、僕はドラゴンに変現していた。
僕の周りに何かの気配を感じる。
痛いほどの敬愛の念が僕を包む。
精霊達って、ホントにドラゴンが好きなんだな。
リオンとシオンを見下ろすと、紋章システムから精霊球を出して、周りを警戒している。
ウサ吉とウサ子も出てきてる。
あぁ、良かった。元に戻ったんだな!
それにしても、精霊が居なくなるのはマズイね。
このお願いはしてはいけないな。気をつけよう。
「タクミ!もう大丈夫だよ!人型に戻って!」
「そうだよ!なんでドラゴンに変現してるのさ?」
僕だって何で変現したのか、よく分からないんだけど。何だったんだろう?
不思議に思ったが、リオンとシオンの言葉に従って、僕は人型に戻る。
そして、エレーナの様子を伺う。アドラが具現化して、エレーナの枕元で座っていた。
「エレーナはどう?大丈夫なのかな?」
紋章システムが回復したため、メディカルチェックをしていたリオンが、「問題無いよ」と答える。
「アドラ、ごめんよ。僕の所為だよね。僕が君を消してしまったから。」
僕がシュンとして話すと、アドラが淡々と答える。
「ドラゴンの力を読み誤った私達がいけないのです。それに…。エレーナは私に頼り過ぎなのです。もうすぐ成人なのだから、このままではいけないと思っていたのです。」
表情が変わらないはずのアドラの顔が悲しそうに見える。
「アドラ。僕に出来ることがあるなら、言ってほしい。お詫びってわけじゃないけど、君達の力になりたいんだ。」
エレーナとアドラには何かがあると感じた僕は、そう提案する。
「精霊を操れるタクミに会えたのは、何かの運命だと思うのです。エレーナの事を知ってほしい。そして助けてほしいのです。」
アドラはそう言うと、エレーナの秘密を話し出した。
「エレーナには特殊な能力があるのです。」
「瞬間記憶だね?」
「はい。それは、エレーナの母親からの遺伝なのです。エレーナの母親は、前のマルクトール王。そして、王宮図書館の主だったのです。」
!!!
エレーナのお母さんが、マルクトール王?
でも、今のマルクトールはトールくんだ。ということは。
「お母さんはもう亡くなってるんだね?」
「そうなのです。エレーナの母親は、短命でした。タクミは、人の脳の使用量を知っていますか?」
「100%使用できる人はいないって聞いたことがあるけど。そういうこと?」
「はい。脳は、その箇所毎に違う働きをするのです。運動を司る箇所、感情を司る箇所。ところが、前マルクトール王は、脳力を同時に使うことができたのです。」
「違う事を同時進行で処理できたってこと?」
「そうなのです。だから、常に脳がフル稼動している状態だったのです。」
「でも、そんなのって…。」
人は脳を休ませるために眠ると聞いたことがある。普通の人でもそうなのに、フル稼動していたとしたら、負担が大きかったんじゃ?
僕の考えを読んだかのように、アドラが続ける。
「エレーナの母親は、負荷がかかり過ぎだったのです。それが短命の原因です。このままでは、エレーナも短命になってしまうのです。」
そんな!
「エレーナは、思考を同時処理することができるのです。だから、いくつもの精霊球を同時に操ることができる。」
そうだったのか!
「エレーナには、そんな素晴らしい能力がありますが、それには弊害があるのです。エレーナには、忘れることができないのです。」
覚えたことを忘れないってことだよな。何が問題なんだ?
「通常のヒト種は、忘れることで感情を保っているのです。」
どういうこと?
「タクミ。あなたにも忘れたい過去があるはずなのです。」
アドラが、思いがけない質問をしてくる。
忘れたい過去?
両親が亡くなった時。
その後、育ててくれた祖母が亡くなった時。
そして、あの会社に勤めていた時。
その時の感情が蘇る。
祖母が亡くなった時。
かなしい。悲しい。哀しい。カナシイ!
あの会社に勤めていた時。
むなしい。虚しい。空しい。ムナシイ!
その時の記憶が鮮明に蘇り、動けなくなる。
「タクミ!忘れていいんだ!そんな記憶は忘れるべき記憶なんだよ!」
ミライの声がする。
「人はね。忘れることができるから、生きていけるんだよ。」
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