異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

文字の大きさ
135 / 247
マルクトール王国編

123話 主人公、考える

しおりを挟む
 

「都市構築研究家とは、街の構造を研究する仕事です。どのような街が人々にとって暮らしやすい街なのか、ヤスナはそれを考察した成果を公開しています。都市を研究するヤスナにとって、1500年続いてきたザンザーラはまさに夢のような場所でした。だから、母親から神官を引き継いだのです。」

「暮らしやすい街を研究してるくせに、この街には誰も住んでないって、おかしな話だな!」
 今まで黙っていたショウゴが、茶化すように発言する。

「そうです。ヤスナが本当に困っているのはそれです。膨大な他の都市の例から、こういう街にしたら良いのでは、という提案をしたこともあったのですが、いざ実行しようとすると、このザンザーラでは上手くいきませんでした。」

 考察と実践は違うってヤツだな。

「歴史あるところって、独特の慣習があってなかなか変えられないから、大変だったと思う。でもそれを変えていかないと、生き残れないよ。」

「お前、なかなか良いこと言うな!」

 僕の言葉にショウゴが同意してくれる。

「その通りです。でも、じつは最後までここに住んでいたのは、この街の決まりを守っている人々でした。彼らはこの決まりが良いと言って、長く住んでくれていました。そんな彼らも老衰で亡くなりましたが。」

 この街に住んでいた人は、この独特のルールが良いと言っていた。しかも長く住んでくれていた。それを知っているヤスナは、この独特のルールを変えるのが良いことなのか、分からなくなってしまったのだろう。
 でも、この独特のルールがあるせいで、人が定住しないのも事実だ。

 これは難しい問題だぞ!

 これを解決するの?
 成人前の子供達と僕で?
 できるのか?

 考え込んで黙ってしまった僕達に、リオンとシオンが助け舟を出す。

「はいはーい。聞きたいことは、聞けたかな?」
「このヤスナの悩みを解決するのは、ここにいる7人だよ。全員で答えを出すんだ。」
「それまでは、ここで生活するよ。チカゲ、どの家でも良いの?」

「はい。この街の家はヤスナが定期的に補修していますから、どこでも居住可能です。好きな家を選んで、中を整えて住んでください。」

「と言うことで、各自好きな所に住んでいいよ。で、明日から本格的に解決に向けて動いてね。」
「明日の朝10時に神殿の前に集合だよ。そこで各自の考えを聞くから、今日は良く考えるように。じゃあ、解散!」

 リオンとシオンの言葉で、僕達は解散した。

 が、その場を離れようとしている僕達に、シオンが声をかける。
「あっ、そうそう。情報が必要な人は僕達かチカゲに聞いてね。」

 わざわざ言うなんて…。何かあるのかな?

 疑問に思ったが、僕はそのままその場を離れる。

 他のみんなも各自で住む家を決めるようだ。

 今回は僕は参加者だからね。リオンとシオンと同行することはできない。
 エレーナも1人で行動するみたいだし。

 この世界の子供達はたくましいな。1人で行動することが普通になってる。これが日本だったら、何人かでグループができて、同じ行動をするのだろう。

「タクミ、何か心配事?」
 黙って歩く僕に、ミライが話しかけてくる。

 あぁ、そうか!
 この世界にはパートナー精霊がいるからだ。だからグループを作る子がいないんだ。

 僕は昔から1人でいることが多かったから、グループを作る子達の考えはよくわからない。でもいつも疑問に思っていた。グループって、グループの中の子の考えに同調しないといけない雰囲気があるよね?それって、どうなの?

 何か悪い事をする子達って、多くがグループだよな。たくさん集まると、悪い事でもノリでしてしまうのかな。

 でも、この世界には他の子に流されて悪い事をする子はいない。だって、パートナー精霊がいるからね。

 この世界の方が僕は好きだな。

 僕はミライをジッと見る。
 キョトンとした顔で僕を見てくるミライに、返事をする。
「なんでもないよ。それより、どこに住む?」
「ミライはね。神殿が見えるところがいいな。あの神殿いいよね。厳かな雰囲気が好きだな!」
「おっ、ミライも?僕もそうだよ。なんだか安心するんだよね。神社に似てるからかな。」
「神社?」
「日本にあるんだよ。いつか一緒に行こうね。」
「あい!」
 ミライが嬉しそうに返事をする。

 僕達は神殿が見える場所にある日本家屋のような一軒家に決めて、内装を整える。
 何もなかった部屋の中が、快適な空間に変わる。

 いつ見ても不思議な光景だな。
 紋章システムって万能過ぎて、少し怖い。
 もし、これが使えなくなったら?
 この世界はどうなってしまうのだろう?

「さぁ、部屋が出来たよ!タクミ、この問題はどうやって解決する?」

「んーっ、難しいよね。この問題。」

「そうだね。ヤスナのお願いって無茶だよね。この街の独特のルールは無くしたくないけど、住んでくれる人が増えて欲しいんでしょ?無理だよ、それ。」

「だよな。この都市を残したいなら、住む人が増えないとダメなんだよね?」

「そうだよ。紋章システムは生きてる人が快適に過ごすための道具だからね。誰も住まなくなった都市のお世話はできないよ。」

 じゃあやっぱり、この都市を残すには、住んでくれる人が増えるような方策を考えないと。

 僕はその日の夜遅くまで、人を増やす方法を考えたのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

処理中です...