異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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マルクトール王国編

125話 主人公、情報を集めるー1

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「それでは、この街と神殿を調査するのです。タクミとミライも一緒に来るのです。」

 リオンとシオンとはその場で別れて、僕とエレーナは街の中を歩く。

「エレーナ、何を調べるの?」

「この街の建物を詳しく調べてみたいの。特に建物の用途をね。」

「用途?何に使われていたかってこと?」

「この街のはじまりは学問都市だったわ。でもその後は、参拝者で賑わっていたの。」

 参拝者?
 ということは、神社やお寺のある場所に作られる門前町みたいなところだったってこと?

「じゃあ、普通の住居じゃなくて、お店が多かったってことかな?」

「うん。それを調べてみたいの。」

 エレーナと街の中の建物を見て歩く。一階が店舗で、二階が住居の建物が多いようだ。

 日本家屋に似たような建物が多いな。
 やはり、この世界とアースは交流があったのかなぁ?

「やっぱり何かのお店が多いわね。これなら…。」

 エレーナが黙り込む。
 また何かを激しく考えているんだね。

 僕達は街中を歩き回った後、神殿に向かう。神殿の中も調べてみたいらしい。

 神殿は良く見ると木造だった。

 こんな大きなものを木造で?!
 かなりの人員が必要だったはずだ。しかも木造ってことは建て替えが必要だ。木は朽ちるからね。

 この街の人々は結びつきが強い人達だったんだな。だからヤスナはあんなに苦悩しているんだ。

 神殿の中に入る。

 天井がものすごく高い。何もない空間だ。

「この神殿の居住区は地下のはず。行ってみましょう。」

 エレーナの指示で地下に降りる階段を探す。降りて行くと、壁面がほのかに光っている。

「これは発光壁だわ。特殊な物質を壁の中に練り込むことで、明かりが必要なくなるの。」

 この世界は、アースには無い物質や技術がいっぱいある。自然がいっぱいだから、文明が発達してるようには見えないけど。
 でも、こんなに自然がいっぱいのところでのんびり暮らしてみたいな。
 日本だと高層マンションや団地で暮らしている人も多くいる。隣と近すぎるのはストレスだよな。日本は人口が多過ぎるんだよ。

 神殿の地下を進むと広間のような場所に出る。

「これは…。」
 エレーナが何かに気付いたようだ。

 広間の奥の壁面に装飾が施してあるのが見えた。

 いわゆる宗教画ってヤツか?
 壁面いっぱいに描かれているのは、羽のある人々が協力して、この神殿を造っている場面だった。

 すると、そこにチカゲが現れる。

「あなた達でしたか。誰かの気配がしたので、見に来たのですが。」

「チカゲ、この壁画は?」

「はい。今から800年ほど前、暗黒の時代が終わった後に、この神殿を再建した時の絵だと伝わっています。」

「羽を持つ人達が描かれているわ。」

「はい。この街に住む者の多くがテングの血をひく者でした。」

 テングって、あの天狗?

「どうしたの?タクミ。」

 驚く僕にエレーナが声をかける。

「僕の住んでいたところにも天狗っていう妖怪がいたって伝わってるんだよ。」

「そうなの?昔は今より頻繁に繋がっていたらしいから、そういう事もあるかもね。」

 エレーナはチカゲには分からないように、言葉を濁す。

 僕が異世界生まれだということが分からないように、気をつけてくれてるんだ。優しいね、エレーナは。

「テングは羽のある種族で、頭の回転が速かったと言われています。このザンザーラを元々造ったのは、テングの種族でしたが、その後、移り住んできた様々な種族と仲良く暮らしていたため、ここは昔のエレメンテでは珍しく、混血が多かったそうです。」

「紋章システムができる前は、違う種族同士で戦争をしていたって聞いたよ。なのに、ここは平和な街だったんだね。」

「ここは元々学問都市よ。知識を求めて集まった人達ばかり。同じ目的を持った人達には、種族なんて関係ないわ。」

「そうか。同じ目的を持つ者同士だから、仲良くできたんだね。」

「そう。混血が多い。だから…。」
 エレーナがつぶやく。

 何かに気付いたようだ。

「チカゲ。ここに関する古い書物が見たいの。紋章システムには公開されていない秘蔵の書物があるはずよ。」

「そっ、それは…。」
 チカゲは少し考えた後、「こちらです」とさらに地下の階層に案内する。

「この部屋です。」
 チカゲが案内してくれた部屋には、巻物状の書物が山のように置かれていた。

「なぜ、紋章システムに公開しないの?」
 エレーナがズバリと聞く。

「この部屋は代々の神官だけが入れる部屋。昔からの決まりなのです。」

「えっ?そんな部屋に、僕達が入ってもいいの?」

「えぇ、あなた達が最後の望みなんです。ヤスナはこの街をどうにかしようと様々な試みをしました。でもどれも、上手くいかなかった。それで、仕方なく王宮に助けを求めたんです。」

「仕方なく?」

「ヤスナはとても苦悩しています。誰も居なくなったこの街は無に還す方が良いのではないか、いや、歴史あるこの街を無くしても良いのか。王宮に助けを求めたのは、エスティオで若い人達が来ると分かっていたからです。ヤスナは賭けにでることにしました。この若い人達が、無くすと言うなら仕方ない。だが、なにか存続できる方策があるなら、若い人達にこそお願いしたいと。」

 !!!

 ヤスナは大きな覚悟で王宮に助けを求めたんだ!

 でも。

 最初に会った時、『こんなガキどもに何ができるのだ!』って怒っていたような…。

 どうなってるんだ?

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