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マルクトール王国編
129話 主人公、話し合うー3
しおりを挟む「さぁ、みんなの意見は出たけど、結論は大きく2つだね。神殿だけ残すか、街と神殿を残すか。困ったね…。」
アランが悩んでいる。
「もう面倒だから、どっちも無くすでいいだろ?その方が早いぜ。」
ショウゴが投げやりに発言する。
「街を残すためには、神官になってくれて、街の面倒をみてくれる人を探さないといけないのよね?そんな人いる?見つからなかったら、帰れないってことでしょ?私は早く帰りたいの。時間がかかる案は反対よ!」
シェラがイライラしたように言う。
「んっとね。ワタシも早く帰りたいから、あんまり時間がかかる案は嫌だなぁ。」
タツコもシェラと同じことを主張する。
この2人って自分の都合が一番なんだな。まだ成人前だから、そういう考えになってしまうのも分かるけど。
この考えのまま成人になるのは、マズイよな。
この問題はヤスナの依頼だ。自分の都合じゃなくて、依頼者にとって一番いい結論にしたいと、僕は思うんだけど。
「私は、私が考えた案が一番だって思ってるわ。だって私が一生懸命考えた結果なんだもの。誰にも負けてないと思うの。時間はかかるかもしれないけど、ヤスナの希望通りだし、成功した事例があるんだから、今回も成功するはずよ!」
フロムが熱く語る。
おっと、フロムは自分にすごく自信があるタイプなんだね。
でも成功した事例があるからって、今回も成功するとは限らないんだよ。サラリーマンだった僕には、嫌という程、分かっていることだ。
「ボクだって、あまり時間がかかるのは困るけど、結論が出ないと帰れないし。」
アランはますます悩んでいる。
「だから、全部無くそうぜ!一番手っ取り早いし。」
「そうよ!早く結論を出しましょう!」
ショウゴとシェラに迫られたアランが、観念したように発言する。
「分かったよ。じゃあ、多数決で決めようか。」
はっ?多数決?
多数決になったら、神殿だけ残すっていう案が選ばれてしまう。これじゃ、話し合いの意味がない。
「いやいや、みんな。もう少しちゃんと話し合ってから決めようよ。」
僕はみんなにそう提案するが、ショウゴとシェラは「何を話し合うんだよ!」と聞く耳も持たない。
すると、今まで黙って見ていたアドラが話し出す。
「多数決は、もっとも愚かな選択なのです。そんなことを提案するアランはおバカさんなのです。」
アドラ!話したかと思ったら、アランへの暴言って!それはマズイよ!
「なっ、なんでボクがバカなんだよ!困ったときは多数決だろ?別に変なことじゃない!」
アランが怒り出す。
それでもアドラは言葉を続ける。
「多数決は変なことなのです。」
「なんだよ、それ!ボクのホームでは、普通のことだよ!困ったときは多数決で決めてたよ!」
「多数決で決めた内容は、どういうものなのです?」
アドラの質問に、不審そうな顔で答えるアラン。
「どういうもの?それは。夕飯のメニューで困ったときに、どっちがいいか、みんなに聞いてから作ってたし。」
夕飯のメニューって…。
「多数決はどちらでも大差ないものを決める時に使用できるものなのです。今回のように、大きく結論が変わる場合には使用してはいけないのです。」
「なっ、何だよ。それ…。」
「夕飯のメニューは、どちらに決まってもみんな食べられるのです。だから自分が希望したメニューが選ばれなくても、そんなに不満に思う人はいないのです。でも今回の問題は違うのです。」
アドラは淡々と続ける。
「今回、フロム、タクミ、エレーナはすごく真剣に考えました。なのに、それを拒否されたとしたら、とても不満に思うのです。だから、多数決は絶対してはいけないのです。」
「多数決がダメだと言うなら、どうしたらいいって言うんだよ!」
「だから、話し合いをするのです。自分では調べられなかった情報が、他の人から聞けた。話をすることで、新たな発見があるのです。フロムの商業都市の話はとても興味深いですし、シェラの神殿の管理を王宮に任せる話もなるほどと思ったのです。そして、タクミのテングの血を引く人を探して神官を務めてもらうって話も良かったのです。」
「でも、それじゃあ結論は出ないよ!」
「話し合いは、誰かを言い負かすためにするのではないのです。これはヤスナの問題を解決するためにやっているのであって、自分の案が採用されるためにやってる訳ではないのだから。」
「それは分かってるよ。だからボク達はいろいろ考えて、話しているんじゃないか!」
「それは違うのです。フロムは自分の案が最高だと思っていて、譲る気はないのです。シェラとタツコは自分達の都合が優先でヤスナのことを考えていないのです。ショウゴはそもそも他人に興味がないから、常に簡単な結論しか選ばないのです。そして、アラン。」
アドラは表情のない顔をアランに向けると、こう続ける。
「あなたには自分というものがない。誰かに何かを言われると、すぐに意見を変えてしまう優柔不断な人。だから多数決で決めようとする。それではいけないのです。自分の確固たる意見を持つことが重要なのです。」
「なっ……。」
アドラの辛辣な意見に言葉を失うアラン。
そんなアランの代わりに発言したのは、ショウゴだった。
「そう言うお前は何様なんだよ、エレーナ。パートナー精霊が話してるから、何かの病気で話せないヤツかと思ってたけど。お前、昨日、タクミと普通に話してたよな?街の中で見たぞ!タクミとは話せても、オレ達とは直接話したくないってことかよ!偉そうにしやがって!」
次の瞬間、ショウゴが立ち上がって、椅子を蹴り飛ばす。そして、エレーナに殴りかかろうとする。
おいおい、いくら短気だからって手を出したらマズイよ。たしかに、アドラの言い方にも問題はあったけど!
エレーナ!あぶない!
エレーナを助けようとするが、僕より素早く対応した人がいた。
「はいはーい、そこまで!」
「暴力は禁止だよ!」
僕が動く前にリオンとシオンが、ショウゴを捕まえていたのだ。
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