猿の惑星プロジェクト

九条秋来

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猿の惑星プロジェクト その3 猿の顔

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非常警報音とともにイーエフ氏は目覚めた。
打ち合わせ通りだ、慌てることはない。
『これから地球の海に着水体制に入ります』とエルフ727が言った。
「了解しました」
予定どおりだと言われても多少は緊張する。
なにしろ、探査宇宙船は振動し、船内には非常音が鳴り響いている。
隣の冷凍睡眠機で睡眠していた猿も目を覚ました。

そして探査宇宙船は海上に着水した。
そこからボートで陸に上がる。
そこには体験ドームがあり、イーエフ氏とエルフ727が入り、猿もついでに入る。
ここでは、陸に上がった彼らを猿軍団が待ち受けていて捕まってしまう内容の映画をコーラや珈琲を飲みながらポップコーンをかじりながらのんびり見るだけだ。
ストーリーはわかっているのでイーエフ氏は半分眠りながら見ていた。
やがて映画が終わり、ドームから出るとそこには2頭の馬が待ち受けていた。
馬にイーエフ氏とエル727が乗り、海辺を進むと約束通り、自由の女神の上半身像が見えてくる。
ここでチャールトン・ヘストンの映画では彼が
「なんてこった、ここは地球だったのか・・・」と嘆くわけだが、それを真似てイーエフ氏も嘆いてみたがどうも実感がわかない。
『もう一度やってみますか』とエルフ727が言う。
「いやもういい、こんなシーンは私には似合わない、やっぱりあのチャールトン・ヘストンじゃないとね」

そうしていると、ベータ社の撮影部隊がやってきた。
「どうでした、この『猿の惑星プロジェクト』は?」
「充分楽しませてもらった。実は宇宙旅行も初めてだったんだ」
「そうですか、それは良かった」

とか会話しているとエルフ727がイーエフ氏の顔を見て驚いたように言った。
『おかしいですわ、顔が猿になっていきます』
「何だって、そんな馬鹿な・・・」
イーエフ氏は自分の顔を手で覆った。
手触りで顔の皮膚が変化していくのがわかる。
撮影部隊の1人が鏡をイーエフ氏に渡した。
その鏡には、『猿の惑星』の映画に出てくるような猿の顔が映っている。
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