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福来博士の憂鬱 その12 木星へ向かう
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そしていよいよ木星に出発する時がやってきた。
参加者は崖の上の福来博士の家に全員集合した。
リルはピノコをペットキャリーケース入れて
「これから木星に行きますから我慢していてね」とか言っている。
木星に行くメンバーの合計は人間4人とアンドロイド1人と猫1匹だ。
白ひげマスターはアーミー柄の服で帽子もアーミー柄の目立つ格好をしている、腰のベルトには何か小道具入れを着けている。
「その中には何が入っているんですか?」福来博士はきいた。
「これは十徳ナイフというやつじゃ、こんな時の為に大事にとっておいたんじゃ」
「ふうん十徳ナイフですか・・・昔、流行りましたね、しかしそんな物が役にたつとは思えませんがまあいいでしょう」と福来博士は笑って言った。
「母船に搭乗したら、まずすべての所持品を検査されます。それで合格しないと没収されますよ」と星村風光が言った。
隣の季村桃子さんはそれを黙ってきいている。
ここで福来博士は2人の結婚について聞いてみた。
「ところで2人は結婚しないんですか?」
季村桃子さんの頬がすぐピンク色に染まった。
「我々はまだ、再会出来た事に毎日感激しているので、結婚を考えるルベルじゃないんです」
「そうですか、それはいいかも知れないですね」
そんな話しをしているうちに車のライトが接近してきた。
車は停止し男が車から現れた。
住宅供給省の反町タカシだった。
「博士、突然なお願いですが、僕も木星に行けないでしょうか?」と反町は言った。
「まじですか?」
「まじです、昨夜一晩考えてやっと結論に達したんです。普段から僕は個性がない二枚目とか、単なる脇役に過ぎないと付き合う女性達に言われてきました。それで考えたんです。どうせ短い人生なら思いきった事にかけてみようと・・・だめですか?」
「もうすぐお迎えのUFOが来ます。その時に代表者と相談してみます。多分大丈夫と思いますが・・・」と星村風光が言った。
「ありがとうございます」と言って反町鷹志は星村風光の手を握った。まだ、行けると決まったわけではないのに・・・
これで木星に行く人間が1人増えたわけだ。
そのうち夜空の一点がぼんやりと明るくなった。
見ているとアダムスキー型UFOらしいのが数機見えた。
そのうち1機だけが地上に舞い降りてきた。
UFO下部のドアが開き、数人の宇宙人が降りてきてゆっくりと接近してきた。
その姿はいわゆるグレータイプの宇宙人で頭がでかく目も大きい。
そのうちの代表者らしい1人が星村風光と何やら会話を交わしている。
代表者は自分のデカイ頭に手をやった。
何をするのかと博士が思っているとその頭を首から外した、何とデカイ頭は被り物だったのだ。
その被り物の下から現れた本物の頭はいわゆるヒューマノイドタイプで、やや地球人に近い。それにブロンドタイプの頭髪もある。
「はじめまして私があなた達を迎える代表のソフィアです」と代表者は言った。
流暢な日本語だ。
「驚かれましたか、映画によく出て来る宇宙人タイプのかぶり物をしてきました。正解に言うなれば我々は宇宙人ではありません。正確にいうと木星にいる我々の母船にはいわゆる宇宙人は1人もいません。本物のいわゆる宇宙人は寿命が尽きて亡くなりました。我々は彼らの手によって作られた、いわゆるヒューマノイドです。そこにおられるリルさんと同類です。よろしくお願いします」
本物の宇宙人が全員亡くなっていたとは驚きだったが、現実は厳しいなと福来博士は思った。
「はじめまして」と福来博士はヒューマノイドのソフィアに軽くお辞儀をした。
「木星に向かうメンバーが増えたのは、今星村風光から聞きました。1人ぐらい大丈夫ですよ」とソフィアは言った。
それを聞いて反町鷹志は大喜びのジェスチャーをした。
「さあそれでは全員UFOにお乗りください。詳しい話しはまたあとでします」
そして、さっさと全員乗り込むと、UFOの姿は地上から消えた。
地上から離れたUFOは衛星軌道に入り、近距離に国際宇宙ステーションが確認出来る。
「地球を去る前に1時間ぐらいこうやって衛星軌道を周ります、めったにない機会ですからよく観察してください」とソフィアは言った。
「彼らから我々のUFOは見えないのか」と福来博士は聞いてみた。
「もちろんです。地球人のレーダーではこのUFOを捉える事は出来ません。勿論肉眼でも見えませんね」
「なるほど・・・」
「試しに5メートルまで接近してみましょう」とソフィアは言った。
UFOは国際ステーションで船外活動をしている隊員にゆっくりと近づいていく。
さすがにこれは向こうから見えるだろうという距離で、UFOの窓のすぐ向こうに隊員の顔まではっきり見える。
ところがその隊員はこっちに気がつく様子はない。
「どうです、まったくこっちには気がつきませんね」とソフィアは言った。
「なるほどすごいもんだ、あなた達の科学力は」と福来博士は感心した。
反町も向こうの船外活動員に向かってあれやこれやのジェスチャーをして遊んでいる。
「さあ遊びはこれまでにして、我々のUFOはこれより太陽系最大のガス惑星、ジュピターに向かいます。ジュピターまでの距離は約8億キロ。急げば1分でも行けますがそれでは面白くないので1時間をかけて行きます。そのあいだUFO内部は無重力状態になります。無重力をお楽しみください」
ソフィアは操縦席のメンバーに合図して何かを言った。
メンバーは2本の指でオッケーサインをして、UFOは微妙な振動をしたが、すぐに静かになりUFOは木星に向かって飛び始めた。
オッケーサインが宇宙で共通サインらしいなと博士は感心した。
そしてUFOは木星の母船に向かった。
そのあいだUFO内部は無重力状態となった。
反町はシートのベルトを外して無重力状態の床に浮いたままマイケル・ジャクソンのムーンウォークをはじめた。
それは無重力ウォークとでも言える素晴らしいパフォーマンスだった。
次にうけをねらってビリージーンまでやり始めた。
「さあさあ、お遊びはそれぐらいにしてシートベルトを締めてください」とソフィアに言われまた反町はソファーに座り込んで、シートベルトを締めてしょんぼりしてしまった。
座り込んだ反町に全員が音の無い静かな拍手を送った。
参加者は崖の上の福来博士の家に全員集合した。
リルはピノコをペットキャリーケース入れて
「これから木星に行きますから我慢していてね」とか言っている。
木星に行くメンバーの合計は人間4人とアンドロイド1人と猫1匹だ。
白ひげマスターはアーミー柄の服で帽子もアーミー柄の目立つ格好をしている、腰のベルトには何か小道具入れを着けている。
「その中には何が入っているんですか?」福来博士はきいた。
「これは十徳ナイフというやつじゃ、こんな時の為に大事にとっておいたんじゃ」
「ふうん十徳ナイフですか・・・昔、流行りましたね、しかしそんな物が役にたつとは思えませんがまあいいでしょう」と福来博士は笑って言った。
「母船に搭乗したら、まずすべての所持品を検査されます。それで合格しないと没収されますよ」と星村風光が言った。
隣の季村桃子さんはそれを黙ってきいている。
ここで福来博士は2人の結婚について聞いてみた。
「ところで2人は結婚しないんですか?」
季村桃子さんの頬がすぐピンク色に染まった。
「我々はまだ、再会出来た事に毎日感激しているので、結婚を考えるルベルじゃないんです」
「そうですか、それはいいかも知れないですね」
そんな話しをしているうちに車のライトが接近してきた。
車は停止し男が車から現れた。
住宅供給省の反町タカシだった。
「博士、突然なお願いですが、僕も木星に行けないでしょうか?」と反町は言った。
「まじですか?」
「まじです、昨夜一晩考えてやっと結論に達したんです。普段から僕は個性がない二枚目とか、単なる脇役に過ぎないと付き合う女性達に言われてきました。それで考えたんです。どうせ短い人生なら思いきった事にかけてみようと・・・だめですか?」
「もうすぐお迎えのUFOが来ます。その時に代表者と相談してみます。多分大丈夫と思いますが・・・」と星村風光が言った。
「ありがとうございます」と言って反町鷹志は星村風光の手を握った。まだ、行けると決まったわけではないのに・・・
これで木星に行く人間が1人増えたわけだ。
そのうち夜空の一点がぼんやりと明るくなった。
見ているとアダムスキー型UFOらしいのが数機見えた。
そのうち1機だけが地上に舞い降りてきた。
UFO下部のドアが開き、数人の宇宙人が降りてきてゆっくりと接近してきた。
その姿はいわゆるグレータイプの宇宙人で頭がでかく目も大きい。
そのうちの代表者らしい1人が星村風光と何やら会話を交わしている。
代表者は自分のデカイ頭に手をやった。
何をするのかと博士が思っているとその頭を首から外した、何とデカイ頭は被り物だったのだ。
その被り物の下から現れた本物の頭はいわゆるヒューマノイドタイプで、やや地球人に近い。それにブロンドタイプの頭髪もある。
「はじめまして私があなた達を迎える代表のソフィアです」と代表者は言った。
流暢な日本語だ。
「驚かれましたか、映画によく出て来る宇宙人タイプのかぶり物をしてきました。正解に言うなれば我々は宇宙人ではありません。正確にいうと木星にいる我々の母船にはいわゆる宇宙人は1人もいません。本物のいわゆる宇宙人は寿命が尽きて亡くなりました。我々は彼らの手によって作られた、いわゆるヒューマノイドです。そこにおられるリルさんと同類です。よろしくお願いします」
本物の宇宙人が全員亡くなっていたとは驚きだったが、現実は厳しいなと福来博士は思った。
「はじめまして」と福来博士はヒューマノイドのソフィアに軽くお辞儀をした。
「木星に向かうメンバーが増えたのは、今星村風光から聞きました。1人ぐらい大丈夫ですよ」とソフィアは言った。
それを聞いて反町鷹志は大喜びのジェスチャーをした。
「さあそれでは全員UFOにお乗りください。詳しい話しはまたあとでします」
そして、さっさと全員乗り込むと、UFOの姿は地上から消えた。
地上から離れたUFOは衛星軌道に入り、近距離に国際宇宙ステーションが確認出来る。
「地球を去る前に1時間ぐらいこうやって衛星軌道を周ります、めったにない機会ですからよく観察してください」とソフィアは言った。
「彼らから我々のUFOは見えないのか」と福来博士は聞いてみた。
「もちろんです。地球人のレーダーではこのUFOを捉える事は出来ません。勿論肉眼でも見えませんね」
「なるほど・・・」
「試しに5メートルまで接近してみましょう」とソフィアは言った。
UFOは国際ステーションで船外活動をしている隊員にゆっくりと近づいていく。
さすがにこれは向こうから見えるだろうという距離で、UFOの窓のすぐ向こうに隊員の顔まではっきり見える。
ところがその隊員はこっちに気がつく様子はない。
「どうです、まったくこっちには気がつきませんね」とソフィアは言った。
「なるほどすごいもんだ、あなた達の科学力は」と福来博士は感心した。
反町も向こうの船外活動員に向かってあれやこれやのジェスチャーをして遊んでいる。
「さあ遊びはこれまでにして、我々のUFOはこれより太陽系最大のガス惑星、ジュピターに向かいます。ジュピターまでの距離は約8億キロ。急げば1分でも行けますがそれでは面白くないので1時間をかけて行きます。そのあいだUFO内部は無重力状態になります。無重力をお楽しみください」
ソフィアは操縦席のメンバーに合図して何かを言った。
メンバーは2本の指でオッケーサインをして、UFOは微妙な振動をしたが、すぐに静かになりUFOは木星に向かって飛び始めた。
オッケーサインが宇宙で共通サインらしいなと博士は感心した。
そしてUFOは木星の母船に向かった。
そのあいだUFO内部は無重力状態となった。
反町はシートのベルトを外して無重力状態の床に浮いたままマイケル・ジャクソンのムーンウォークをはじめた。
それは無重力ウォークとでも言える素晴らしいパフォーマンスだった。
次にうけをねらってビリージーンまでやり始めた。
「さあさあ、お遊びはそれぐらいにしてシートベルトを締めてください」とソフィアに言われまた反町はソファーに座り込んで、シートベルトを締めてしょんぼりしてしまった。
座り込んだ反町に全員が音の無い静かな拍手を送った。
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