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マネージャーになる
5、再会
授業帰りの俺は、今コンビニでC*Fの事が書いてある雑誌のインタビュー記事を読んでいた。
人気大爆発中。Cronus*Fantazumaの魅力に迫るか……。
内容はメンバーの趣味や今ハマってる物が書かれていて、それはやり直す前に読んだ物と全く一緒だった。当時の俺はメンバーの記事を全て読んで趣味とか好きな物を覚えていたのに、それが役に立った事は一度もなかった。
……それにしても、相変わらず光は好きな食べ物が甘い物になってるんだな。
あの時、辛い物が好きだと言った光の顔を思い出して俺はため息をついてしまう。
「直はまた、C*Fの記事を読んでるの?」
声をかけられてハッと横を見ると、そこには仁がいた。
そういえば俺は仁と一緒に帰るために、正門近くのコンビニで待っていたのだった。
「それは仁が遅いからだろ?」
「わるいわるい、余分な雑用押し付けられちゃったからな。それにしても、さっきから正門の方が騒がしいんだけど……直は何か知ってる?」
「正門……? いや、俺はここにいたから気がつかなかったけど」
そう思ってコンビニから出た俺は、外を見てギョッとしてしまう。
「なんだこの人だかり……」
「しかも女の子ばっかじゃん!? なんだなんだ、有名人でも来たのかな? 直、せっかくだし見に行こうよ!」
「何言ってるんだ、後は帰るだけなんだからわざわざ正門に戻る必要ないだろ?」
「まあ、確かにそれもそうだよな……」
そう言って俺たちは駅の方へと歩き出す。
俺はなるべく有名人とか、芸能界に関わりがありそうな人には絶対に近づきたくなかった。
それなのに人集りの方から、俺の名を呼ぶ声が聞こえてきたのだ。
「直!!!」
つい反射的に後ろを振り返って、俺は驚いた。
一人の男性が人を押し除けながら、必死にこちらへと走って来たのだ。
その姿はサングラスをしているせいで、ぱっと見誰なのかわからない。
「何? 有名人はお前の知り合いだったのか?」
「そんなわけないだろ!」
「でも、昔の知り合いとかじゃないのか?」
子役の知り合いとはもう誰とも連絡を取っていない。それなのに目の前に迫ってくる男は一体誰なんだ?
ようやく俺の前に辿り着いた男は、息を切らしながらサングラスを外した。
「直、ようやく見つけた」
現れた顔に、俺は驚きのあまり動けなくなってしまった。
「……へ?」
「げぇっ!? なんでこんなトップアイドルが……って、そうだった。風間優と言えば直の弟だった!」
驚く仁の言う通り、そこには俺の弟である優の姿があったのだ。
「直、こうして約束通り会いにきた」
「やくそく……?」
俺は優と何か約束をしていただろうか?
記憶を辿っても、俺は家を飛び出していったあの日の優しか思い出せなかった。
「やはり直は俺との約束なんて覚えてないか……だけど家を出たときに約束した筈だ。トップアイドルになったら迎えに行くからと……」
「は?」
おかしい。
俺の記憶の中の優は、トップアイドルになって俺を見返すまで帰らないと、言っていた筈だ。
「だから直に早く会いたくて、俺はトップアイドルになった。だから大人しくついて来い」
「んん? ちょっと待て流れが全く読めないし、連れて行くって何処にだよ? いや、その前に何で俺を持ち上げてるんだ!?」
「黙ってろ、動かれると運び辛い」
いやいや、だからって何でお姫様抱っこされてるの俺!?
誰か助けてくれ! そう思って仁を見たのに、唖然と固まっていて助けてくれそうになかったのだ。
気がつけば俺はろくな抵抗もできないまま、優が乗って来た車の前にいた。
そして女の子達の黄色い悲鳴に押され、優は俺をお姫様を扱うように優しく車に乗せたのだ。
「悪いな元、車を出してくれ」
その名前に驚いた俺は、運転席を見てしまう。
そこには間違いなくC*Fのリーダーである火野元が座っていた。
「わかった。頼むから俺が運転してる間に話は終わらせておけよ」
「ああ」
何故ここに元がいるのかもわからないし、何で俺は車に詰められてるんだよ?
「いやいや待ってくれ。いきなりこんな誘拐みたいな事して……優は俺を何処に連れて行くんだよ?」
「何処ね……さっきも言っただろ。俺はトップアイドルになったって」
「それは聞いたけど……それよりも、何で近づいてくるんだ?」
優は圧をかけるように、少しずつ俺を車の端に追い詰める。
「……ここならミラーにも映らないな」
「な、何言って?」
「直……」
優は俺の顔を挟むように、両手をバンっと壁についた。
そのせいで俺はもう逃げる事はできない。
……これって壁ドンだよな。実際は弟に圧かけられてるだけなのに、無駄にキラキラしてるせいで恥ずかしくなってきたんだけど……。
「さっきも言ったが俺はお前を迎えに来たんだ。だから今度こそ直は俺の近くにずっといてくれるよな?」
「今度こそって?」
「グループを立ち上げたときは逃げられたからな、今度は絶対に逃がさない」
「いや、でも俺の記憶となんか違うような……」
優は俺のこと嫌いだから恨んでると思っていたのに、なんで??
「そんなのは誤差だ。勿論俺の近くにいてもらうために根回しはすんでいる。直には俺の……いや俺達の専属マネージャーになって貰う」
「え、んんっ!?」
ええええええーーー!!!
って叫びたいのに、それはできなかった。
だって俺の唇は、何故か優の唇で塞がれていたのだ。
目の前には優の……将来絶世の美青年だとか、抱かれたい男No.1になる筈の俺の弟の顔が凄く近くにあって、その超絶イケメンの顔に俺は思考が停止したのだ。
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