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マネージャーになる
7、自己紹介
しおりを挟むリビングには夜を連れてきた光、そして俺と一緒にきた優と元、ここにはCronus*Fantazumaのメンバー全員が集まっていた。
そして優はメンバーが全員いるのを確認すると、ようやく俺を降ろしてくれたのだ。
きっと全員にお姫様抱っこを見られた俺は、恥ずかしさのあまり目が死んでいたかもしれない。
元はそんな俺の肩に手を置くと、メンバーの顔を見回しながら言ったのだ。
「よーし、全員いるな! 前から話はしていたと思うが、新しいマネージャーが見つかった。それがコイツ、優の兄である風間直だ」
俺はまだマネージャーをやると言ってないのに、何故か既に決定事項にされてしまっている事に抗議の声をあげようとした。
しかしそれは、光の驚く声で遮られてしまったのだ。
「ええーーーーー!!!! 風間直ってあの伝説の子役!? 僕子供の頃大ファンだったんだぁ~、だから会えて嬉しいなぁ!」
光はパタパタと小走りで近づいてくると、凄く嬉しそうに満面の笑顔で俺の手を握っていた。
そういえば光はやり直す前の世界で初めて会った時も、こんなふうに嬉しそうな顔をしていた。
その事を思い出してしまったせいで、俺は少し緊張してしまう。
だって、あの時のような失敗はもう許されないのだから……俺は光に嫌われないように優しく笑いかけていた。
「そ、そうか。俺の事をまだ覚えてる人がいるなんて嬉しいよ、ありがとう光」
「あ、あれ? 僕って名前名乗ったっけ?」
しまった……。まだ自己紹介もされてないのに名前を呼ぶとか、しかも呼び捨てにするなんてありえないよな。
そう思った俺は、慌てて言い訳を口にしていた。
「えっと、それはだな……さっき優が名前を呼んだのが聞こえてたし、それに今凄い人気のCronus*Fantazumaのメンバーを俺が知らない訳がないだろ? ……まあ、確かにいきなり呼び捨てにしたのは失礼だったよな。えっと、光さんって呼んだ方がいいか?」
「あー、そっか。今僕達って有名人だった! それによく考えたら優君のお兄さんだもんね。流石に僕達の事も、少しはチェックしてくれてたってことなのかな?」
「あ、ああ。そうだな……」
俺は光の話に合わせて、とりあえずコクコクと頷いておく。
「そっかぁ~、それなら嬉しいな! それと僕って個人的にさん付けされるのはキライだし、直ちゃんともっと仲良くなりたいからそのまま光って呼んで欲しいなぁ~」
「な、直ちゃん???」
突然のちゃん呼びに、そんな呼ばれ方をした事のない俺は驚いてしまう。
「そっ! これはあだ名みたいなものだよ~。それと、一応自己紹介するね。僕は水木光。グループ内最年少で皆の弟なんだ!」
「その弟って言うの、よくテレビで見かけるから知ってるよ」
「へへっ、僕の事もちゃんと見てくれてるなんて凄く嬉しいなぁ~。昔は憧れでカッコいいと思ってたけど、今は僕の方が少しだけ身長が高いみたいだね~。何だか可愛い!」
そう言うと光は、俺のほっぺにチュッとキスをしたのだ。
「はぇ?」
えっと、これは……親愛の証的なやつとか??
その軽い行動に俺の頭にはハテナマークが沢山でてしまう。
しかし混乱する俺よりも先に、光に怒ったのは何故か優の方だった。
「光、嬉しいのはわかるがコイツに触れるな」
「優君ったら、お兄さん取られたからって嫉妬してるの? だけど優君に直ちゃんを縛る権利はないよ~。ねぇ、夜くんもそう思うでしょ?」
「え? う、うん。直は誰のものでもないと思う。あ、突然呼び捨てにしてごめん。俺、土屋夜。これでも直がデビューしたときからずっと追っかけを続けてるファンです。できれば俺の事は、夜って呼んで欲しい……かな」
知らない間に俺の前に立っていた夜に驚きながらも、やっぱり俺のファンだった事に少し嬉しくなってしまう。
しかも夜は俺の覚えてる姿と全く変わらなくて、なんだか安心感を覚えてしまったのだ。
だってやり直す前の世界で唯一の味方は夜だけだったから……。
それにしても、相変わらず目元がよく見えない男だと気になってしまった俺は、つい手を伸ばしていた。
「わかった、夜って呼ばせてもらうよ」
「あ、あの……!?」
「あ! 悪い、前髪で目が隠れてるのがどうしても気になって……」
どうやら俺は前の癖で、夜の前髪を分けてしまったようだ。
「い、いや……驚いただけだから、大丈夫……それに、嫌ではなかったし……」
「そ、そうか……? だけど、夜はこうして目元を出せば他の奴らと同じぐらいイケメンなんだから、もっと見せていけばいいのに……」
「いや、それは……」
「えー、夜くん髪触って貰ってずるーい。直ちゃん俺の髪も触って~、ついでに頭を撫でてくれてもいいよ?」
「え? それは流石に……」
横で見ていた光が羨ましそうに俺に頭を差し出す。
これはどうすればいいのかと優の方を見ると、何故かムッとしていて俺はどうしたらいいのかわからない。
そんな困っている俺を、誰かが引き寄せた。
「全く、憧れの人が目の前に現れたからってお前らはしゃぎすぎだ」
そう言って2人から引き離すように俺を助けてくれたのは元だった。
確かに助かったのだけど、なんで肩を抱くように手が置かれたのか俺にはよくわからない。
「俺の紹介はまだだったよな?」
「あ、ああ。そうだけど……その手はなんだよ?」
「気にするなって、これもコミュニケーションの一つだからな。そんでもって、俺の名前は火野元だ。このグループのリーダーでもあるから、何かあればすぐ俺に連絡をしてくれ」
「わ、わかった。と言いたいところなんだけど、俺はまだマネージャーになるなんて言ってないからな……」
いつ言おうかと思っていたけど、正直俺はマネージャーになんてなりたくなかった。
だってせっかくやり直す前と全く違う人生を歩む事で、以前と同じ結果にならないように芸能界を避けて生活していたのだ。
それなのに、ここに来て自分からわざわざ芸能界に近づくなんて自殺行為でしかない。
なにより今の俺はこれからも普通の生活を送り続けて、長生きするのが目標なんだ。
だから絶対にマネージャーなんて断ってやる。
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