9 / 57
マネージャーになる
9、弟
引っ張られるまま部屋に押し込まれた俺は、何故かベッドに押し倒されていた。
そして今、俺は優にまた唇を奪われている。
「んんっ、ん!!」
なんでこうなったのかは、全くわからない。
だけど部屋に入ってすぐ扉に鍵をかけた優にどうしてと詰め寄ったら、気がついたときにはこうなっていたのだ。
「直はキスすると可愛い顔をするんだな」
「な、ななな何するんだ!?」
「何って兄弟としての親交を深めているだけだ」
「いや、兄弟でこんな事するわけ無いだろ!」
「でも俺達はずっと会っていなかったから、その時間を埋める為にはこれぐらいしないとダメだ」
そう言ってまた近づいてくる顔を俺は両手で止めた。
「直、手が邪魔」
「き、キスは好きな人としないとダメだって! それに優は久しぶりに俺と会って、気持ちが昂ってるだけなんだろ? ほら、一旦落ち着く為に起き上がれよ」
「いや、違うんだが……まあ、今はまだいいか」
何の事かよくわからないけど、優は俺に押され何とか起き上がってくれたのだ。
そんな優に、俺は聞きたいことが沢山あった。
「なあ、聞いてもいいか?」
「……答えられる事ならなんでも」
「優は兄貴である俺が嫌いじゃないのか?」
「…………そうだな、兄貴である直は嫌いだ」
嫌いだと言われるのはわかっていた筈だ。
だから俺がショックを受ける必要なんてない。
それなのに優の態度から、実はそんなに嫌われていないのではないかと思ってしまった自分を殴りたい。
「ならなんで……」
「だからこそ、側にいてもらわないと困る」
「それってどういう事だよ?」
「直は黙って俺の側にいればいい」
「だから意味が……」
「もう黙れ」
「んん、むっ!!」
俺は抗議の言葉ごと、優に唇を塞がれていた。
だけど何で俺の事が嫌いな癖にキスするのかもわからないし、側にいて欲しいと言われる意味もわからない。
だけどキスをする優の顔は、何故か必死な気がしてしまったのだ。
「直、勝手にどこかに行くな」
「……別にどこにも行かないし、なんなんだよ」
「それから俺以外のメンバーに絶対気を許すなよ」
「は……?」
「アイツらは皆猫被りだ。気を許せば直はすぐに食われる可能性があるからな……」
「食われるってどういう意味だ?」
あいつらが猫被りなのは何となくわかるけど、俺には優が言ってる言葉が何一つわからない。
「わからないなら知らなくていい。直は俺の言う事だけ聞いてればいいんだ」
「何だよそれ……。本当、優はここ数年でどうしちゃったんだよ? 俺の事も『直』って名前で呼んでくるし……」
「別に俺は何も変わってない。それに直を名前で呼ぶのは、ただの兄弟みたいに接して欲しくないからだ」
それってつまり俺を家族だと思ってないって事?
もしかして優は俺が嫌い過ぎて、マネージャーとして扱き使ってやろうと思っているのだろうか?
それならキスしてきた意味がわからないけど、きっと聞いてもはぐらかされそうなんだよな……。
そう思って俺はため息をついてしまう。
「はぁ、俺には優の考えてる事が全くわからないよ。だけど、とりあえずこの部屋が大丈夫だって事はわかったから、もう優は部屋から出て行ってくれ……」
「それは嫌だ。本当は同じ部屋にしてもらおうと思ったのに、許可が出なかったから仕方がなく部屋が別れているだけだ。だからこの家にいるときはなるべく一緒にいろ……」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくる優に驚きながら、何故か俺は昔の事を思い出していた。
小さい頃の優は眠れなくなると俺のベッドに入り込んで、こんなふうによく抱きついてきたのだ。
もしかして今の優も寂しがりやのまま変わらないのかもしれない。そう思ったら、なんだか優が可愛いく思えてしまったのだ。
「優もまだこういう可愛いところは残ってたんだな」
「何言ってんだ、可愛いのは直だろ?」
「いや俺は可愛くない、昔からずっとイケメンのままだから! 美少年さを残したまま美しく育った俺をよく見ろ!」
自信満々に言い切った俺はすぐ我に帰ると、やってしまったと少し恥ずかしくなっていた。
確かに昔から美意識の高かった俺は、いまも顔面偏差値は低くないと思っている。
だけど本当のイケメンである優に堂々と言うなんて、俺は馬鹿だろ……。
しかも優はわざわざ俺から離れると、じっと顔を見つめながら言った。
「いや、直はどうみても可愛い」
「どうしてだよ!? それに、そんなにじっと見てくるな……」
「……直、なんか顔が赤くなってる」
「いや、それは……」
目の前にある優の顔が凄くカッコいいからなんて言えないよ。
やり直す前の世界でも思ってたけど、俺は優の顔が滅茶苦茶好きなんだ。
そんな好きな顔がこんな近くにあったら、顔だって赤くなるに決まってる。
それなのに優は俺の顔が赤い理由に気がついているのか、ニヤリと笑いながら言ったのだ。
「なぁ、どうしてなのか教えてくれないか……?」
これ以上、優に見つめられるのが耐えきれなくなった俺は、顔を真っ赤にさせながら言った。
「───っ、俺の弟が、世界一カッコいいからだよ!!」
その瞬間、俺は優にまた押し倒されていた。
「いったぁ……いきなり、何するんだよ!?」
「仕方がないだろ? まさか直がそんな可愛い事言うなんて思わなかったんだ。でもさっきも言ったけど、俺は直にただの弟とは思われたくない……だからそう思えないようにしてもいいよな?」
「は……?」
「俺のことを一人の男として見ろよ」
「優、何言って……んっ!!」
もう、これで何度優に唇を塞がれたのだろう?
そう思いながら混乱していると、何故か優は俺が着ているシャツのボタンを外し始めたのだ。
このままだと脱がされると思った俺は、慌てて優に抵抗した。
「んんっ!」
「直、暴れるな」
「ななな、何しようとしてるんだ!!」
「何って直を裸にしようかと思っただけだ」
「なんで裸にする必要があるんだよ! 流石に意味がわからないぞ!?」
「直、うるさい」
「またっ……んん!」
再び唇を塞がれた俺は、もう一度抵抗しようとしたのに優に舌を絡められてしまい、それが気持ちよくて力が入らなくなっていた。
このままだと、よくわかんないまま優に裸にさせられる!? 誰か助けてーー!!
そう願った瞬間だった、鍵がかかっているはずの扉がガチャリと開いたのだ。
「あれ~、鍵がかかってるから変だと思ってマスターキーを借りてきたけど……優君は直ちゃんに何をしてるのかな?」
結構慌てて来たのか、冷静にみえてだいぶ息切れをしてる光がそこにはいた。
そして優は光に対して特に悪びれる事もなく言ったのだ。
「何って家族との触れ合いだから、邪魔をするな」
「ふ~ん、家族の触れ合いねぇ……?」
俺ははだけている服を見られないように、ササっと戻したつもりだった。
でもそれは光にバレないわけがなかった。
「ただの触れ合いなのに、嫌がる相手の服を無理矢理脱がそうとしたんだ~?」
「何が言いたい」
「優君に直ちゃんの事は任せられないって事だよ。ほら、まだ直ちゃんは他の部屋については説明受けてないでしょ? 僕が案内してあげるから行こ!」
「え、ああ……」
走り寄ってきた光に腕を掴まれた俺は、そのまま部屋の外まで連れ出されていた。
「おい、待て!!」
「待たないよ~。優君は焦り過ぎだから、少し頭冷やした方がいいんじゃないの?」
そう言って光は、優を残したまま部屋の扉をバタンと閉めたのだ。
あなたにおすすめの小説
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)