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マネージャーになる
11、契約書
ようやく自分の部屋に戻ってきた俺は、部屋に優がいない事に少しホッとしてしていた。
そしてベッドに座りながら今日は本当に色々あったなと、ため息をついたのだった。
「それにしても、俺がアイツらのマネージャーとか信じられないよな……」
今日久しぶりに見た4人は、戸惑うほど俺に好意的だった。
それなのに俺は、またあの時と同じような瞳を向けられるんじゃないかと不安になってしまい、嫌われないようにと気を遣ってしまったのだ。
でも俺はもう同じ失敗はしたくないし、誰にも迷惑だってかけたくない……。もしかしたらこの世界は俺がメンバーに償う為に、送り込まれた世界なのではないだろうか?
そう思いながら、俺は首を振る。
「……そんなわけない。それになんで今更、時をやり直した理由なんて考えてるんだよ俺は……」
これまでずっとその事を気にせずに、芸能界からも逃げてきた。それなのにこんな形で戻ってきたせいで、今まで考えないようにしていた事まで気になってしまったのだろう。
俺はこのままではダメだと携帯を取り出す。
とりあえず今の現状を母さんに伝えよう。
そう思いながら携帯を見た俺は、驚いて携帯を落としかけたのだ。
「嘘だろ、仁から着信履歴が50件もあるんだけど、アイツ電話かけ過ぎだろ!?」
きっと仁の事だから、俺が優に連れてかれたときに何も出来なかった事を気にしてるのだろう。
だから俺は早く仁に連絡してやろうと思ったのに、扉がノックされた為にそれは出来なかった。
俺はこんな時間に誰だと思いながら、とりあえず携帯を置いて扉を開けたのだ。
「よう、少しいいか?」
そこには数枚の紙を手に持っている元の姿があった。
「こんな時間に何の用だ?」
「いや、まだ契約書にサインをもらってなかったと思ってな。出来るだけ早く書類が欲しいから部屋で待たせて貰うけど、いいか?」
「契約書か……わかった。とりあえず小さい机を出すから床に座って待っててくれ」
俺は机を出して正座をすると、元はその上に書類を置いた。
そして元は何故か俺に覆い被さるように書類の説明を始めたのだ。
「じゃあ、まずはここと、こことにサインしてくれるか?」
「いや、待ってくれ! 距離感おかしくないか?」
「まあ、気にするな。こっちからの方が説明しやすいんだよ」
「は、はあ……」
そうだろうかと首を傾げた俺は、とりあえず契約書にサインをしていく。
「次はこっちな……」
「……っ」
元はサインが必要な所を俺の手を掴んで差し示す。しかも毎回耳元で呟くせいで、俺は全く集中できなくなっていた。
とにかく早く離れて欲しかった俺は、その契約書の内容を全く読まずにサインしてしまったのだった。
「よし……出来たけど、これで終わりだよな?」
「ああ、間違いなく全てにサインしてくれたようだな。……ははっ、あははははははは!!」
突然笑い始めた元に、俺は驚いていた。
「お、おい……なんで急に笑い出したんだよ?」
「だってなぁ、この作戦がこんなにも上手くいくとは思っていなかったからだよ!」
笑うのをやめた元は、契約書の中から一枚の紙を取り出して俺に見せたのだ。
「直、この契約書をちゃんと読まなかったのか?」
「……え?」
どういう事だろうかと俺はその書類を見る。
そこには【風間直の奴隷契約書】と書かれていた。
その事に驚いた俺はその内容を確認する。
『風間直はこのルームシェアにいる間、火野元の奴隷として過ごす事を誓う』
しかもその文章の下にはこれを守らなかった場合、裏面の事をリークすると書かれていた。
俺はすぐに紙を裏返して、そこに貼ってある写真に驚いてしまったのだ。
「な、なんで!?」
「これ、よく撮れてると思わないか?」
そこには俺と優が『俺の部屋でキスしている写真』、そして俺と光が『光の部屋でキスしている写真』が貼られていた。
「いつ、こんな写真を撮ったんだよ!?」
「いつと言われてもな……これはアレで撮ったやつだぜ?」
元が指差す方を見ると、何か黒く小さな丸い物が天井と壁の隙間に存在していた。
「一応防犯として、各部屋には監視カメラがついてるんだが、その映像はリーダーとして俺が管理してるわけだ」
「防犯カメラで何してるんだよ! それにこんな事して何の意味があるんだ!?」
「何の意味か……。そうだな、人の弱みをつけ込むとかかな?」
「はぁ!?」
「実は俺って、イキってる奴の顔が歪む姿を見るのが大好きなんだよなぁ……!」
俺の見たことのない表情をした元は、目を細めながら笑っていた。
「でもさ、優は俺の本性に気づいてると思うから不意を見せてくれないんだよな。だけど大好きな兄ちゃんの方から崩せば、アイツも悔しそうな顔をしてくれると思うんだ。だからこれで、アイツのスカした顔が歪むと思うと最高だよな!!」
そう興奮気味に言う元の姿に、俺はドン引きしていた。
「もしかして、その為だけに俺を奴隷に……?」
「ああ、そうだ。でも安心しろ、奴隷といっても優の前で嫌がらせをする為にスキンシップを取るだけだからな。それでも直に拒否権はないぜ?」
「は、はあ……」
なんか嫌がらせの方法が小学生みたいだし、元って本当に脳筋なんだと俺は納得してしまったのだ。
「それと一応忠告しておくが、直は隙が多すぎる。メンバーに変な事されたら、俺が脅す種が増えるだけなんだぞ。だからもっと周りへ警戒心を持て!」
「……あのさ元、俺の事心配してるのか脅してるのかハッキリしてくれないか?」
「はぁ、俺のどこが良い奴だって?」
別に俺はそんなこと言ってないのに勝手に怒り出した元は、何故か盛大にため息をついたのだ。
「はぁ……全く仕方がないな。今から直には俺がどういう奴なのかをしっかり教えてやるよ。それに俺は子役時代にイキってた直を見て、いつか組み伏せたいと思ってたんだよな」
「あれ、もしかして元が俺と会えるのを楽しみにしてたって言ってたのは……?」
「ああ、その通りだよ!」
そう言って、元は俺を抱き上げた。
「ちょ、ちょっと何!?」
「大人しくしとけ、暴れると怪我するからな」
「いや、待ってくれよ!」
元は嫌がる俺を軽々とベットに放り投げたのだ。
「いっ、たぁ……って元!? なんで俺に覆い被さって……」
「何でって、直を組み伏せたいからだって言っただろう? このまま両腕を縛って服を脱がせて、いやがる直の写真を優に見せたらアイツはどんな顔をするかな~?」
「なっ、何言ってんだ!?」
俺はそんなの嫌だと体を動かして抵抗したいのに、ガタイのいい元に押さえつけられているせいで全く動けない。
「こら、暴れんなって~。大人しくしてればあんまり変な事はしないって言ってるだろ?」
「何言ってんだ、お前の言ってる事は充分変だからな!」
本気で嫌がる俺の姿に、元の息は少しずつ荒くなっていた。
そしては元はニタリと笑いながら言ったのだ。
「暴れんなって言ったのに、このままだと俺の抑えが効かなくなるだろ……?」
「……は、はじめ?」
「直のその顔、凄く興奮する」
唇の端をペロっと舐めた元に、背筋が寒くなった俺は固まっていた。
「もう、そのまま襲ってもいいよなぁ?」
「……え? ま、まって! んんっ!!」
気がつけば俺は、元に唇を奪われていた。
その噛み付くようなキスに、俺は上手く呼吸も出来なくてパニックになってしまったのだ。
だけどこんな俺にも、運良く逃げ出すチャンスが訪れたのだ。
───トントン、トントン。
先程から誰かが部屋の扉を何度も何度もノックしていた。
しかもその音は、中々諦める事はなかった。
そしてその人物はついに廊下から声をかけてきたのだ。
「あ、あの……俺、夜だけど、返事がないから心配で……直は今、大丈夫かな?」
夜のその声に動揺した元は、一瞬だけ俺を押さえる力が緩くなった。
今だと思った俺は、慌ててベッドから抜け出すと勢いよく扉を開けたのだ。
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