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マネージャーになる
12、アルバム
扉の前には、勢いよく扉が開いたせいなのか驚いた顔をしている夜が立っていた。
とにかく焦っている俺はこれ以上元と2人きりになりたくなくて、夜を部屋に入れようとした。
「よ、夜! さっきまで元と話してた所なんだけど丁度終わったんだ。だから俺に用があるなら部屋に入っていいからな」
「えっ、元がどうして直の部屋にいるの……?」
「いや、それは……」
「なんだ、俺がいたら変なのか?」
いつのまにか起き上がっていた元は、俺の後ろに立って夜を見ていた。
その姿は既にいつのもの元に戻っていたのに、なんか俺との距離が凄く近い気がするのはなんでだろう?
「いや、変とかじゃないんたけど……元が人の部屋にいる事がなんだか意外だったから……」
「……そうか? でも確かに直の部屋に来たのも、契約書にサイン貰いにきただけだしな」
「そ、そうなんだ……」
「それで、夜は何しに来たんだ?」
「えっと、その……さっき引っ越し業者の人がトラック内に忘れ物があるからって、コレを持ってきてくれたんだ」
そう言って夜が取り出したのはアルバムだった。
「あ、それ俺のアルバム……」
しかもそれは俺が時を遡る直前、ベランダから落ちる前に見ていたアルバムだった。
「なんでこれだけトラックに残ってたんだ……?」
「えっと、多分……部屋の形を保ったまま家具とかを運んだから、もしかしたら本棚の隙間から溢れ落ちたのかもしれない……」
「へー、そういう引越しの方法もあるんだな」
俺にはそれが想像ができなくて、首を傾げてしまう。
「でも、こんな遅い時間に来たのは直の迷惑だったかな……?」
「そんな事ないけど、アルバムは明日渡してくれてもよかったんだぞ」
「で、でもコレは直にとって大事な物だと思ったから……なるべく早く渡してあげたかったんだ」
もしかして、あんなにも諦めずに扉をノックしてた理由はそういう事……?
でも夜が来てくれなかったら元に襲われていたんだよな。
そう思った俺は、とりあえず夜に感謝することにした。
「夜、わざわざ部屋まで持って来てくれてありがとな」
「いや、こんなの別にお礼を言われる事じゃないよ……。それに引越し屋さんも気をつけて欲しいよね、これは直の大切な思い出なのに……」
そう言いながら少し顔を逸らした夜は、少し怒っているようだった。
俺の為に怒ってくれるなんてやっぱり夜は優しい。そんなところは全く変わってなくて、俺は少し嬉しかった。
しかしそんな俺達の雰囲気が元は気に入らなかったのか、何故か夜に冷たい声で言ったのだ。
「夜、アルバムを届けたならもう用はないだろ? それに明日は早くから仕事だった筈だ。夜は他の奴らよりも朝が苦手なんだから早く寝ておけよ」
「う、うん。わかってるんだけど、アルバムをどうしても今日中に渡しておきたくて……」
「それなら、もう渡し終えたんだから早く部屋に戻るぞ」
「わ、わかった。それじゃあ直……おやすみ」
「俺も、もう行くからな。直、明日からよろしく頼む」
元は夜を押しながら一緒に部屋から出ていった。
扉が閉まる前に、元は俺に向けてウィンクをしたのが見えた。
あれは絶対に契約の事忘れるなよって意味だろなと、ため息をついたのだ。
そして誰もいなくなった部屋を見てベッドに腰かけた俺は、なんとなくアルバムをめくっていた。
やっぱり芸能界を引退するまでは、全く一緒の写真が並んでいるよな……。
そう思っていたのに、俺は何故かあの写真だけない事に気がついたのだ。
「優に誕生日を祝ってもらった時の写真がないような……?」
いやそんなバカなと俺はアルバムをひっくり返し、何処に挟まれていないか確認する。
何度かパタパタさせていると、隙間から写真が一枚ヒラリと落ちた。
それを拾ってよく見ると、それは間違いなく探していた写真で……俺はとても安堵したのだ。
「無くなってる訳じゃなくて本当によかった……」
でも何故かその写真が異様に黒いような気がした俺は、もしかして裏に何か書いてあるのだろうかと写真を裏返し、驚いてしまったのだ。
「っ!?」
そこには、まるで血が固まったような色をした字が書かれていた。
しかも走り書きのせいで本物の血文字に見えてしまい、俺は怖くなってしまったのだ。
「何だよコレ、こんなの前は書かれてなかったは筈なのに……」
しかも文字が所々霞んでいるせいで、凄く読みづらい。
だけどその文章に気になる単語が見えた俺は、読める所だけ頑張って読んでみる事にしたのだ。
「もし、時をやり直し……この文章を読んだなら覚えていてくれ、……スキャンダル……犯人は……C*F……、……の…………だ。くそ、ここだけ全然読めない。えっと……この……人物には絶対に近づくな、気をつけろ……」
何とか読み取れた部分はコレだけだった。
……でも、ちょと待って欲しい。この文章ってもしかして、俺が時をやり直す前の世界にいた誰かが書いた物じゃないのか……?
しかもこれは、俺をスキャンダル地獄に落とした犯人の名前が書いてあるのだと思う。
それなのに真ん中の大事なところだけ、滲んだり黒ずんだりしていて全く読めないとか……。
だけどそこには、何よりも信じがたい事が書いてあったのだ。
「この話を信じるなら、俺はC*Fの誰かに嵌められたって事になるんだけど……?」
そんなまさかと思いつつも、俺はあの地獄のような日々を思い出して少しずつ血の気が引いていく。
俺の前から消えろと言った優、諦めた顔をした元、俺の事を嫌っていた光……そして一人だけ優しかった夜。
確かにあの時の俺は夜以外のメンバーから嫌われていたけど、あの中に俺を嵌めて嘲笑ってる奴がいたって事なのか……?
「でも、アイツらがそんな事するとは思えないんだけど……」
もし時をやり直す前の俺がこれを見たなら、この文を信じていたかもしれない。だけど俺は、今のアイツらを知ってしまったせいなのか、逆にその文章が信じられなかったのだ。
まぁ確かに今も優には嫌われてるし、元なんて俺を脅してきてるのだから怪しいといえば怪しい。でもこの二人がわざわざ間接的に俺を落とし入れようとするとは思えないんだよな……。
「それに今の俺はC*Fのメンバーじゃないし、違う道を進んでるんだ。だから同じような事は起きない筈だし、きっと大丈夫……」
俺はそう呟きながら写真をはさみ直すと、不安な気持ち事封じ込めるようにアルバムを本棚へとしまったのだ。
そしてベッドに寝転んだ俺は、そういえば仁に返事をしようとしていた事を思い出して携帯が手元にない事に気がついた。
「えっと、携帯どこ置いたっけ……?」
すぐに床に置いた事を思い出した俺は、携帯を手に取り再び驚いてしまう。
だってそこには、先程見た件数の倍ぐらい仁からの着信があったのだ。
「仁のやつ、流石に鬼電しすぎたろ。でも明日、どうやって仁に説明したらいいんだろう……」
そう思いながら、俺は仁に『俺は大丈夫だから心配するな。それと忙しいから詳しい事はまた明日連絡する』と、メールしたのだった。
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