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弟と俺
16、助けられて
突然現れた優はその勢いのまま龍二と俺を引き剥がすと、何故か俺を抱え上げたのだ。
そんな俺達の姿をみて、ため息をついた龍二は半笑いでいった。
「なんだ弟君は昔もブラコンだと思っていたけど、今も極度のブラコンのままだったんだ~」
「俺の質問に答えろ、直に何をした!」
「嫌だな~、俺は何もしてないよ。ただ昔の仲間なんだから積もる話もあるわけで、昔話をしていただけじゃないか?」
龍二の言う通り俺は少し体を触られただけで、まだ何もされていない。
だけど今の俺は龍二から既に離れているのに、全く体の震えが収まっていなかったのだ。
「ふざけるなよ! 直はこんなにも震えてるんだぞ、それだけなわけないだろ?」
「震えてる? なんだそんな事か、それは直が俺と会えて感激してるだけだよね~?」
見当違いな事を言う龍二に俺は首を振る。
「ほら、直も違うと言ってる。それにどう考えてもそんな訳がないだろ!?」
「あれ~、おかしいなぁ」
「いいか! もしお前が直に何かをしたと言うのなら、俺は絶対にお前を許さないからな!!」
前に一歩踏み出した優は怒りのあまり龍二に手を出しそうだった。だから俺は心配のあまりギュッと優にしがみつき首を振る。
そんな俺の姿に戸惑う優を見て、龍二は何故か突然笑い出したのだ。
「はははは!! 情けないなぁ、頭に血がのぼった所を兄に必死で引き止められてさ~」
「だからなんだ!」
「……だから、そんな君なら勿論わかってるんだよね。俺を今ここで殴れば不利になるのは君の方なんだよ?」
「…………ちっ……」
舌打ちした優はきっと龍二を殴りたかったのだろう。その言葉に何も言い返せず目を逸らしてた。
そんな優の悔しそうな姿を見て、龍二は再び笑いだしたのだ。
「はははは! 全く面白い兄弟だよね。もしかして直が芸能界へ戻ってきたのは、君のおかげなのかな~?」
「……お前にわざわざ言うのは嫌だが、変に勘違いされたまま噂を広められるのは困る。だから教えてやるが、直は俺達Cronus*Fantazumaのマネージャーになっただけで、芸能界に戻ったわけじゃない」
今まで飄々としていた龍二は、その話に驚いたのか何故か突然豹変した。
「何故だ、芸能界復帰じゃないのか!? 直には才能があるのにどうして芸能界に戻って来ないんだ! 俺はいつか戻ってくると信じて、アイドルまでしてるっていうのに……!」
その言い方だと、龍二がアイドルをしているのは俺のせいだと、何故か責められてる気分だった。
だけど俺は芸能界に戻るなんて一言も言ってないのに、なんで龍二がそう思ったのか全く理解できなかったのだ。
そして取り乱している龍二の姿に、優は何故か勝ち誇った顔で言った。
「残念だったな。今の直は俺達のマネージャーだから芸能界には戻らない!」
「……本当に、直はマネージャーなのか?」
縋るようにこちらを見た龍二に、俺はコクリと頷く。
その事にショックを受けた龍二は、よろめきながら2、3歩後ろに下がると俯いてしまった。
しかしそれは本当に一瞬の事で、再び顔を上げた龍二は既にいつもの飄々とした姿に戻っていたのだ。
そんな龍二の変化に恐怖した俺は、優の服を強く握ってしまう。
「……そっか~、なら仕方がないよね。それに二人とも、さっきはいきなり怒鳴ってごめんねぇ。俺ってば直とまたお仕事が一緒にできるかもと勝手に期待して……そのせいで取り乱しちゃったよ」
「お前が謝る必要はないし、取り乱そうが関係ない。だけどこれ以上、俺達のマネージャーに手を出したら許さないからな」
「うーん、でも今の直はC*Fのマネージャーかもしれないけど、次会ったときは違うかもしれないよね?」
「……それは、どういう意味だ?」
龍二はその疑問に答える事はなく、ニコリと笑うだけだった。
「でもこれで直の居場所はわかったし、いつでも会いに行くからね」
「駄目だ、お前と直をもう二度と会わせるわけにはいかない!!」
「それは君が判断する事じゃないよ、俺と直の二人で決める事だからね~」
そう言いなら、龍二は俺と優にゆっくりと近づいてきたのだ。
優は俺を庇うように声を上げる。
「おい、これ以上直に近づくな!」
「そう言われても、二人が退いてくれないと俺も部屋から出られないからさ~」
「…………」
ニコリと微笑む龍二に、優は舌打ちをした。
「……そんなのはわかっている。俺達はすぐに退くから青山は早くここから出て行け」
優は俺を抱えたまま、2、3歩横にずれると龍二を睨みつけていた。
「全く弟君は怖いな~、そんなに俺の事を睨まなくてもいいのに」
「別に睨んではいないし、早く行けよ」
「ふふっ……ここは俺の控え室の筈なのにおかしいよね、全く。それじゃあ俺は行くけど、またゆっくり話そうね、直……」
「……っ!?」
突然龍二に投げキッスをされた俺は、鳥肌が立ち固まってしまう。
「あと俺たちのライブに今度招待してあげるから、是非見てよね。絶対俺のこと好きになるからさ!」
「うるさい、いい加減早く出ていけ!」
「弟君のせっかち~」
そして龍二は俺達に手を振りながら、この部屋から出て行ったのだ。
そして完全に龍二が見えなくなったのを確認して、優はため息をついていた。
「はぁ、ようやくいなくなったか……直、大丈夫か?」
「あ、ああ。アイツがいなくなったからもう大丈夫……」
「嘘つくな、まだこんなにも震えてる癖に」
そう言うと優は、突然俺を強く抱きしめたのだ。
「っ!?」
驚いたけど、その温もりは龍二と全然違った。
俺には優の体はとても温かく感じたのだ。
「直、今お前を抱きしめてるのはアイツじゃない。この俺なんだから、安心していいんだぞ……」
「……優?」
気がつくと優は俺の頬に手を添えていた。
それはまるであのドラマのワンシーンのようで、俺はじっと見つめてしまう。
おかしいな。龍二の時は凄く怖かったのに、優は全く怖くない……。
「直……キスしてもいいよな?」
優は優しく微笑むと俺の唇を奪ったのだ。
何故か俺の目には、ドラマ撮影の時よりも今の方が何倍もカッコよく見えていた。
そして俺は優にキスされている事に凄く安心してしまい、ゆっくりと目を瞑ったのだ。
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