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弟と俺
17、唇を塞がれて
俺達はどのくらいキスを続けているのだろう。
体感10分は経ってる気がするのに、もしかするとまだ1分も経ってないのかもしれない。
そう思いながらも俺は、この震えが止まるまではずっとキスをしていたかった。
それなのに優は突然唇を離し、俺をじっと見たのだ。
「……優?」
「まだ少し震えてる」
「そうかな? だいぶおさまったと思うけど……」
俺は自分からキスして欲しいなんて言えるわけなくて、優から離れようとした。
それなのに優は、俺を離さないようにさらにギュッと抱きしめたのだ。
「いや、まだ駄目だ。それにこんなにも震え続けてるなんてやっぱり変だから、少し確認させてくれ」
「え……うん、いいけど」
何を確認するつもりなのかと聞こうとしたのに、優はそれよりも早く俺の服を腰から掴んだのだ。
「な、何で服を掴むんだ?」
「何でって、服を脱がすからだ」
「は? ふ、服を!? ま、待って!!」
優は俺の静止を無視して、服を捲り上げようとしていた。
それに驚いた俺は優の手を掴んで抵抗した。
「何故、服の中を見せないんだ! やはり、アイツに何かされたんだろう?」
「ち、違うから手を離せよ!」
「それなら、アイツにどこまでされた! やっぱり服の中に変な物を塗られたりしたんじゃないのか?」
いや、服の中に変な物って何だよ?
そう疑問に思いながら、俺は龍二に本当に何もされてない事を優に必死で叫んでいた。
「いや、少し服の上から触られただけだから中は本当に大丈夫だ!! だからこんな事、やめてくれよ!」
俺の言葉に、優は手の動きをピタリと止めた。
そして優と目があった俺はその姿に目を見開く。
だってムっとしている優の姿は、あの日やり直す前の世界で見た優と重なって見えたのだ。
そのせいで俺は目が泳いでしまい、余計に怪しまれてしまいそうだった。
「……それは本当なんだな?」
「ああ、本当だから……」
「じゃあキスは?」
「キスなんてされてない。その前に優が助けに来てくれたから」
「それが本当なら、何でそんなにも目が泳いでるんだ?」
「いやこれは、優が怖くて……でも本当に俺は、龍二に何もされてないんだ! だからこれ以上、そんな目で俺を見ないでくれ……」
「…………っ!」
気がつけば、俺の瞳からは涙が溢れていた。
その事にすぐ気がついた優は一瞬驚きに目を見開くと、俺を優しく抱きしめたのだ。
「な、直……ごめん。俺は別に直を傷つけたかったわけじゃない。それなのに俺は……俺は何を……」
涙が次から次へと溢れるせいで、俺は優に返事をする事ができなかった。
ただでさえ今の俺は龍二の事でまだ体が震えているのに、さらに優があの時の姿と重なって見えてパニックになるなんて……。
目の前の優は違うと頭ではわかってる。
だって俺の知っている優は、こんなふうに優しく抱きしめてくれない。その事を俺が一番わかってるのだから。
そう思い俯いていると、優が俺の頬を両手で包み込みクイッと顔を持ち上げたのだ。
「直……」
そして俺は優と見つめ合っていた。
ぼんやり見えるその顔はやっぱり俺の知る誰よりもカッコいいよくて、つい見惚れてしまう。
気がつけば優の顔が徐々に近づいて来ている気がして、俺はまた目を瞑っていた。
「俺が悪かった。だから泣かないでくれ……」
優の声が聞こえてすぐに、俺の目元にぬるっと温かいものが触れた。
「……え?」
驚いて目を開くと目の前に優の舌があった。
その舌は俺の涙をペロッと舐めとっていた。
「ゆ、優……何してるんだよ!?」
「何って、俺のせいで零した涙なんだ。もったいないから、全部俺が舐めとってやる」
「な、何言ってるんだよ!」
「俺はこれでも真面目に言ってる。だから直の涙もその跡だって俺が全部もらう」
「ちょ、ちょっと!?」
そして優は、本当に俺の涙跡まで舐めとっていったのだった。
「もう残ってないからやめろ。これ以上舐められたら顔がベタベタになるだろ?」
「まだ舐めたりないんだが……」
「そんな目をしてもダメだからな。確かに俺を心配してくれたのは嬉しいけど、度が過ぎてるんだよ」
「俺は直が心配で……それに俺はワガママだから。直を誰かに取られたくない……」
一体それはどう言う意味だ?
そう思っている間に、優は再び俺の唇を塞いでいた。
そしてキスをしながら俺は思ったのだ。
優から俺への感情は、普通に兄弟が持つ感情とは違う気がする。
だけど俺の事が嫌いな筈なのにこんな態度をとる優の気持ちが、俺には全くわからなかった。
暫くキスを続けた事で、俺の震えはようやく収まっていた。優はその事に気がつくと、あっさり俺から唇を離したのだ。
そしてようやく冷静になった俺は、キスをしていた事が今更恥ずかしくなってしまい話を逸らしていた。
「あのさ、一つだけ優に確認したいことがあるんだけど……?」
「なんだ?」
「どうやって、俺の居場所を知ったんだよ?」
「それは……」
不自然に目を逸らす優に、これは何かあるのではないかと俺はさらに詰め寄った。
「もしかして、俺が龍二に連れてかれるのを見てたわけじゃないよな?」
「それは違う。休憩に入ったときに直がいなかったから、慌ててスタジオを出たんだ。それで付近にいたスタッフに直の特徴を話したら、青山と歩いてたって聞いてそれで急いで来たんだ……」
「俺の特徴って、どう言ったんだよ?」
「そ、それは……」
言葉を詰まらせた優を俺は疑っていた。
だって今の俺は、美形オーラが出ないようになるべく地味なスーツと髪型をしている為、大した特徴なんてない筈だ。
「……本当にスタッフには特徴を伝えたのか?」
そう言いながらじっと見つめていると、優は俺の瞳に耐えられなくなったのかすぐに頭を下げたのだ。
「ごめん、実は特徴を伝えたのは嘘で……本当はこの写真をみせたんだ」
そう言って携帯を出した優は俺に画面を見せる。
そこにはどう見てもスーツ姿の俺の写真があった。
「優!? こんなのいつ撮ったんだよ!」
「直に話しかけに行ったときに、実は歩きながら撮ったんだ……直のスーツ姿が凄く似合ってたから」
「ぐぐっ、そんな事言われたら怒るにも怒れないじゃないだろ……!」
可愛い弟に褒められて、嬉しくない兄がいるわけがないのだ。
「それなら直の事、また撮ってもいいか?」
「変な写真じゃなければ別にいい、それに俺だって優の写真は撮りたい」
「それなら今度、俺と一緒に写真を撮ってくれないか?」
「ああ、いいよ。久しぶりに一緒に撮るか!」
優に誘われた事が嬉しかった俺はニコニコ笑顔になってしまう。
そんな俺を見て、何故か優は携帯を構えたのだ。
「……やっぱり、今すぐ撮る」
「今!?」
そして急かされた俺は、何故か優とこの場所で自撮りをしたのだった。
その後、先に車に戻ってるように言われた俺は優が終わるのを待ちながら、先程あった色んな事に頭を悩ませたのだった。
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