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元と俺
26、世界一カッコいい男に
副社長との挨拶をなんとか終わらせた俺は今、メイクをする元を横で見ていた。
元は彫りが深いから、メイクをすると不思議な色気がでるのだ。
他のメンバーにはない、これが大人の色気ってやつなんだと……童顔な俺とは正反対で正直な話、少し羨ましかった。
そんな事を考えていると、いつのまにかメイクが終わった元が俺を覗き込んでいた。
「直、何考えてんだ?」
「っ!?」
突然声をかけられたせいで肩をビクッと跳ねさせた俺を見て、元はおかしそうに笑っていた。
「くく……ごめんごめん。そんなに驚くなんて思ってなかったからさ」
「別に何も考えてない……ってか、顔が近くないか?」
カッコいいと思っていた顔が目の前にあって、俺は何だか恥ずかしくなってしまい顔を逸らしてしまう。
「わるいな、直が俺に見惚れる所が見たくてな」
「……は?」
「くく……本気にするなよ」
「な、何だよ。俺を揶揄っただけか……」
「それもあるけどさ、直に言いたい事があったのは事実だぜ?」
元は俺の耳元に近づくと、小声で言ったのだ。
「今から撮影で離れるけど、変な奴に話しかけられても出来るだけ無視しろよ? 撮影中は俺に熱視線だけ送ってればいいんだからな」
元は俺にウィンクを飛ばすと、そのまま撮影に向かったのだ。
そして撮影中、俺はずっと元から目が離せなくなっていた。
カシャカシヤとシャッターを切る音がする度に、その存在感に引き込まれてしまう。
撮影中の元はどうみても別人みたいだったのだ。
きっと元のこの姿しか見た事がなかったから、男の俺でも元に惚れていたかもしれない。そう考えるとC*Fの中で、元だけ男性人気も高いのも頷ける。
それに元のカッコいい所が筋肉からきてるのだとしたら……俺も筋トレしをたら元みたいになれるかもしれないよな?
なんて俺が真剣に考えている間に休憩に入っていたのか、何故か元は一直線に俺の所まで戻って来たのだ。
「直、撮影中ずっと俺を見てただろ。凄い熱視線を感じだから俺も張り切って直の為にポーズを決めてたんだぜ?」
「……俺の為?」
「ああ、直だって子役時代にモデルの仕事をした事ぐらいあるだろ? だから直の前で恥ずかしいカッコは出来ないなと思ってな」
真面目な顔で言う元は、真剣にモデルに打ち込んでいるのだろう。
だけど俺は子役時代もやり直す前のアイドル時代も、実はモデルの仕事をそんなにやっていない。
それなのに俺の感想を待っている元にそんな事いえるわけがなくて、俺はとりあえず本当にただ思った事を伝えたのだ。
「元は服を魅力的に見せるのが上手いと思う。何よりも元自身に人の目を惹きつける才能があるよ!」
だから俺も元から目を逸らせなかったわけなんだけど……流石にそんな事、恥ずかしくて言えるわけがないよな。
俺がそう思っていると、元は何か納得したのか頷いていた。
「そうか、人の目を惹きつける才能か……それは優よりも上なのか?」
何故そこで優の名前が出てくるのだろうかと、俺は首を傾げながら考えていた。
元は男らしいカッコ良さで惹きつけられるし、優は謎の色気で惹きつけられるのだ。
「うーん、そうだな。二人とも違う魅力があると思うけど……今はまだ見られる事を意識している元の方が、その能力は高いと思う」
「そうか……直から見たら俺のが勝ってるんだな」
凄く嬉しそうにグッと握り拳をつくった元は、優に物凄く対抗意識を持っているようだった。
「元、それは今だけだからな……もし優が自分から意識し始めたら、どうなるかわからないよ?」
「なら俺は、優に追いつかれないように頑張るだけだぜ?」
元が熱い所があるのは知っていた。
だけどそれなら、何であんな性格が悪いのかと俺は疑問に思ってしまったのだ。
「……そんな真っ直ぐな対抗意識を持ってる癖に、何で優に嫌がらせをするんだよ?」
「嫌がらせは俺の趣味だからな。でもそれはオフの時しかしないと俺は決めているんだ。だからアイドル中の俺は、正々堂々と勝負してるつもりだぜ?」
思い返してみると、確かにそれは元の言う通りだった。
それはつまり仕事で真剣勝負をするような元が、スキャンダルで俺を陥れる可能性は低いと言う事にならないか……?
俺がそう悩んでいると、突然元の手が俺の頬に触れたので驚いてしまう。しかも元は俺を見つめると、頬を親指でスリスリしながら言ったのだ。
「お前には言っておくが……俺はズルなんてせずに、自分の実力だけで優よりも上になりたいんだ。そしていつか俺は、C*Fのセンターを優から奪ってやる。だから直も、俺をしっかり見ていてくれよ!」
元のその真っ直ぐな姿はとてもカッコよくて、つい俺はそれが口から溢れていた。
「元って、凄くカッコいいんだな……」
「何言ってんだ、そんなの今更だろ?」
俺は返事が返ってきた事にとても驚いてしまう。
そして俺は気がついたのだ。
「も、もしかして今の声に出てた!?」
「バッチリ出てたけど……もしかして俺があまりにもカッコいいからポロッと出たのか?」
「そ、そんなわけないだろ!」
俺は恥ずかしさのあまり顔を手で隠してしまう。
だって今の俺は顔が赤くなってる自信があるのだ、そんなの元に見られたら絶対に揶揄われるに決まってる。
そう思っていたのに、何故か元は俺の頭を軽く撫で始めたのだ。
「俺の事、カッコいいって言ってくれて嬉しいぜ。ありがとな、直」
「……元?」
何故か元は、突然真面目なトーンで言った。
その事が気になってしまった俺は、指の隙間から元を見てしまう。
「俺はさ、誰よりもカッコいい男を目指してるんだ。だから直に素直に『カッコいい』って言ってもらえて凄く嬉しかったんだぜ? それに……もしかしたら直にも笑われるかもしれねぇんだけど、俺は本気でモデル界の頂点を目指してるんだ。こんな事を俺が言うのは少し変か?」
元の顔は少し不安そうで、その事に驚いたのは俺だった。
だって元の夢なんて初めて聞いたし、こんな弱気な姿も初めて見たのだ。
さっきまであんなにもカッコ良かったのに、そのギャップに俺はキュンっとしてしまう。
いやまて、何でキュンってしてるんだ俺は……元の疑惑はまだ完全に晴れた訳じゃないんだぞ。
そう思うのに、今の俺は元なら絶対に出来る! そう強く思ってしまったのだ。
「お、俺は……元なら絶対に世界一カッコいい男になれるって、思うけどな」
「なぁ、直……顔を隠されたままだと、本気で言われてる気がしないんだけど?」
その事にムッとした俺はまだ少し赤い顔を晒して、この熱い気持ちを元にぶつけていた。
「お、俺は本気で元なら出来るって思ってるよ! 元は俺から見てもかっこいいし、絶対に世界で一番カッコいいモデルになれる! それに俺もマネージャーとして、元の魅力を引き出す為の手伝いをしてやるよ。だから一緒に頑張ろうな、元!」
言い切った俺は、完全に笑顔になっていた。
そんな俺を見た元は目を見開くと、何故か固まってしまったのだ。
「あれ……は、元? 俺、変な事言ったか?」
「いや、直の言葉に少し驚いただけだ。今までのマネージャーはお前にはモデルよりも筋肉があるんだから、バラエティの方が向いてるとしか言わなかったからな……」
「はぁ!? 何だよそのクソなマネージャー、元の良さを全然わかってないじゃん。筋肉があるからこそ元のスタイルの良さが際立つのに……だから絶対に元はモデルの方があってるよ!!」
「直……そうだよな、俺は何も間違ってなかったんだよな」
そう言いながら微笑んだ元は、何故か突然俺を抱きしめたのだ。
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