29 / 57
元と俺
29、それは嫉妬?
こうして撮影は無事に終わった。
しかしそれと同時に、何故か元は俺の手を引っ張り先を急いでいた。
「は、元……なんで、こんなにも急いでるんだ? 次の仕事は特にないし、迎えに行くまで時間も結構あるのに……」
「…………」
何故か何も答えてくれない元に、俺は不安になっていた。
そして駐車場に着いてすぐ車の扉を開けた元は、何故か俺を勢いよく後部座席へと押し込めたのだ。
「いったぁ……撮影が終わったと思ったら今度はなんなんだよ!?」
車の扉を閉めた元は、何も言わずに何故か俺に覆い被さってきたのだ。
「は、元……?」
見上げると、元は真剣な顔で俺を見ていた。
だけど俺はなんで元に押し倒されてるのか、意味がわからなかったのだ。
「あの、元……もしコケただけならすぐにどいてくれないか?」
「別にこの体勢は、コケたんじゃねぇよ……なんかさっきの撮影で直が他の奴に話しかけられてたの思い出したら、ムシャクシャしただけで……」
「……は?」
なんか今の話だと元が嫉妬してるように聞こえたんだけど、流石に気のせいだよな。
「いや、どう言う事だよ。俺が話しかけれたのはユノさんだけだし、その後は誰にも話しかけられてないのをお前も見てただろ?」
「わかってねぇな。俺がムシャクシャしたのは、お前がユノさんと話してたからだって言ってんだよ。確かにあの時はただお前を守らないとって必死で、そこまで気にしてなかったけどな……」
まさか元が本気で俺を守ろうと思ってくれていた事が信じられなくて、俺はまた驚いてしまう。
「元は俺の事わりとどうでもいいと思ってたんだけど……?」
「俺だってそう思ってた……でもあの時、お前が他の奴と話してるのを見たら勝手に足がそっちに向いてたんだよ」
「えーっと、つまり元は俺を本気で助けようと思って来てくれたのか……それは、ありがとう。でも、それと俺を押し倒すのになんの関係があるんだよ?」
俺を見下ろしている元は目線を左右に動かし、真剣に考えているようだった。
そして俺をもう一度見つめると、凄く言いづらそうに口を開いた。
「……俺にもわからん。だけどその時の事を思い出すとなんか凄くムシャクシャするし、そのせいで直を今すぐ組み伏せたくなったんだから仕方がねぇだろ!」
「はぁ? どういう感情だよ、それ!?」
「……だから俺にも、よくわかんねぇんだって!」
どうみても今の元は、いつものような余裕は全くなかった。
そのせいで押し倒してるコイツの方が、何故か焦ってるように見えたのだ。
「わからないとか言われても困るし、この体勢辛いから本当にどいてくれよ……」
「いや、わからないなら確かめればいいと思わねぇか?」
そう言うと元は、顔をゆっくりと近づけてきたのだ。
驚いた俺はその体をすぐに押しのけようとした。
だけど筋肉バカの元に俺が力で勝てるわけがない。
「いや、待ってくれよ!」
「そんなの待てるわけねぇだろ、だから大人しくしてくれよ」
「そ、そんな……んんっ!」
唇を奪われた俺は舌を絡め取られてしまい、すぐに抵抗する力も抜けてしまう。
でも何でこんな事になったのか理解できなくて、俺はただ混乱していた。
元がこういう事をするのは優の前だけの筈で……今はキスする理由もないのに、どうして!?
俺がパニックになっている間に、気がつけば元の唇は離れていた。
そして、改めて元の顔を見た俺は驚いてしまう。
「……な、何でキスしてきた元の方が困った顔をしてるんだよ?」
「いや、ムシャクシャした理由がようやくわかった気がするんだが……ちょっと頭の整理が追いついてなくてだな」
「はぁ、どういう事だよ!? それに俺の唇を奪ったんだから、もちろん俺にもその理由を知る権利はあるよな?」
元は少し言いづらそうに視線をそらすと、ボソっと呟いた。
「……俺は、どうやら嫉妬してたらしい」
「はぁ~!? 元が嫉妬……?」
確かに、一瞬そうかなとは思った。
……だけど別に元は俺の事を好きなわけじゃない。それなのに俺に嫉妬したってどう言う事だ?
「やっぱり直も変だと思うよな……?」
「……凄く変だ」
「はぁ、そうだよな……この俺が嫉妬とか俺自身が信じられねぇ」
そう言いながら、何故かもう一度顔を近づけてくる元に俺は焦ってしまう。
「は、元? 何でまた顔を近づけてくるんだよ。それにいい加減、俺の上からどいてくれよ!」
「まだ駄目だ。やっぱ信じられねぇから、もっかい確かめさせろ」
「いや、何でそうなる……んんっ!!」
俺は最後まで言葉を言わせてもらえず、また元に唇を塞がれていた。
そして元は唇を離す度に何かを考えて、やっぱりもう一度確認させてくれと何度も何度も執拗にキスをしてきたのだ。
「は、元……流石にいい加減にしてくれよ! もう何度キスした所で答えは変わらないだろ?」
「そんな事ねぇよ……何か、もう少しでわかる気がするんだ」
元の言葉になんだか嫌な予感がした俺は、できたらこれ以上踏み込んで欲しくないと思っていた。
だからタイミングよく、そろそろ次のお迎えに行く時間が迫っているのに気がついた俺は、ここで上手く切り上げようとしたのだ。
「は、元……そろそろ優の迎えに行かないといけないから、流石にタイムアップだ」
そう言って俺は元からどうにか離れようとしたのに、少しムッとした元は全く動いてくれなかった。
「直からアイツの名前が出るだけでイラっとするのは何でだろうな?」
「はぁ……!? 何言ってるんだよ、お前さっきから頭大丈夫か?」
「俺は正常だせ。だけど俺だけこんなモヤモヤしたままなのは許せないからな……優を嫉妬させる為にもう少しゆっくりしてから行こうぜ?」
そう言ってニヤリと笑った元に、俺はまた唇を無理矢理奪われてしまったのだ。
その後、俺は何度も早く優を迎えに行きたいと言ったのに、優の名前を出す度に元は口を塞いできた。
だから俺は最終的に元が満足するまで、ひたすら口を閉じる事にした。
そしてようやく元から離してもらえた俺は、優の所へ向かうことができたのだけど……既に時間が大幅に遅れてしまい、俺は半泣きで車を運転をする事になったのだった。
あなたにおすすめの小説
弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~
マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。
王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。
というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。
この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。
ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)