俺の事嫌ってたよね?元メンバーよ、何で唇を奪うのさ!?〜嵌められたアイドルは時をやり直しマネージャーとして溺愛される〜

ゆきぶた

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元と俺

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 少し遅れて着いた俺達をゆうは駐車場で待っていた。

「優、遅くなってごめん!」

 焦って車から降りた俺は、優の前で頭を下げていた。
 そんな俺をじっと見ていた優は少しずつ無言で近づいてくると、いきなり俺を抱きしめたのだ。
 その瞬間、俺は優に告白された時の事をまた思い出してしまい、顔が赤くなってしまう。

「ゆ、優? はじめの前だから……今は離してくれよ」
「……元の前だから何だ?」
「それは、その……恥ずかしいから!」

 元をチラチラ横目で見る俺に、優はムスッとしていた。

「もしかして来るのが遅かったのは、元に何かされたからじゃないよな?」
「え……? いや、何もなかったよ……」

 俺は車の中で元にキスをされた事を思い出して、つい目を逸らしてしまう。

「その反応、凄く怪しい……。おい、元。なおに何かしただろ?」
「え、どうだろうなぁ? でもさ、例え俺達が何をしていようが優には関係ないだろ。それよりも、優はいつまで直に抱きついてるんだよ」

 そう言って元は俺を優から引き剥がそうとした。

「毎回言ってるが直は別に優の物じゃねぇし、いい加減この歳でブラコンとか恥ずかしくないのか?」
「ブラコンじゃない! 俺は直が大切なだけだ。だから例え元でも直に変なことしたら、絶対に許さない……」

 元の手を払った優は、俺を離さないように更に強く抱きしめてきたのだ。
 そのせいで、俺は少し潰れそうになっていた。
 ……く、苦しい。それに何で俺は、こんな所で二人に取り合われてるんだよ?
 流石に耐えきれなくなった俺は、声を荒げてしまったのだ。

「お前ら、いい加減俺を離してくれよ! 駐車場でこんな言い合いしてるとか、誰かに見られたら凄く恥ずかしいだろ?」
「……確かに直の言う通りだ。どこかの筋肉バカのせいで大恥をかく所だったな」
「何言ってんだ。正しくは、ここにいるブラコンのせいで俺達に変な噂が立つところだった、だろ?」
「もう二人とも、本当にやめてくれ! とりあえずまずは車に乗ってくれよ!」

 俺の必死な叫びに、一瞬顔を見合わせた二人は何故か俺を後部座席に乗せたのだ。

「いや、何で……?」

 そう言うところだけ息ピッタリとか、本当は仲良しだろ……?
 なんて思ってる間に、二人が俺を挟むように車に乗り込んできたのだ。

「待ってくれ、これってどんな状況!? それにこのままだと、運転できないんだけど!」
「運転させない為にここに座らせたから、これでいい。それにどうせ光が終わるまでまだ少し時間があんだ。だから、少しぐらいはいいよな?」
「何が!?」
「それはこういう事だ……」

 優は人差し指を俺の唇に押し当てると、フニフニとその感触を楽しんでいた。
 いや、どういう事か全くわからないんだけど?
 そう思っていると俺達を見ていた元が、優の手を突然掴んだのだ。

「おい、元。なんで俺の邪魔をするんだ」
「それはな、俺がいい事を思いついたからだぜ。せっかく今、俺達はこうして直を挟んでるんだ。それなら俺達のどっちがいいか直に選んでもらうのはどうだ?」
「は、はぁ!?」

 二人が一体何を言ってるのかよくわからなくて、俺はポカンと口を開けていた。

「そんなの、俺一択しかないだろ」
「それだけ自信があるなら勝負してもいいよな?」
「……どうせ直は俺を選ぶ。だから別に聞いてみてもいい」
「いやいや、二人して何言ってんだ!?」
「何って、俺と優だったらどっちとキスしたいんだって聞いてるんだぜ?」
「なっ!?」

 そんな究極な二択あるかと、二人をチラリと見た俺は恥ずかしくて俯いてしまう。
 だって優の唇も、元の唇もどっちの唇の感触も覚えているのに……どっちが良いかと言われても、そんなの───。

「どっちも嫌に決まってるだろ!?」
「何故だ、直! 俺を選ばないのはおかしいだろ……?」
「えぇっ!?」

 驚いている優に、逆に俺の方が驚いてしまう。
 そんな俺たちを見ていた元は、ニヤリと笑いながらおかしな事を言い出したのだ。
 
「じゃあ今から試しに、どっちのキスが良いか選んで貰うか?」
「それはダメだ。それだと直が元とキスしないといけくなる」
「でもさ、直が良いって言ったらお前がキスを止める権利はなくなるぜ?」
「……直がお前に許可を出すわけがない」
「それはどうだろうなぁ……?」

 元は俺の耳元へと顔を近づけると「契約を忘れんなよ」と呟いた。
 そして、今度は優にまで聞こえるように俺へと確認したのだ。

「直、俺とキスしてくれるよな?」
「う、うん。確かめるだけなら……」
「な、直っ!? どうして、そいつを普通に受け入れるんだ……?」

 ショックを受けている優の声を聞きながら、俺は元の唇を受け入れていた。

「……んっ」

 これは契約だから、契約だから……これは優の為になるからと、俺は元にされるがまま舌を絡め取られていた。

「くそっ」

 そして俺達を見ていた優はついに耐えられなくなったのだろう。
 突然俺と元を引き剥がすと、優は俺の唇を奪ったのだ。

「んんっ!?」

 その力技な行動に、俺は流石に驚いてしまう。
 しかし元は必死な優の姿が面白かったのか、少し楽しそうに呟いたのだ。

「全く、そんな姿を見せられたら俺も本気だすしかねぇよな……」

 元が何を言ってるのか気になったのに、優に翻弄されている俺はその言葉を理解する事ができなかった。
 どうしよう、このままだと流され続ける……!
 そう思い始めた頃、突然車中に携帯の着信音が鳴り響いたのだ。

「ゆ、優! 俺の携帯鳴ってるから!!」

 そう言いながら無理矢理優から離れた俺は、ポケットに入っている携帯を取り出して通話ボタンを押した。

「はい、直です!」
『あ、直ちゃん! 光だけど今日の収録早く終わったから、もし優君の回収が終わってるなら迎えに来てくれると嬉しいな~!』
「わかった、すぐにそっちへ向かうから待っててくれるか?」
『うん、直ちゃんが来るの楽しみに待ってるね!』

 携帯を切ると、元がすぐに声をかけてきた。

「直、今のは光からだよな?」
「うん。どうも光は収録が早く終わったらしくて、今から迎えに行く事になった。だから早く俺を運転席に戻してくれないか?」
「あー、それなら仕方がねぇな。直、こっちから出て運転席に行くといい」
「おい、元。勝手に直に触れるなよ!」

 元は優を無視して扉を開けると、俺をエスコートする様に一度外へと連れ出した。
 そして優に聞こえないように、小声で言ったのだ。

「帰ったら話がある」
「……え?」

 振り返ったときには、元はもう後部座席へと戻っていた。
 ……元の話は凄く気になるけど、どうせ帰ればわかるんだし今は光を迎えに行くのが先だよな。
 そう思いながら首を振った俺は、すぐに運転席へ乗り込んだのだ。

 その後、俺達は急いで光を迎えに行った。
 そして無事に光は回収できたのだけど、今の車内は優と元のせいでまた空気が悪くなっていた。
 もちろん光がこの光景を見て、本音をこぼさないわけがなかった。

「なんかこの車、今日も空気悪くない……?」

 俺は運転席で、その言葉に滅茶苦茶頷いてしまったのだった。
感想 6

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