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光と俺
38、心配されて
家に帰ると、3人は何故か玄関で俺達の帰りを待っていた。
「遅くなってごめん! まさかお前らが玄関で待ってるとは思わなくて……」
「別に直は謝らなくてもいいぜ、どうせ光がごねたんだろ?」
「せいかーい! やっぱり、元君にはバレちゃったか~」
舌を軽く出す光の姿に元はため息をついていた。
でも俺はそんな2人のやりとりよりも、その横にいる優が俺達を滅茶苦茶睨んでるのが凄く気になっていた。
しかも、絶対怒ってる優の口がゆっくり開くのが見えた俺は、咄嗟に目を逸らしてしまう。
「……直、帰りが遅いとかはどうでもいい。それよりも、どうして光がベッタリ引っ付いて離れないのか聞いてもいいか?」
「…………そ、それは……」
そうだよな、優が疑問に思うのも仕方がない。
だって光は家に着いてからずっと、何故か俺を後ろから抱きしめて離れようとしないのだから……。
「え~、別にいいじゃん。なんで優君にそんな事言われないとダメなのかな~?」
「俺は光じゃなくて、直に聞いてるんだが?」
何故か睨みあいを始めてしまった2人を止めるため、俺は仕方なく口を開いた。
「2人ともとりあえず落ち着けって、ここは俺がちゃんと答えるから」
そう言って優と目を合わせたのはいいが、俺は正直なところなんで光が俺に抱きついてるのか良くわかっていない。
だけど俺をじっと見つめている優は、納得する答えが出るまで執拗に聞いてきそうなのだ。
しかし今日の事を詳しく聞かれたら、光に唇や小指にキスされた事も言わないといけなくなる。
でも俺は……その事を何故か優にだけは絶対に知られたくなかった。俺がそう思ってしまうのは、弟にカッコ悪いところは見せたくないというプライドだけなのだろうか……?
「……直、まだか?」
「あっ、えーっとだなー。俺がこうして光に抱きつかれてるのは……遊園地でなんか光と凄く仲良くなったから……だよな?」
俺、言い訳下手くそかよ!?
完全に誤魔化すのを失敗した俺は、優に何を言われるのか怖くて目を逸らしながら、ハハハと空笑いをするしかなかった。
「なんで疑問系なんだよ……」
そうつぶやいた声が聞こえた瞬間、優は俺を光から勢いよく引き剥がしたのだ。
「え? えっ!?」
何がおきたのか理解できなかった俺は、驚きのあまり振り返ってしまう。そしてよく見ると俺の右腕は優に、左腕は何故か元に掴まれていた。
俺を引き剥がしたのは優だけじゃなかった事に、俺はさらに驚いてしまう。
「もう、2人とも強引なんだから~。どうせ2人も直ちゃんに抱きつきたかったんでしょ? それなら強引にでもギュッと抱きつけばいいのに~」
少し不満そうに言う光を見ながら、なんで引き剥がされたのかよくわかってない俺は2人の名前を呼んでしまう。
「優? 元?」
「……っ! こ、これは咄嗟に……いや、なんでもねぇ」
「直、光から離れたなら……その、早く出る準備をしろ」
2人はすぐに俺から離れると、顔を背けてしまった。だけど2人の耳は薄っすらと赤くなっているように見える。
もしかして……光が俺に抱きついてるの見て嫉妬したわけじゃないよな?
この2人が俺を好いてくれてるのは知っている。
でもそれが事実だと認めたくない俺は、耳が赤くなってる2人はきっと幻覚だと思う事にしたのだ。
そしてすぐに気持ちを切り替えた俺は、光に言った。
「とにかく今は優の言う通り俺達は早く準備しないとダメだ。だから急ぐんだぞ、光!」
「はーい、じゃあ準備してくるからまた後でね~」
光にはそう言うと、去り際に俺へと投げキッスをした。
そのせいで固まりかけた俺は2、3回首を振り、今のもきっと幻覚に違いないと決めつけて、準備の為に急いで部屋に向かったのだった。
なんとか時間通りに準備を終えた俺は今、4人を車に乗せてテレビ局へと向かっていた。
そして車中では、今日も当たり前のように優と元の言い合いが始まったのだ。しかもいつもなら口出しをしない筈の光まで参加をしているせいで、俺は頭を抱えてしまう。
そして車内で夜だけ蚊帳の外になっている事が気になってしまった俺は、局に着いてからコッソリ夜に謝ったのだった。
「なんか俺のせいで空気悪くしてごめん。そういえば遊園地から帰った時だけど、夜も玄関で待っててくれたよね? いつも気を遣ってくれてるのに、何も返せてなくて本当にごめんな……」
「ううん。俺が好きでやってる事だし、直が嫌じゃないならいいんだよ。……でも直が困った時、一番最初に相談する相手が……俺、だったら嬉しいな」
優しく微笑む夜に、俺はジーンと心が温かくなってしまう。
やはり夜だけは俺の味方だ。
その事に少し安心した俺は、先に車から出て待っている3人のところに夜と一緒に向う事にした。
どうせ今日も車で待機するのだから、その前に皆を明るく見送ろうと思ったのだ。
そう思ったのに、おかしい……。
気がつけば俺は今、何故か4人と一緒にC*Fの控え室へと向っている事にとても混乱していた。
俺がここにいるのは4人が俺を連れ出したからなんだけど……きっと何か理由があるに違いない。
そう思ったのに、俺は控室に着くまでその答えを見つける事は出来なかった。
だって4人は控室に着くまで、俺が周りに見えないよう凄く密着して歩いていたのだ。そのせいで逆に目立ってしまい、俺は凄く恥ずかしかった。
そして控室に入ると4人はすぐに俺から離れてくれた。しかしその事にホッとしている暇もなく、元は俺に言ったのだ。
「いいか、直は収録が終わるまで控え室から出たらダメだぜ」
「え、なんで?」
「今日の収録はバラエティだから、共演者が何人か楽屋で待機してたりすんだよ。まあ……あれだ、楽屋から出たら直が会いたくない奴に会う可能性もあるかもしれねぇだろ?」
「いや、それだけじゃない。今回の出演者には、直に絶対に会わせたくない奴がいる。だから車よりも俺達が助けに行きやすい楽屋で待っていて貰った方がいいと、俺が提案したんだ」
「優……」
それなら俺は一旦帰っても良いのでは? と、口から出そうになったのを俺はグッと飲みこむ。
優の事だから俺が近くにいないと不安なんだと思う。だから言ったところで、帰る事は許可してはくれなさそうなんだよね……。
「心配なのはわかるけど、優くんは少し落ち着いてよ~。それとこっちの状況は携帯で連絡するから、直ちゃんは携帯を見ながら待っててくれるよね?」
「俺としては直を待たせるのは申し訳ないんだけど、ここに居てくれる事が一番安心できるから……それに俺達は直に何かあれば、すぐに駆けつける。だから直も、こまめに連絡してほしいんだけど……だめかな?」
光と夜……2人して俺をワンコのような目でじっと見ないでくれ。
そんな顔をされたら、俺に断る事なんてできるわけがないのだ。
「……はぁ、わかったよ。皆がそこまで言うなら俺はここで大人しく待つし、ちゃんと連絡もする。だから安心してほしい」
その言葉に4人はホッとしたのか、俺に優しく笑いかけてくれたのだ。
その笑顔は俺を信用してくれたからだと思っていたのに……何故か4人は打ち合わせの時間ギリギリまで俺に「絶対にここからでるな」そう何度も念を押して楽屋から出て行ったのだ。
もしかして俺ってそんなに信用ない……?
しかし、今の俺はそんな事で落ち込んでる場合じゃなかった。
俺は先程優が言っていた、俺に会わせたくない共演者とは一体誰なのかずっと気になっていたのだ。
しかもメイク台の前に共演者リストらしき物が置いてあるのに気づいていた俺は、その紙を手に取った。
これは間違いなく番組の共演者リストだ。
どうも今回はスペシャル特番だったのか、結構な人数が出ているなと思って上から眺めていた俺は、一つの名前を見つけてしまい血の気が引いていく。
そのリストには、俺の会いたくない男No. 1である青山龍二の所属するグループ『FH Beast』の名前があったのだ。
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