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二章
127、少しの違和感(ウル視点)
しおりを挟むウルとデオのエッチ後の話をウル視点で。
ー ー ー ー ー
これでも、やり過ぎないようにしようと思ったんだけどね……。
そう思いながら俺は、気を失ってしまったデオの頭を撫でていた。
すでに後処理は済ませて服も着せた。
そのせいで俺には、デオの姿がまるでまだ眠りから覚めてないように見えてしまって、どうも落ち着かなかった。
「デオはもう夢に囚われてないから大丈夫なのに、なんで俺はこんなにも不安なんだろうね……?」
きっとそう思ってしまうのは、エッチしたデオの反応にどことなく違和感を感じだから───。
……確かに今回のデオは初々しくてとても可愛かった。
でもあの反応は本当に久しぶりだったから?
それともガリアに何かされたから……?
そして俺は、夢が壊れる瞬間に聞いたガリアの言葉を思い出してしまう。
確かガリアは、『お前は今のデオの状態を知らないからそんな事が言える』なんて俺に笑いながら言っていた。
だけど今のデオの状態って、一体何の事だろうか……?
どれほど考えても、今の俺には違和感の理由がわからない。
はぁ……本当なら傷心しているデオに、あまりガリアの事を聞きたくないんだけどな。でもこのまま違和感抱えたままなのも嫌だし、ここは一度確認してみるしかないよね……?
そう思ってデオを見つめながら暫く考えていると、研究室の扉が勢いよく開いたのだ。
「おう、どうやら終わったみたいだから戻ってきたぜ!」
何故か部屋に戻って来たダンは、俺に断る事もなく向かいの椅子に座ったのだ。
そんな男に、俺がイラッとするのは仕方がない事だった。
「あのさ、ダン。俺はデオの顔を楽しんでるところだっていうのに、邪魔しないでもらえるかな?」
「まあ、そう言うなって!それにお前らのエッチだけどさ、外の奴らは結構盛り上がってて面白かったぞ」
どうやらその言い方的に、ダンも俺達を見ていたようだ。
俺も少しは確認したけど、人物を特定出来るほどの透視魔法じゃないから気がつかなかった。
「そう言うなら、何人ぐらい見てたのか教えて貰ってもいいよね?」
「ああ、いいぜ。あれは多分、15人はいたな」
「ふーん、そっかぁ。思ったよりも多かったかな」
「まぁ、あいつら皆研究職だし発散する場もあまりないからな。そうとうエロに飢えてるんじゃねぇのか?」
「成る程、そう言う事なら仕方がないのかな……?それに見るだけなら、俺はどれ程見られてもいいしね。だけどもしデオに手を出す奴が一人でもいたら、全員まとめて殺すってそいつらには伝えてといてね?」
「全く、お前は相変わらず容赦ねぇな」
正直な話、イルの事でいつも俺を殺そうとしてくるコイツだけにはそんな事言われたくなかった。
だけどこれ以上そんな話をしても時間の無駄だと、俺は話題を変える事にしたのだ。
「そんな話より、ルーディアはどうしたのかな?」
「アイツならイルが何してるのか確認する為に上へ戻ったぜ」
「彼も真面目な男だよねぇ……」
「まぁ、確かにそうだな」
俺達はルーディアの必死な姿を思い浮かべてしまい、つい一緒に頷いていた。
そしてダンは何故か真剣な顔をして、改めて俺を見たのだ。
「なあ、ウル。今はイルの兄貴も意識がねぇみたいだし、少し話さねぇか?」
「は?俺は話す事なんて何もないけど?」
例え仲良く話しているように見えたとしても、俺がダンを嫌いな事は変わらない。
「まあまあそう言うなって、聞きたい事が少しあるだけだからさ」
「はぁ、本当に少しだけだよ?それに俺は、ここで嫌がって無駄な時間をとりたくないからね?」
「ああ、わかったって。でもそれなら遠慮なく聞くけどよ、お前らこれからどうすんだ?」
「これから……?まあ、それぐらいなら話してあげてもいいけどさ」
実際、ダンには今まで色々と手伝ってもらってるから、俺達について聞く権利ぐらいはあるだろう。
そう思った俺は、ダンに俺の考えを話していた。
「ダンもわかってると思うけど、俺達は今回ギリギリどうにか出来ただけでガリアを倒せた訳じゃない」
「まぁ、そうだけどよ。それでもガリアとの魔力は上手く切る事が出来たじゃねえか?」
「確かにそれは大きいと思うよ。だけど俺はガリアとデオの誓約内容を知らない。だから魔力が切れた事で、今後の誓約がどうなるかも予測できないんだよ。まぁ、それでもガリアはデオに異常な程に執着してるからさ、そのうち仕掛けてくると俺は思ってるんだけどね」
ダンは俺の話を腕組みしながら静かに聞いていた。
そして何かを納得したのか、何度か頷くと俺を見た。
「……成る程な。つまりウルはガリアが接触してくるのをひたすら待つって事だな?」
「まあ、そうなるね。だから俺はその時が来るまでは、デオの心をケアをするつもりだよ」
次ガリアが現れるまでに、デオから全ての不安を取り除いてあげられたらいいんだけどね……。
「じゃあ、暫くは休養するって事でいいんだよな?」
「まぁ、そうともいえるんじゃないかな?」
「……そうか、それなら!休養してる間にイルの誕生会の事を話そうぜ。いや、もう今から話してもいいけどな!!」
イルの話になった途端、いきなりテンションの上がったダンは凄くうるさい。
それなのに全く起きる気配のないデオを見ながら、俺は言った。
「その話はさ、デオが起きてからでいいんじゃない?」
「あー、確かにそれもそうか。それにどうせお前らには、誕生日まで隠れてもらわないといけないからな。暫くはここにいてもらうぞ?」
「それは別に構わないよ。それにイルの誕生日まで1週間だっけ?時間はまだあるし、それまでに城の奴らにデオは俺のだってもっと見てもらおうかなぁ~?」
そう思いながら俺はデオにしたい事を考えてしまう。
そうだなぁ、デオに身体検査だよって言いながら色んな悪戯したいよね。それで恥ずかしがってる姿を色んな人に見てもらったら、きっとデオは可愛いだろな~。
どうも今の俺はデオにして欲しい事が多すぎて、このままだと妄想が止まらなくなりそうだった。
そんなニヤケている俺を見たダンは、呆れてため息をついたのだ。
「はぁ、そのうちイルにバレても俺は知らねぇからな……?」
「俺はもう、いつバレても構わないよ?」
「はぁ!?」
「そうだ!もしバレたら見せ合いエッチでもする?」
その提案にダンは少し惹かれたのか、わかりやすく返答が遅かった。
「あー、いや確かにそれは凄く楽しそうだけど……でも俺はまだイルにお前らの事を言う勇気はねぇ。だから俺は、まだイルにバレないように気をつけるぜ。アイツ怒るところも可愛いけど、拗ねると何するかわからないからな……」
「そう言いながらも顔がめっちゃ緩んでるけど?イラッとするから俺の前で惚気るのやめてよね!」
「は?お前にだけは言われたくないぜ!!」
「なんだって!!?」
俺達はつい怒りのボルテージが上がってしまい、大声を出してしまった。
そのせいでデオが身じろいだのがわかった。
「んん……」
その姿に俺はダンのせいだと睨みつける。
しかしダンはそんな俺を無視して、衣服を正し始めたのだ。
「そろそろイルの兄貴が起きるから、身だしなみぐらいはシャンとしておかないとな」
そう言うダンに呆れた俺は、とりあえず今にも目を開きそうなデオを見る事にした。
「ん、あれ……。ウル、だよな?」
目を開けたデオは、ただポーっと俺を見ていた。
俺にはその姿があまりにも可愛くて、俺は無意識に目覚めのキスをその唇へと贈ったのだった。
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