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第四章 悪魔召喚編
32 、クエストとサンドイッチ(前編)
しおりを挟む「初めまして、私の名前は錬金術師のルーディアです。最近セイと、とても仲良くさせて頂いてます。たしか貴方が錬金術の魔術道具を作ってくださった方ですよね?素晴らしい方に出会えてとても嬉しく思います」
「噂は聞いてるぜ、俺はダンだ。こいつと長年冒険者やってるからな、セイのことで知りたい事があったら何でも聞いてくれていいぜ?」
そう言って二人は握手をした。
確かに顔は和かなのに、何故か火花が見えるのは何故だろう……。
今日はダンとルーディア、二人の顔合わせのため簡単なクエストに来ている。
それもルーディアの欲しい薬草を取りに行くついでにクエストを受けただけで、場所も王都の東にある近くの森に行くだけの予定だ。
そのため待ち合わせは、東門を出てすぐの桟橋にしていた。そして今その桟橋の上では、ダンとルーディアが和かに握手を交わしている。
先程一瞬ピリリとした空気があった気がしたけど、どうやら気のせいだったようだ。
「じゃあ、これから近くの森に入るから今日の予定を確認するぞ」
何故か俺を挟んで頷く二人に、予定を伝える。
まずこの森にある湧水付近に生えるとされる、清らかな苔という素材の採取をするのが第一目的。
そして次に、ここで一番多く生息していると言われる魔物、ウッドイーグルを見かけしだい討伐する予定だ。
「だから、とりあえず湧水が出てるポイントを少しずつ移動し、ウッドイーグルや魔物が出たら倒すということでいいか?」
「大丈夫です。それに湧水の出ているポイントが書かれた地図を持っていますので、案内はお任せください」
ルーディアは地図を広げると、最初のポイントを指差した。それを確認して、俺達は森の中へと出発する。
その前にと、俺は無意識にダンの方に足が向いていた。
「ああ、イル任せとけ。とりあえず森の散策中は、お前を抱え上げて連れてってやるからな」
「すまない」
そう言って俺はダンに片手で持ち上げられる。
なんだか最近ダンに抱き上げられると、安心感がある気がする……やはり強いからかな?
そんな俺たちの姿にルーディアは、ギョッとしたようにこちらを見た。
「ま、まさかいつもそうやって運んで貰ってるのですか!?」
「あっ!いつもの癖で……」
しまったと思ったけどもう遅い。
すでに俺はダンに抱えられているのだ。
いつも周りに誰もいないクエストではこうだったので、つい癖で自然にダンの方へと行ってしまったようだ。
「まさか、癖になる程馴染んでいるということですか……!?」
「いや、いつもなわけじゃない!ソロのときは飛んでるからな……!まあ体力が無いのは事実なので、よく運んで貰ってるだけだ」
これでは、あまり誤魔化せてない気がする。
どうにか言い訳を、と思っていると俺の上からダンの声が降ってきた。
「まあそこまでにしとけ、それにお前もイルのこと少しなら知ってんだろ?こいつにとって体力も時間勝負なわけだからな、今は黙って道案内する方がいいぜ」
「……思うことはありますが、確かにその通りですね。僕が知っていることなんてほぼ無いですが、あまりセイの負担を増やしたくない気持ちは同じですから」
何故二人の気持ちが通じ合ったのか俺にはよくわからないが、その後の二人は息があったように素早く動き始めたのだった。
ルーディアは地図と地形を確認して最短ルートで湧水の場所を、ダンは敵が出ても俺を抱き上げたまま適当に敵を切っていく。
正直俺は何もする事がないのだけど……?
そう思って俺はぼんやりルーディアを見た。
ここでの採取は終わったので、次の地点に行くための地図を確認しているようだ。
「どうやら次の場所まで結構距離があります。その途中に、少し開いた場所があるようなのでそこでお昼休憩にしませんか?」
言われて、確かにそろそろお腹も空いてきた頃だと気がつく。
そういうことで、俺達はルーディアの言う少し開けた場所でお昼ご飯を食べることになった。
辿りついたその場所は、そこに湖があるわけでもないのに木々はなく、何故か草原だけが広がっていた。
森の中に突然現れた草原地帯に、俺達は驚きの声を上げていた。
「何度もこの森に来ているが、こんなにも広い草原があるなんて知らなかった」
「なんでも最近突然出来たそうですよ?」
ルーディアが地図を見ながら教えてくれた。
確かにこんな不自然な草原が森にあったら、知らないわけがないと思っていたけど、最近できたなら仕方がない。
それにこういう不思議なことは、この世界だとよくあるのだ。
「こりゃあ、自然に出来た聖域みたいな場所だな!」
「確かにそうだな。それにここなら魔物に襲われないで、ゆっくりご飯が食べられそうだ」
ダンのいう通りここには薄らと結界が貼られている。だから冒険者の休憩所として、そのうち広まるだろう。
でも今はまだ知られていないのか、人がいないのでとても有難い。
こうして俺たちはここでお昼を食べる事にしたのだった。
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