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第3章 騎士見習決闘編
見てはいけない現場を見ました!
しおりを挟む私は震えたまま、その場から動けないでいた。
怒鳴り声はまだ続いている為まだ近くにいるのだ。
「何故見つからない!!!!クレア嬢は………ここ………のでは…………なかったのか!!?」
所々聞き取れないが私の名を呼び続けているその苛立ちの声に、手に持った紙の内容を思い出す。
もしかしたらこの声の主は、この用紙を作った人間に関わりのある人物かも知れない。
そして私は思ったのだ。
こんなデマを市民に広げられ、あまつさえ私が捕まりでもしたら勝手に罪をでっち上げられる事になるだろう。
それはつまり何処かの誰かが、私の実家であるスカーレット侯爵家を落とし入れようとしているのではないかと。
……そんな事をするのは、やはり同じ貴族でしかあり得ないことなのだ。
そして私はヨシュアとの決闘の事を思い出す。
あのときも、ヨシュアは何者かに罪を擦りつけられそうになっていた。
この同じ様な犯行の仕方といい、もしかすると同一犯の可能性があるかもしれない。
今はショックを受けている場合じゃないわ!
私は頬を音が鳴らないように軽く叩くと、声がする方向へと屈みながら歩き出す。
一つ目の角を曲がり少し進んだ所、そこには沢山樽が積んであり、そこより先には進めなさそうだった。
こんな所で行き止まりなんてついてない。
しかし、どうもこの向こうから喋り声が聞こえる気がするのだ。
私は樽と樽の隙間から向こう側をのぞく。
そこには貴族の様な格好をして、帽子を深く被る中年の男性と先ほど見かけた商人の男、そしてその周りには数人の柄の悪そうな男が立っていた。
何故先程ライズといた商人がここにいるの?と、その男がいる事に首を傾げつつ、そのまま聞き耳を立てる。
「どうなっているのだ!!せっかくこの私が直々に視察に来たと言うのに。本当にクレア・スカーレットは平民が多いこんな場所に来ているのか?」
「申し訳ございません。いるようなのですが、私が以前拝借した絵姿と異なるようでして……」
「ううむ、確かに……。この間見た姿は髪が短く、貴族令嬢とは到底思えないような格好だったからな。だからといってそんな事、理由にはならぬ!」
「は、はい。申し訳ありません」
どうやら商人は貴族に雇われているだけで、犯人はあの貴族の男だろう。
それにしても貴族の男もなにも表に出て来なくても良いのに……もしくは何か目的があるのかしら。そうだとしても、そのおかげでこんな場面に出くわすことができたし、ある意味感謝したいほどよね。
しかしそう思っても、私はあの男が誰かわからない。
それにここに居続けるのは自分の身が危険なのだけど、だからといってあの男が誰かわかるまで、聞き耳をやめるわけにはいかなかった。
「それにこの間の件も、お前の言った通りに行動したのに失敗したじゃないか!!罪を全て押しつけ、私の身を潔白出来た筈なのに……このままでは足が着くまで時間の問題だ!」
「しっ……そちらの件は何処の誰が聞いてるやも知れません。余り大声では……」
「そうだな。…………強…は………ない…。かって……………やれ」
突然声を小さくした為、所々しか聞き取れなくなってしまった。
でも私の予想が当たっているのなら、きっと失敗したと言っているのは、ヨシュアが関わった魔力増強剤についての話に違いない!
その話す内容が気になり、私は少し前のめりになる。そして樽を押すように耳を当てようとした所で、目の前の樽達が前に倒れていくのが見えた。
崩れて転がる樽たちに私は叫びそうになる口を咄嗟に抑える。
なんでぇぇぇえ!?
もしかしてこの樽、中に何も入ってなかったの!?
驚きながらもなんとかバレないように様子を見る。
あちらは樽が崩れて来たために、パニックを起こしている。だから逃げるなら今しかない!
私は倒れる樽達に紛れ、来た道を戻る!
そして最後にチラッと見えたのは、貴族の男が樽に巻き込まれたせいで帽子が取れ、そのせいでスキンヘッドが光輝いているところだった。
「な、なんだ!誰かいるのか!?」
「お前ら、急いで確認してこい!!」
遠くから声が聞こえるが振り返る余裕はない。
ひたすら走る私は風魔法で速度を上げているのに、入り組んだ小道が多くて中々大通りに出る事が出来ない。
そしてまだ諦めてくれないのか、いまだに遠くから探す声がしていた。
「なんで……?」
そして気がついたときには、また目の前に壁が立ち塞がっていた。
私ってやっぱり方向音痴なの……?
来た道を戻ろうかと振り返った先には、もう既にこちらに走り来る人影が見えるところまで差し迫っていた。
私は呼吸を整えて、ここまで来たのならば仕方がないと、迎撃する準備に入った。
見た感じ相手は一人、実力は分からないけど多分倒せない相手じゃない。
問題は戦闘音で仲間に気がつかれる事。もし増援が来てしまえば、いくら私が強かったとしても数には勝てない……。
だって体力にいつかは限界が来るから。
私は不意打ちを狙い相手の死角にはいる。
多分、相手は私がここにいる事にもう気がついている。
息を吸い、カウントを始める。
…………5、4、3、2、1、今よ!
剣を抜きかけ姿を確認しようとした。
それなのに次の瞬間ふわりと抱きしめられた私は、間抜けな声をだしていた。
「へ?」
そんな私とは対照的に、更に抱きしめられている腕にギュッと力がこもる。
「クレア様。よかったご無事で……」
私を強く抱きしめたのは、ロイさんだった。
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