暴風!ゴリラ☆注意報!?〜婚約破棄された令嬢が降ちた先はチョコ系騎士の所でした〜

ゆきぶた

文字の大きさ
49 / 86
第3章 騎士見習決闘編

見てはいけない現場を見ました!

しおりを挟む

 私は震えたまま、その場から動けないでいた。
 怒鳴り声はまだ続いている為まだ近くにいるのだ。

「何故見つからない!!!!クレア嬢は………ここ………のでは…………なかったのか!!?」

 所々聞き取れないが私の名を呼び続けているその苛立ちの声に、手に持った紙の内容を思い出す。
 もしかしたらこの声の主は、この用紙を作った人間に関わりのある人物かも知れない。
 
 そして私は思ったのだ。

 こんなデマを市民に広げられ、あまつさえ私が捕まりでもしたら勝手に罪をでっち上げられる事になるだろう。
 それはつまり何処かの誰かが、私の実家であるスカーレット侯爵家を落とし入れようとしているのではないかと。

 ……そんな事をするのは、やはり同じ貴族でしかあり得ないことなのだ。

 そして私はヨシュアとの決闘の事を思い出す。
 あのときも、ヨシュアは何者かに罪を擦りつけられそうになっていた。
 この同じ様な犯行の仕方といい、もしかすると同一犯の可能性があるかもしれない。

 今はショックを受けている場合じゃないわ!

 私は頬を音が鳴らないように軽く叩くと、声がする方向へと屈みながら歩き出す。
 一つ目の角を曲がり少し進んだ所、そこには沢山樽が積んであり、そこより先には進めなさそうだった。

 こんな所で行き止まりなんてついてない。
 しかし、どうもこの向こうから喋り声が聞こえる気がするのだ。

 私は樽と樽の隙間から向こう側をのぞく。
 そこには貴族の様な格好をして、帽子を深く被る中年の男性と先ほど見かけた商人の男、そしてその周りには数人の柄の悪そうな男が立っていた。

 何故先程ライズといた商人がここにいるの?と、その男がいる事に首を傾げつつ、そのまま聞き耳を立てる。


「どうなっているのだ!!せっかくこの私が直々に視察に来たと言うのに。本当にクレア・スカーレットは平民が多いこんな場所に来ているのか?」
「申し訳ございません。いるようなのですが、私が以前拝借した絵姿と異なるようでして……」
「ううむ、確かに……。この間見た姿は髪が短く、貴族令嬢とは到底思えないような格好だったからな。だからといってそんな事、理由にはならぬ!」
「は、はい。申し訳ありません」
 

 どうやら商人は貴族に雇われているだけで、犯人はあの貴族の男だろう。

 それにしても貴族の男もなにも表に出て来なくても良いのに……もしくは何か目的があるのかしら。そうだとしても、そのおかげでこんな場面に出くわすことができたし、ある意味感謝したいほどよね。

 しかしそう思っても、私はあの男が誰かわからない。
 それにここに居続けるのは自分の身が危険なのだけど、だからといってあの男が誰かわかるまで、聞き耳をやめるわけにはいかなかった。


「それにこの間の件も、お前の言った通りに行動したのに失敗したじゃないか!!罪を全て押しつけ、私の身を潔白出来た筈なのに……このままでは足が着くまで時間の問題だ!」
「しっ……そちらの件は何処の誰が聞いてるやも知れません。余り大声では……」
「そうだな。…………強…は………ない…。かって……………やれ」


 突然声を小さくした為、所々しか聞き取れなくなってしまった。
 でも私の予想が当たっているのなら、きっと失敗したと言っているのは、ヨシュアが関わった魔力増強剤についての話に違いない!

 その話す内容が気になり、私は少し前のめりになる。そして樽を押すように耳を当てようとした所で、目の前の樽達が前に倒れていくのが見えた。
 崩れて転がる樽たちに私は叫びそうになる口を咄嗟に抑える。

 なんでぇぇぇえ!?
 もしかしてこの樽、中に何も入ってなかったの!?

 驚きながらもなんとかバレないように様子を見る。
 あちらは樽が崩れて来たために、パニックを起こしている。だから逃げるなら今しかない!

 私は倒れる樽達に紛れ、来た道を戻る!
 そして最後にチラッと見えたのは、貴族の男が樽に巻き込まれたせいで帽子が取れ、そのせいでスキンヘッドが光輝いているところだった。


「な、なんだ!誰かいるのか!?」
「お前ら、急いで確認してこい!!」


 遠くから声が聞こえるが振り返る余裕はない。
 ひたすら走る私は風魔法で速度を上げているのに、入り組んだ小道が多くて中々大通りに出る事が出来ない。
 そしてまだ諦めてくれないのか、いまだに遠くから探す声がしていた。




 「なんで……?」

 そして気がついたときには、また目の前に壁が立ち塞がっていた。

 私ってやっぱり方向音痴なの……?

 来た道を戻ろうかと振り返った先には、もう既にこちらに走り来る人影が見えるところまで差し迫っていた。
 私は呼吸を整えて、ここまで来たのならば仕方がないと、迎撃する準備に入った。

 見た感じ相手は一人、実力は分からないけど多分倒せない相手じゃない。
 問題は戦闘音で仲間に気がつかれる事。もし増援が来てしまえば、いくら私が強かったとしても数には勝てない……。
 だって体力にいつかは限界が来るから。



 私は不意打ちを狙い相手の死角にはいる。
 多分、相手は私がここにいる事にもう気がついている。
 息を吸い、カウントを始める。

 …………5、4、3、2、1、今よ!


 剣を抜きかけ姿を確認しようとした。
 それなのに次の瞬間ふわりと抱きしめられた私は、間抜けな声をだしていた。

「へ?」

 そんな私とは対照的に、更に抱きしめられている腕にギュッと力がこもる。

「クレア様。よかったご無事で……」


 私を強く抱きしめたのは、ロイさんだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

処理中です...