運命の赤い糸が切れるまで

まるない。

文字の大きさ
3 / 5
一章 リコリス

【3】

しおりを挟む

キーンコーンカーンコーン

「中村ちょっと指導室まで来い」


「失礼しましたー」

たかが5分の遅刻でわざわざ放課後に呼び出してまで説教する必要あるか?
そもそも校門通ってから教室に行くまでが遠すぎるんだよ。


「おかえりー咲怒られたの?」

「わりとしっかりめにね」

「夕凪何も言われなかったよー?」

「夕凪の担任優しいじゃん」

まぁ遅刻は遅刻だし仕方ない…

「図書館行く前にコンビニ寄ってかない?お菓子買ってこ!!」

ほんとこの子は…1人にするのが心配すぎる。

「図書館でお菓子は食べれないよ。今日使いたい参考書借りたらフードコードで勉強にする?」

「それ良いね!じゃあ早く図書館行こ!」

さっきまで乗り気じゃなかったのバレてるからな。笑
お菓子ばっかり食べて手が進まないなんて事が無い様に監視しておかなきゃな…

「ねぇ、なんの参考借りるんだっけ?」

こっちは図書館に着いていきなり目的を知らなかった事実を知って驚愕してるよ…
でもまぁ小声で話しかけてきたのは良かったと思う。

「小論文の参考になりそうな資料を探しにきたん……「あっ!!!!」

前言撤回全く良くない。え、外でもそこそこでかめの声よ?

「びっくりした。どうしたの?あと声でかい」

「見て!あそこの!めっちゃイケメン!」

また急に小声だな…
夕凪の視線を追ってみると、身長180はある黒髪オールバックで後ろに一本で束ねているがっちりした男の人が立っていた。
うん…確かにかっこいい。見てるのは新聞?変わってるな…

「確かにイケメンだね。男らしいって感じ」

「咲ってあんな感じの人好きでしょ?」

確かに今まで付き合った人は高身長の男らしい人が多かったけど、別に見た目で選んでたわけじゃないしな。
……いや、見た目だけで、か。

「結局大事なのは性格だからね」

それっぽいことを言って、濁してみたがなんだかすごく自分自身に違和感がある。
明らかに胸が高鳴っている。あの男の人は確かに見た目はとてもタイプだけど、そんな人は街を歩いてればいないこともない。
した事がないけど、一目惚れとも感覚的に違う。あまり使いたく無い言葉だけど、これが運命的な出会いってやつなのか?

「咲?ぼーっとしてどうしたの?」

夕凪が顔を覗き込んで心配そうに見つめてくる。
自分らしく無いな。

「いや?何でもないよ。目当てのやつ探しに行こうか」

「え~なんか変じゃない?」

夕凪がしつこくまとわりついてくるのを軽くあしらいながら参考書を借りて図書館を出た。
エントランスで少し振り返って見てみたけどさっきの男の人はもういなかった。

まぁ、こんなもんだよね…

そのまま夕凪とショッピングモールのフードコートに移動して勉強をして帰宅した。

ガチャ

「ただいま」

「おかえりーごはんできてるよ」

いつも通り母親の声がキッチンから返ってくる。
リビングのドアを開けると今日は誰もいなかった。とりあえず一息つける…

昨日事には何も触れずに母親と2人で夕飯を食べた。
今日は早く寝よう…

「先お風呂入るね」

そう母親に言ってお風呂に向かった。
髪を洗いながら鏡で全身を見ると昨日よりは薄くなってはいるがアザがまだ鮮明に残っている。
身体についたアザを見ながら今日図書館で会った人を思い出した。

特に何か話したわけでも無い。あっちはこっちの存在に気付いてもないだろう。
それでも何というか、あの人に会ったのは必然的だと思ってしまう…
運命といえば安く聞こえるけど、それに近いなんとも説明し難い感覚だった。

もし本当に運命の人ならきっとまた会えるでしょ

そして何故かそうなるって確信が持てる。何も根拠は無いけど…

お風呂を出たら父親が帰ってきた音がした。鉢合わせない様に部屋に逃げ込み、どうしても勉強する気にはなれずそのまま布団に入り目を閉じた。


その後、図書館であの人を見かけることも街で見かけることもなく1年が過ぎた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

【完結】不貞された私を責めるこの国はおかしい

春風由実
恋愛
婚約者が不貞をしたあげく、婚約破棄だと言ってきた。 そんな私がどうして議会に呼び出され糾弾される側なのでしょうか? 婚約者が不貞をしたのは私のせいで、 婚約破棄を命じられたのも私のせいですって? うふふ。面白いことを仰いますわね。 ※最終話まで毎日一話更新予定です。→3/27完結しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

処理中です...