のんびりしたくて

はりゅう

文字の大きさ
25 / 31
つづき

男は

しおりを挟む
 男は動いた。
 でも、もう動きたく無いようだった。
 
 お腹空いたから?

 と、思ったけどちがうよう。
 諦めた感じ。
 人生に、生きる事に。
 だからこんな所にいたのかな。

 でも、私はこの人がきになる。
 なので、無理矢理動いてもらった、リースで。
 嫌そうにするけどお願いして男を運んでもらう。
 だからって、足持つの?引き摺ってるよ。
 あんたも嫌がんなよ!痛いでしょ!

 荷馬車まで戻ってくると、リースは男を離した。
 男は武器も無く、身を守る防具も無く、気力すら無い、変な男だった。

「ねぇ、何であんなところにいたの?」

 リースに男から離されながら男に問いかけた。
 リースは男を警戒して近寄らせてくれない。
 なので10歩くらい離れている。
 …喋り辛い。

 男は反応しない。
 ぼうっとして空を見ている。

 ……空に何も居ないよ?


 男はしばらく動かなかった。
 リースに引き摺られたままの格好で、起き上がることもなく無防備なまま空を見ている。
 
 そのまま時間が経って私はお腹が空いた。
 そっと、リースを見上げれば厳しい顔を切り替えてくれた。

「ありがとう、リース」

「仕方ないですね、マスターは。準備するのでアレには近付かないように」

「……はーい」

 リースはなんだかんだで優しい。
 男を警戒していても、私のお腹のために準備に入ってくれた。
 
 
 私の食事が終わっても、男は動かなかった。
 



「…勇者」

 男が喋った!
 リースをじっと見る。
 ため息吐かれた。
 良いって事にする。
 …にしても、リースどんどん人間っぽいことするなぁ。

 呟くようにしゃべる男の元に近づく。

「なあに?」

「勇者、…知ってるか?」

「ゆうしゃ?…リースしってる?」

「さあ。何処ぞの愚かな王が愚かな考えを押し付けられた哀れな者など知りません」

「……。しらないって」

「クッ………。愚かな……。はっ」

 男は笑いはじめた。
 身を捩って、お腹を押さえて。
 笑ってるけど、泣いてるようにも見えた。

「あー笑った。……じゃあ、その哀れな者の話、聞くか?」

「ん?あわれなの?」

「ああ、哀れなやつさ」



 
 そいつはたいして大きく無い町に生まれた。
 父母兄妹の4人家族だった。
 貧しかったが仲が良くて、互いに協力して生きてた。
 近所とも助け合い、苦しい時も辛い時も助け合い、良いことがあったらみんなで祝うような仲のいい人達に囲まれ、決して不幸だなんて思ったことはなかった。

 そいつが15歳になると、その場所は、少しずつ、居心地が悪くなった。
 男はその町では女に人気があった。
 逆に男達から嫌われていった。
 
 町に出れば女達がそいつを取り囲み、男達から嫌味を言われる。
 そんな毎日だった。
 そいつは、まだ女に興味が無く、友人達が離れていく方が嫌だった。
 だから、女達に正直に言った。
 
 次の日から地獄になった。
 友人だと思ってたやつにいきなり殴られた。
 何処ぞの女を傷付けたからだと言った。

 理解できなかったそいつは友人だったやつに『そんな女は知らない』そう言った。
 あとでわかったことだがアイツはその『傷付けた女』が好きだったらしい。

 町中にそいつの話が広まり、そいつは町を出る事にした。
 家族はそいつの噂が本当のことじゃ無いことは理解していた。
 ただ、噂を流していたやつの中に町の長の娘がいた。
 正面から否定することができなかった。
 …追い出されてしまうからな。

 家族は何度も謝った。
 そいつはわかってた。
 家族は悪いわけじゃ無い。
 でももうここにはいられない。

 そいつは生まれ育った町を出た。
 



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...