のんびりしたくて

はりゅう

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つづき

勇者

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 そいつは町から町へ移動して行き、王の居る町についた。
 国の中心だからギルドの仕事も良くて、そいつはしばらくそこに居た。

 ある日、王によって男達が集められた。

 いろいろあって、そいつは『勇者』になった。

 ん?いろいろって?いいんだよ、そんなのは。
 とにかくいろいろあったっつーこと。

 で、王は勇者に魔王を倒せ、と言った。

 は?

 って思った。
 魔王だぞ?
 何言ってんだ?こいつってな。
 
 
「ねぇねぇ、それで?」

「………」


 あー、そいつは勇者になってあちこち行った。
 魔王の話を探し回った。
 だが、誰も知らなかった。

 たまに聞く魔王の話では『悪い子は魔王に連れて行かれる』、『魔王に食べられる』、『悪いことは全部魔王のせい』、といった想像での魔王でしか無く、魔王の姿を見た人も、魔王も被害者もいなかった。
 魔王の居場所を知るものはいなかったんだ…。

 それでも、国中を探し回った。
 それしかできなかった。

 1年、2年、3年、過ぎた。

 限界がきた。
 体力は付いたし、魔獣を倒しまくって金もある。
 だが、心が、ついてこれなくなっていた…。

 魔王はどこだ?
 誰も知らない。
 
 魔王を倒せ?
 どうやって。

 やがて、そいつは出ていった町に戻りたくなった。
 父に、母に、会いたかった…。
 それしかもう、考えれなくなった。

 仲間に話そう、一度帰ろう、と。

 そう思った次の日、荷物と仲間がなくなっていた。

 金もない。
 全て、持っていったんだ。

 
 怒りなんて湧かなかった。

 そんな事すら、湧かないほど、疲れきっていて、もう、どうでもよくなった…。

 死んでもよかった。

 その前に、家族に会おう。

 そいつは、ようやく家に向かうことを決めた。

 


「………どうなったと思う?」

「ん?」

「そいつ」

「ゆうしゃ?」

「そう。家に向かったそいつは、どうなった、か」

「ん~、そうだねー、……たどり着けなかった?」

「ははっ。そうだ、たどり着けなかったんだよ。金は無いわ、気力も無いわで途中で、行き倒れた」

「…おなかすいたの?」

「いや…。そんなこと、もう感じない。…もう、どうだってよくなって、もう、どうだっていい…」

「……ゆうしゃはしんじゃう?」

「………ああ。いや、勇者は最初から居ない。居なかったんだ、居なかったんだよ…」

「くるしいの?」

「……」

「まおう、たおしたかった?」

「……」

「……、まおう、いるよ?」

「!!」

「まおうに、あいたい?」

「……。いや…」





 マスターとアイツが話している。
 わたくしはマスターの食事の片付けをしながら油断せず、気を貼り続けた。
 
 わたくしの可愛いマスターがあんな男を気にするなんて!
 死にたがりなど放っておけば良いのにマスターときたら、何が気になったのか。
 男を見つけてからずっと、ずっとです!

 今も男の話を楽しそうに聞いていて!
 全く、なんて可愛いの!

 …しばらく馬車の中で退屈だってのでしょうが、マスターの浮気者!
 わたくしのマスターですのに!

 そんなわたくしの気持ちなどわからないマスターはわたくしをさらに落とすのです。


「リース、このおじさん、つれてく」


 ねぇマスター、何があって、そうなったんです?
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