ちょとだけ不思議で、ちょとだけ夢のある、ちょとだけ昔の冒険物語

いぬっ

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≪蒸気船編≫

2.蒸気船

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 ミーシャが倒れている少女に気が付き、駆け寄って心配そうに顔をめる……しかし、少女は目を覚まさない、ミーシャは少女の近くで心配そうにうろうろしている……

 裕翔も駆け寄り少女の怪我の状態を確認するが……

「まずいな、血が止まらない……」

 流れ出す血の量が多い為か、体温が下がり蒼白そうはくで危険な状態だ……裕翔は焦りを感じる。

「止血しないと……」

 色々と探すが何もない……裕翔は自分の服の袖を刀で切り裂き止血用の布を作る。

「ごめん!」

 裕翔は少女の服のボタンを外し、治療をしようと傷口に触れた……

 その瞬間、能力が発動する……

……



 少女は宿屋で寝かされていたが、顔を舐められている感触で、意識を取り戻す。

「ミーシャ!」

 少女は、ミーシャだと気付き、おもいっきり抱っこする。

「会いたかったよ~ミーシャ!」

 ふわふわの毛並みでいやされるが、男性の視線を感じて、警戒心をあらわにする……

 しかし、心の中では……

『この男の人、誰なの? けっこう格好いいけど……私、今、どういう状況なの? ちょとパニックになってる? ミーシャ、教えて……だけど初対面だし、スキを見せたらダメよね! まずは落ち着かないと……』

……

 ミーシャが裕翔の肩に飛び乗り、助けてくれた人とアピールして、少女を安心させようとするが、警戒心100%の冷たい視線を裕翔に送る……

「お前、『ミーシャ』って言う名前なのか……それに、このがお前の飼い主だったんだな、無事に会えて良かったな……」

『ニャー』

 裕翔はミーシャの頭をでてあげる……ミーシャも裕翔に撫でられ、気持ち良さそうに膝の上で丸くなる……

……

 ミーシャとのやり取りを見ていた少女は、少し警戒心が解けてきて、状況を理解し始める。

……

『ミーシャがこんなに、なついているんだから大丈夫そうね……そう言えば、私、妖怪にお腹を切られて……もしかして、死ぬ?』

……

 妖怪と戦って、お腹を切られながらも、異界を脱出した事を思いだした少女は、傷を確認しようと視線をお腹に向けようとするが、恐すぎて見れない。

……

『あ~やだな、ザックリと切られたよね……恐い! いっぱい出血してるかな……』

……

 そんな少女の姿を見た裕翔は……

「大丈夫だよ! 傷一つ残っていないよ!」

……

『え! そうなの? だってあんなに痛かったのよ?』

……

 少女は、自分のお腹を見る……

「本当だ~! あなたが治してくれたの?」

「そうなんだが、自分でもよく分からないんだ、どうやら、そういう能力があるらしい」

 不思議な能力が自分に有る事は、山中での武者修行中に何となく気が付いていた。最初は雪崩に巻き込まれた時の事だ、意識を取り戻した俺は、雪の中からい出た……その時は運が良かったのだと思ったが、体には傷ひとつ無かった。
 また、ある時は滝での修行中に流木の直撃を受けたが、この時も、意識を取り戻した時にはなんの問題も無かったのだ……裕翔は何かあると感じていたが、今回の事で確信した……ただ、どのような条件で発動出来るのかは分からなかった……

「ふ~ん? 貴方も忍術が使えるのかしら? 
れいを言っておくわ、ありがとう!」

「……忍術?」

 裕翔は少女の言葉に疑問をもったが、突然の悲鳴に驚く…… 

「キャ!」

 少女は自分のお腹を見知らぬ男に見られている事に気付いて、顔を赤らめながら慌てて隠す。

「私のお腹、見たでしょ! エッチ!」

……

「いや……ごめん、少し」

……

『や、やっぱり見られちゃた~! 
恥ずかしいよ~……だけど、落ち着いて! 
そ、そうだわ、話題を変えよう!』

……

「忍者って格好いいわよね……あなたは忍者?」
「……」

……

『やだ、わたし、何言ってるのよ~……
そ、そうだ、名前を聞こう……』

……

「私はマリン、貴方の名前を教えてもらっても良いかしら?」

「ごめん! まだ名乗っていなかったね、
俺は裕翔、君の捜索を依頼されている……」

……

 マリンも少し落ち着いて来たみたいなので、今回の事件に付いて話を聞いてみる……

「マリンは新橋で式典に出席してたんだよね?
そこからどうやって浅草に来たんだ?」

「私もわからないわ? 新橋で、この仔猫ミーシャを追いかけて、路地裏に入ったら、不思議な空間に迷混んでいたのよ」

「それは変化へんげの仕業だな、どうりで居場所が分からなかったはずだ! 変化はいたずら好きだから、気を付けないとだまされる。他にも悪い妖怪もいるからな注意しないと……」

「怖い妖怪にも会ったわ、そいつに私のお腹を切られたのよ! 今度会ったらやり返してあげるわ」

「まーまー、マリン落ち着いて、相手は妖怪だからな! 危険だよ」

「大丈夫よ! ちゃんと準備して行けば勝てるわよ!」

「……?」

「私は忍術が使えるのよ!」

「忍術?」

「そんな事より、お腹が減ったわ! 裕翔、何か食べたい」

「そうだな、外に食べに行く?」

「せっかく日本に来れたんだから、美味しいものが食べたいな~!」

 2人は浅草あさくさの街へと出掛ける……

……

「お寿司、うなぎ、天麩羅、すき焼き、
   オムライス! みんな食べた~い!」

……

『し、しまった! 口に出してしまったわ、
食いしん坊だと思われちゃたかな?……』

……

「そんなには、食べられないと思うよ」

……

『違うのよ、わたし、そんなに食いしん坊じゃないのよ! 誤解しないでね……』

 マリンは顔を赤らめながら、裕翔の顔を見る……

……

 日本で1番高い、浅草にある赤レンガ造りのタワーに着いた。エレベーターに乗り12階へ……裕翔はマリンの手をつないで、逸れないようにお店までエスコートしている。
 マリンは少し恥ずかしそうに、裕翔に手を引かれながらお店に入った……

『いらっしゃいませ!』

 窓から浅草の街並みが綺麗に見渡せる畳の席に案内される……

「素敵なお店ね!」

「いっぱい食べてくれ、ご馳走するからな!」 

「ありがとう」
 
「だけど、マリンが無事に見つかって良かったよ!」

「無事じゃなかったんだけどね、裕翔のお陰で助けられたわ、ありがとうね!」

「ミーシャも良くやったな、倒れてるマリンを見つけたのはミーシャだからな! えらいぞ!」

『ニャ~!』

……

「お待ちどうさま~」 

 2人の前に美味しそうなすき焼きが運ばれてきた。肉食が解禁になった明治の、日本発祥の料理……割下と言われる、酒、砂糖、ミリン、醤油を合わせて作ったスープに、薄切りにした牛肉と、春菊、ネギ、しらたき等を入れて煮込んで食べる。今、浅草で1番人気の食事だ……

「マリンは、はし使えるのか?」

「箸? えー大丈夫よ、たぶん大丈夫……」

 不安気なマリン……
 箸を睨んだまま動かない!

「本当に!? ぼーが2本よ! どうやって使うの?」

……5分経過

「難しいわ!」

 頑張って箸を使ってみる。

……10分経過

「大丈夫か、マリン、食べさせてあげようか?」

「いいわよ! 恥ずかしいから」

……20分経過

 悪戦苦闘しながら、箸を使い、ご飯をたべている。

……

「おねーちゃん、がんばれー!」
 側にいた子ども達に応援される……

……

「マリンは、子供達にも好かれるんだな」

「なによ! 裕翔も応援しなさいよ!」

「がんばれー!」

 恥ずかしがりながら、頑張るマリンだった。


……2時間後

「美味しかったわ、ご馳走さまでした!」

「それは良かった。少し浅草の街を見てから帰ろうか?」

「うん、そーしたいけど……」

 マリンは慣れない正座で足がしびれて動けなかった。

「ゔ~、足がしびれる~……」

……

「仕方ない……少し休んでから帰ろう……」

 2人は12階の窓から浅草の街を眺めている……

「今日は、このまま浅草で休んで、明日、蒸気船で出発するからね」

「は~い!」

 マリンは日本の夜景に見とれていて、あまり話を聞いていないようだ……


……次の日の朝

『コケコー』

 深川ふかがわにある蒸気船乗場へやって来た。

 マリンも1日休んで元気を取り戻したみたいだけど、まだ馬車や馬車鉄道は辛いだろうから、東京から、小山おやま行きの蒸気船を使う事にする。 

 大統領一行は馬車による移動だが、各地でイベントに参加しながらの移動になるため、今から行けば栗橋くりはし古河こがで追い付けると判断した。

……

 乗船前、マリンが突然言い出す。

「裕翔と一緒にアイスクリンが食べたいわ!
 裕翔、買ってきて!」

「もうすぐ乗船時間だよ、今?」

「そうよ! 今、食べたいの!」

「わかったよ! ここから動かないで待っててね! ミーシャ! 頼んだぞ! 」

『ニャー!』

 裕翔は急いでアイスクリンを買いに行く……アイスクリンは外国から入って来たお菓子で、練乳、卵黄、牛乳をまぜて、氷で冷やして作るお菓子で冷たくてとても美味しい……庶民が食べられる様になったのは、最近の事だ……

「わがまま言っちゃたかな? でも、ちょとくらい良いよね! ね、ミーシャ!」

『ニャー!』

「はい、お待たせ!」

 マリンにアイスクリンを渡すと同時に、ミーシャが裕翔の腕に飛び乗って来た。

「あっ!」

 もう一つのアイスクリンを落としてしまう。

『ニャー!』

 ミーシャはすかさず、落ちたアイスクリンをなめ始めた。

「ミーシャ! やったな💢」

「裕翔、私のを一緒に食べよう!」

「……」

 裕翔はその言葉に少し戸惑い赤面する……

「ありがとう、でも大丈夫だ、マリンが食べてくれ、俺はいらないから……」

「いいの? 美味しいよ!」

「そうじゃなくて……」

 裕翔は困りながら応えた。

「そろそろ船が出るわよ!」

 マリンは、裕翔と手を繋ぎ、船に向う……

「ミーシャ、早くしなさい、おいてくわよ~!」

『ニヤ~!』

『お待たせしました。乗船開始で~す。
順番に御乗船くださ~い!』

 深川から野田、関宿、栗橋、古河、小山までの蒸気船の旅が始まる。

……

 視点を変えて船から見る浅草の町もとても素敵だ。船の周りをユリカモメが飛び回っていて、マリンは船のデッキからカモメにエサをあげて楽しむ。船から見上げる浅草の町をバックに、外国の少女がカモメとたわむれる姿は、とても印象的で、裕翔はしばしその光景に心を奪われた……

……
    
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