ちょとだけ不思議で、ちょとだけ夢のある、ちょとだけ昔の冒険物語

いぬっ

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≪蒸気船編≫

3.妖精?

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 深川ふかがわを出発した蒸気船は順調に江戸川を北上している……

「ね~見て! あの木の上に白い大きな鳥が巣を作ってるわ!」

「あれは、コウノトリだな、この辺には沢山たくさんいるみたいだ」

「コウノトリ……?」

「マリンの故郷こきょうにはいないのか?」

「見た事ないわ……」

「日本だけなのかな?」

『コウノトリは日本周辺の東アジアに生息していて、外国に住む朱嘴鸛シュバシコウとは同属どうぞくになるが別種べっしゅになる。この鳥は、木々や家々の煙突などの高い場所に巣を作り、巣だらけにする特徴がある。見分けるには、コウノトリはくちばしが黒、朱嘴鸛シュバシコウのくちばしは赤で見分けられる。ちなみに、鳴き声はクラッタリングして音を出す……『カタカタカタカタカタカタ……』』

「マリン、なにか言ったか?」

「何も言ってないわよ……あ! コウノトリって……」

 何かを思い出したのか、マリンはもじもじしている……

「どうした? トイレ?」

「ちがうわよ!」 

 マリンはほほを少し赤らめながら話す。

「ね~裕翔~! 私達の赤ちゃん、はこんで来てくれるかな~……?」

「な?……どこでそんな情報を……」

「日本の昔ばなしを読んで知っているわ! 赤ちゃんを運んで来る鳥よね! だけど男の子とか女の子は選べるの? 配達時間とか料金はどうなってるの? どうやってお願いすれば良いの?」

「え~と、ど~うだったかな~?」

 彼女とはまだ会って間もないし、大統領のお孫さんだから、失礼があってはいけないと思い、慎重に対応しようと思ってはいるが、突然赤ちゃんの話しをするか? ま!可愛らしくさらっと言って来たから、今回ははぐらかそう……大丈夫だよね?……

「なによ! 裕翔は知らないの……」

 き通ったきよい心で、マリンはコウノトリにお祈りを始めた……

「マリンさん、何のお願い?」

「ないしょ!」

 マリンは振り向きながら、可愛らしく裕翔にウインクする……

「そ、そうか、ないしょか……」  

 この娘、対応が難しい……

……

「蒸気船に乗ってばかりじゃつまらないわ! 少し休憩きゅうけいしない?」

「だけど、急いで家族に会わないと……」

「ね~! だめ? 少しだけよ……」  

 仕方がないか……長時間の船旅は疲れるし、それにこんなに可愛いらしくお願いされると断われないよな!

「……わかった、少し休もう」

……

 2人は野田のだの船着き場に降りた。

『野田は、江戸時代から醤油醸造しょうゆじょうぞうの地、また水運の要所として発展をとげる。近くには、徳川幕府直轄下総東葛飾郡放牧場管轄牧士花野井家とくがわばくふちょかつしもおさひがしかつしかぐんほうぼくじょうかんかつまきしはなのいけがあり、日光東照宮の眠り猫で有名な左甚五郎ひだりじんごろう作の『薬医門やくいもん』がある』

「ちょと地味な門ね!」

「マリン、どうかした?」

「何でもないわ、ね~! いい香りがしない?」

「これは……醤油しょうゆだな」

「ショウユ?」

『お嬢さん、この辺は醤油が有名なんですよ、国内外の博覧会はくらんかいしょうを頂いたほどなんですよ!』

 船着き場の係のお姉さんが教えてくれた。

しょうを頂くなんてすごいじゃない! ショウユ飲んでみた~い!」

「ち、ちがう、飲み物じゃないよ……醤油は……調味料だから……アメリカでは、スパイス? いいやソースかな?」

「ソース!?」

 マリンは真っ赤になって恥ずかしがっている……

「だって知らなかったんだもの……」

「日本の料理に掛けて食べると美味しいぞ!」

「裕翔! 何かご馳走ちそうしてよ!」

「そうだな……」

……

 2人は美味しい食事を求めて、船着き場から野田の町へ向かって歩いていると……

「ねー! まだ歩くの~」

「道、間違えたかな?」

「このあたりの畑は木が植えてあるの?」

「これはくわの木だよ、かいこに食べさせるものだよ」

「そうなの? この木を食べるの?」

「たぶん葉っぱを食べるんだろうな……」

 マリンは桑の葉っぱを近くでながめる……
興味深きょうみぶかく葉っぱを見ていると、後ろに隠れていた虫と目が合う……

「きゃ~!」

 マリンは悲鳴をあげて、裕翔に飛びついた……

「……?」

「むしが……いる……」

……

「あんたら、なんと罰当ばちあたりな、おかいこ様にたいして何てことを……」

 近くで農作業をしていたおじさんに突然怒とつぜんおこられた。

「だって虫がいる……」

 マリンは泣き出しそうだ……

「いいかい、このお蚕様はな糸を生み出してくれる神様のような虫ですぞ」

「あ! いまって言った!」

「こら、マリン、しっ! 面倒くさくなるから」

 裕翔はマリンの『虫』突っ込みに慌てて言葉をさえぎるるため、マリンの口元くちもとへ手を当てる……

「う、う~……ん~~!」

 マリンはまだつ込み足りないのか? まだ『う~う~』言っている。

「落ち着け、マリン!……」

「……外国の娘さん、ちょと家まで来なさい、私達の農家の仕事をお見せしましょう」

……

 おじさんの家まで強制的きょうせいてきに案内される……このあたりでは少し大きな農家で、母屋おもやの2階で、養蚕ようさんいとなんでいる……

「お帰りなさいませ!」

「お客様を連れて来た」

「いらっしゃいませ、私はむすめの『いと』です」 

 仕事をしていた手を休めて、挨拶をしてくれた娘さん、いとさんて言うらしい、かなりの器量良きりょうよしだ!

「これは、ご丁寧ていねいに私はマリンで、裕翔に猫のミーシャです」

 マリンさん、挨拶が軽くないですか?……

「お客様に、お蚕様を見せてやってくれ」

「はい、こちらへ……」

 いとさんに案内され母屋おもやの2階へ……

……

「うわ~、わたしだめ~~~!」

 そこにはお蚕様が沢山いて、桑の葉をむしゃむしゃ食べていた。マリンは震えながら裕翔の後ろにしがみついている……

「こちらがお蚕様です……少しご説明しますね」

「お願いします……」

たまご(蚕種さんしゅ)からかえると桑の葉を沢山たくさん食べて脱皮だっぴを繰り返して大きくなります。お蚕様が桑の葉を沢山食べる活発な時期を『れい』、脱皮をする前に活動を停止する時期を『みん』と言い、お蚕様は4みん、5れいのときに繭玉まゆだまを作り始めますので、わらなどで作ったまぶしに移してさなぎになるのを待ちます。すると7日ほどで繭玉まゆだまを作り終わるので、その繭玉を大切に回収します。
 寒い時期には夜、お蚕様の体調が悪くならないように家族で交代しながら見張り番を行い、部屋を温かく保ちます。これが私達農家の仕事です」

「いとさん……大変なことは分かりましたが……やっぱりだめ~~!」

 マリンはあわててその場から逃げ出す……

「あ! その部屋は駄目だめです!」

 マリンは突き当たりにある小部屋の扉を開けてしまう……そこには小さな女の子が寝かされていた……

「ごめんなさい……」

 扉をそっと閉めてから家の外まで逃げ出した……

「うえ~ん……もう駄目~」

 腰を抜かして座り込んでしまった……

「大丈夫か?」

「だめ~、裕翔、おんぶ……腰が抜けた……」

「……大丈夫ですか?」

 あとから追い掛けて来たいと●●さんがマリンを心配して声をかける。

「……だめ……いとさん、ちょとだけ『すりすり』させてくれる?」

……「だめです!」

「残念だったなマリン」

 マリンには変なくせがあるな、可愛らしい子に会うと、頬擦ほおずりしたくなるらしい……変わってるよね?

「もうだめ~~~!」

 マリンは、何とかしてよ~! と言わんばかりに裕翔を見る……

 マリンは裕翔に運ばれ、離れの作業小屋へ……

 得意の忍術とかは使わないのかな? 回復系の術があれば良いんだがな? どうするマリン?

……

 そこでは、数人の女性が繭玉まゆだまから糸をつむいでいた。

「これは?」

繭玉まゆだまから糸を作っています」

 マリンも少し落ち着いたのか、見に来た……

綺麗きれいな糸……」

絹糸きぬいとですよ」

「これがシルク! すご~い」

「でも、お蚕様はまだ無理だわ……ごめんなさい」

「大丈夫ですよ、最初はね、皆さん同じですよ」

……

 またお蚕様の映像を思い出したマリンが横になって休んでいると……

「どうかな、お蚕様の事がわかったかな、だがすまなかったな、外国の方には少し刺激しげきが強かったかな、良かったら今日は家に泊まって休んで行ってくれ」

 以外にも優しい言葉を掛けてもらったマリン達は……

「……有難うございます」

「お言葉に甘えさせてもらいます」

「いと、お客様の事、頼んだぞ」

「はい、分かりました」

 色々あって、日も暮れてしまった為、2人は泊まらさせてもらうことにした……

 それから、申し訳ないことに夕食も頂いた……
 
 マリンは忍術の事を思い出したのか、御札おふだに緑色に輝く魔法陣の力を流し込んで、自分に使っていた……


……丑三うしみどき

『マリン、マリン』

「ゔ、ゔ……」

『マリン、マリン、お願いがあります!』

「ゔ、ゔ……だれ?」

『私はかいこの妖精です』

「妖精? 虫?」

『だれが『虫』だ💢……
あ! いかんいかん……え、え~と、気を取り直して……お願いがあります。女の子を助けて欲しいのです……』

「どうして? 私に?」

『お昼ごろ、桑畑で桑の葉を食べている時、あなた達が横を通り掛かったのです。その時、あなたの能力に気が付きました』

「あ! あの時の『む……』『お蚕様』」

『あなた、いま虫って言いそうに成りませんでした……
今は少し気を使って、人間の姿になっているのですから失礼な事は言わないで下さい』

 お蚕様の妖精は、かなり頑張って人間の幼女の姿になっていて、ちょと可愛らしい。

「……それで私は誰を助ければ良いの?」

『この家の娘です……』

「もしかして、あの小部屋にいる女の子の事かな?」

『そうです! その子です』

「でも、何があったの?」

『もともと体が弱い子でしたが、寒い夜の日、私達が元気でいられるように、寝ずに暖房の管理をして、部屋を暖めていてくれていたのですが、突然倒れてしまったのです。燃料が練炭れんたんを使うから一酸化炭素中毒いっさんかたんそちゅうどくだと思うのですが……私の能力では治せないのです……だからお願いします……』

「それは……私でも無理……」

『連れの男はどうだ? な、頼む!』

「裕翔なら……」

『頼む~』

「分かったわ! 裕翔に聞いてみるわ!」

『そうか、感謝する……頼んだぞ……』

「ちょとまって、ゔ、ゔ……」

……

「大丈夫か? うなされていたぞ……」

「……なんか変な夢見たような……」

「そうか夢か……」

「あ! 夢じゃないかも、妖精の幼女が現れてね、女の子を助けて欲しいって!」

「妖精? 夢だろう?」

「夢じゃないわよ! 裕翔の力を貸して!」

「それは構わないが……誰を助ければ……」

「こっちよ……」

 マリンは裕翔の手を取り女の子の居る部屋へ……

……
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