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≪蒸気船編≫
5.関宿で
しおりを挟む蒸気船のデッキに出て、心地良い風に吹かれながら景色を楽しんでいる……マリンは川面を凄い数の魚が一斉にジャンプする姿を見て、子供のように燥いでいた……裕翔はそんな楽しそうな彼女の横顔に目が止まる……
『マリンって、 美人なんだな! 姉妹そろって天女の様な美人だと言って、物見遊山に東京まで行こうとしていた男達がいたが、確かにわかる気がする……』
裕翔は横浜での事を思い出していた……
「どうしたの? 考え事?」
「ちょとね、横浜でマリンを探していた時の事を思い出してね」
「ふ~ん、そうなの……」
……
『そっか! 裕翔は1人で私の事一生懸命に捜してくれたんだよね! ありがとうね! それに、先に日光に行っちゃた家族の元へ、私を無事に送り届ける御役目があるのよね、あまりわがまま言っちゃ駄目よね……でも何があったのかな、お話し聞きたいな』
……
船は順調に進んでいるが、天候の悪化による強い風の影響を受けて、少し揺れ始めていた……
「今、どの辺りかしら?」
「そうだな、利根川との合流地点だから、関宿辺りかな?」
「裕翔、ちょと船酔いしちゃたみたい、少し休まない?」
早く古河まで行かないと、家族に合流出来なくなるけど、マリンは船酔で少し辛そうだし、あまり無理はさせられないよな……
「次の船着き場で降りようか?」
「うん」
……
二人は石垣の上から、利根川の流れを眺めていた。
天候も回復して、きれいな青空が広がり、心地よい風がマリンの髪を撫でる……
「裕翔、ここにはお城が在ったの?」
「最近になって明治政府により取り壊された跡だよ」
……
『全国城郭存廃ノ処分並兵営地等撰定方』通称『廃城令』により、明治政府は日本全国の193の城、その他の重要施設となる147の建物、合計340を壊し始めていた。
……
「残念だわ、日本のお城、見たかったのにな!」
「マリンは、変わってるな、お城に興味があるのか?」
「他にも、日本の着物とか、忍者にも興味あるわよ!」
「は、はは、忍者はともかく、着物なら、この辺りで、結城紬の着物が買えるかも、どうする?」
「見たい!」
着物が見れると喜ぶマリン、元気になった姿を見て安心する裕翔だった……
……
着物を求めて町に向かって歩いていると、1人の少年が途方に暮れている姿が目に止まる。
「あの子どうしたのかな?」
「誰かを探しているみたいだが? どうする? 助けてあげようか?」
「そうね!」
マリンは、話し掛けてみる……
「ねー君! どうしたの?」
少年は異国の女の人に突然話し掛けられ、少し警戒したようだったが、誰かに助けて欲しくて、少し戸惑いながらも話し始める……
「……先っきまで一緒にいた妹が、突然いなくなって、何処を探しても見つけられないんだ……もうどうしたらいいのか、分からなくて……」
「お名前は?」
「僕は、一二三、妹は鈴です」
「何処ではぐれたのかな?」
マリンは優しく少年に尋ねてみる……少年は妹が突然いなくなった場所を指差しながら話す……
「この道を少し戻った、曲がり角の所で……」
「私達も探すわよ、そこまで行って見ましょう」
少年は心配と不安で、今にも泣き出しそうだ……
「妹の事お願いします……」
「大丈夫よ! 安心して、私達が必ず探すわよ! それから、私の事は『マリン』って呼んでね!」
美しい異国の女の人に話しかけられて、驚いてしまたけど、この人は、とても優しそう……日本語も上手だし、この人にお願いすれば妹を見つけてくれるかもしれない……
……
「ここです! この場所です。いつも通る場所なんです。迷子になるなんて考えられません……」
「普通の道ね! どう? 裕翔、 何かわかる?」
「……ん~! 特に変わった所は無いな!」
「ミーシャはどう? 何かわからない?」
『ニヤ~!』
「わからない見たいね?」
「妹の鈴は、確り者だから、誰かに付いていったり、誰かに騙されたりする事は、絶対にありません!」
「大丈夫よ! 一二三君、鈴ちゃんの事一緒に探しましようね!」
「有り難うございます。マリンお姉さん!」
「その呼び方好きよ、一二三君は良い子ね!」
マリンは『おねーさん』って呼ばれて照れているようだが、今は鈴ちゃんの事を急いで探さないと!
「何、照れているんだ……マリン、急ぐぞ!」
「そうよね!」……
そこで、裕翔が提案する……
「それじゃ! 近くに神社が在るから奥義を使うよ」
「裕翔、奥義ってなに? 忍術? 見せて、見せて!」
マリンは、興味津々で裕翔の事を見ている。
……
神社へ移動する。
……
「近い! そんなに見つめられると、集中できないよ」
「ねーねー! 早く早く!」
気を集中し、刀のつかから金属音を発する……
各地の鳥居が反応して、ネットワークが構成され、少女の居場所を探す。
……
「不思議な技ね! 忍術なの?……それで何かわかった?」
……
『なんか凄く格好良かったけど……すこしドキドキしちゃた!』
マリンはもじもじしながら、抱っこしていたミーシャをむぎゅ~と抱きしめた……
『ニャギャ~~~』
……
「この技は忍術じゃないよ、神道無念流の立ち居合12剣の奥義の1つだよ!
……それから、たぶんだけど、この近くに鈴ちゃんはいるぞ!」
「ふ~ん……」
『やだ~私ったらまだドキドキしてる……裕翔の顔が見れないわ……ごめんね裕翔! 素っ気ない態度になっちゃた……』
……
まずい……マリンの反応が薄いな、完全に場所が特定出来なかったし、どうしよう……
すると、ミーシャが突然走り出した。
『ニャー』
「何処に行くのミーシャ!」
「マリン! 一二三君、ミーシャに付いていくよ!」
……
裕翔は、少し前の事を思い出す……
『浅草でマリンを探してた時も、同じ事が有ったな? ミーシャは、俺の奥義と連動できるのか?』
……
3人は、ミーシャを追い掛けて走り出していた……ミーシャも全員が付いてきているか、たまに立ち止まって待っていてくれているが……
「ミーシャ、ちょと待って! それから、もう少し道を通ってくれーーー!」
……
塀を越え、屋根を越え、垣根を越えてたどり着いた先……
「やっと追いついた~、ミーシャ、案内してくれるのは有り難いが、ちゃんと道を通らないと……」
「もう~やだ~~~! 蜘蛛の巣だらけよ~」
「埃もひどいし……げほ、げほ、げほ……」
一二三君は、下駄を履いていたから、もっと大変だ……走りづらいし、酷い埃で咽る……
マリンは緑色に輝く魔法陣の力で回復の御札を作り、みんなに貼り付ける……
「ありがとうマリン! でもそんな所へ御札を貼られて、一二三君、困ってるぞ……」
……
「大きな川の河川敷ね! この場所にいるのね?!」
少し落ち着き辺りを見回すと、ミーシャがこの場所だとアピールしている。
「これはなに?」
ミーシャの座っている場所の近くの空間が歪んでいる。
「えい!」
マリンは、その空間に石を投げ込んだ!
「え! マリン、いきなり石を投げ込むかな?……」
『ぎゅうん!』
何かに当たった!
緩やかに石が投げ返されて、裕翔に当たる。
「いた!」
裕翔も投げ込む!
投石の応戦が始まった。
暫くは緩やかな投石が続いていたが……
『ヒュン』
突然、凄まじいスピードの超高速弾が飛んで来て、裕翔の顔の直前で轟音を立て、青白い閃光とともに消えた……
『チュドーーーン』
マリンの張った結界に当たりいくつもの超高速弾が消える音がする。辺の空間が振動で歪み、一二三君はその威力に驚いて尻餅をつく……
この魔法は防御結界魔法、お祖母ちゃんから教わった我が一族に伝わる一子相伝の魔法よ、(姉も、母も使えるけどね、ちょと言ってみたかっただけよ)今回は、魔法と認めるわ! 忍術じゃないわよ!
「念の為、結界を張っておいて良かったわ、やっぱり変化ね、ちょーやばい奴らね!」
「『ちょーやばい』……って! どこでそんな言葉覚えたんだマリン?」
『チュドドドーン』
その轟音は空振となり、辺の町や村々に被害をもたらした……
マリンは茶色の魔法陣を指先に出すと、御札に力を流し込み、地面に貼り付ける……
「土遁の術!」
空中に何か文字を書きながら呪文を唱える……
辺の砂が大量に舞い上がり、砂塵となり異空間へ……
「凄い、マリン! それ、忍術だろ! 始めて見たよ! 格好良いな!」
「だから言ったでしょ! 私は忍術が使えるのよ!」
……
暫くすると、目を回した変化が数匹出てきた!
「こいつらか! たぬきの変化だな!」
……
縄で縛って捕まえる。
……
「この子達、見た目は可愛らしいのに、いたずらっ子なのよね! 私はこの子達に騙されて酷い目に会わされたのよね~、少しこらしめてあげますね!」
そう言うと、マリンは変化のオデコに凸ピンをした。
『ぎゅうん!』『ぎゅうん!』『ぎゅうん!』
目を覚ました変化達が暴れだす!
しかし、縄で縛られ、逃げられない!
「観念しなさい! あなた達、女の子を拐わなかった? 正直に白状しなさい! 次は私の忍術でお仕置きをするわよ!」
指先に赤く輝く小さな魔方陣を揺らめかしながら、変化を脅している……変化達は、観念したのか、大人しくなり命乞いを始めた。
「私達を鈴ちゃんの所へ案内しなさい! そうすれば許してあげるわよ!」
変化達は、縄で繋がれながら、異界の門を開き、3人を案内する……
「凄い妖気だ! 大丈夫なのか?」
「そうね、嫌な感じね……」
ミーシャは裕翔の懐に入り震えている……『ニャ~~~~』
……
再びマリンは境界を越え異界へ入り込んで行く……
「裕翔、私の手を離さないでね……怖い……」
……
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