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≪蒸気船編≫
14.小山へ
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『マリンはね! アメリカにいる頃、日本の事ばっかり調べていてね! 1人で本ばっかり読んでいたんだよ。それからね、外へ遊びに出たら、1人で森のなかに入って、吸血鬼やUMAを相手に魔法や、忍術(陰陽道)の訓練をしていて、心配した両親がクリスマスに僕をプレゼントしたんだ! もう1人で森の中へ行かないようにね!』
「そうだったのか、吸血鬼やUMAか? だけど大丈夫だったのか? 血を吸われたら、吸血鬼になっちゃうんだろ~? まさか、マリン?」
「裕翔~、血を吸わせて~~~!」
「ゔっ……冗談は止めろよマリン?」
マリンはミーシャの喉元に噛みついた……
『何で僕う~? ゔっ、やられた~~~! 吸血鬼になっちゃうよ~!』
「……」
ミーシャは、話を続ける……
『くすぐったいよ~マリン!……だけどマリンは森に行くのをやめなかったけどね。でも大丈夫さ! マリンは凄く強いからね!』
「ミーシャごめんね! 冗談よ! 裕翔も驚いた? 吸血鬼やUMAは人を襲うから、町に近付かない様に、追い払っていたのよ、丁度良い練習にもなるからね! だけど私、その頃はまだ魔法力は弱かったから、忍術と組み合わせる事を考えたの、それで練習で森へ行ってたのよ……」
「かなり強そうな相手に思えるけど……」
「他にもワイバーンもいて、そいつは飛べるから厄介なんだけどね」
「な~マリン、本当に同じ世界なんだよな?」
「おなじよ! 何言ってるのよ~、アメリカには普通にいるわよ!」
「……俺の修行相手は、熊や狼だったけどな……アメリカではそんなに強そうなのが普通にいるのか?……ま、それは良いとして……な~マリン、その能力は、やっぱり特別なのか?」
「忍術?」
「違う、違う、魔法の事!」
「そうね! 私達のご先祖は、イギリスの貴族の出身で、魔法が使える一族だったらしいの、おばあちゃんのお母様、私の曾祖母 、え~と、ひいおばあちゃんがその一族の出身らしいのよ、だからね、私のおばあちゃんもママも使えるわよ!」
「なるほど! 家族の中で魔法が使えるのはマリンを含めて3人だけなのか?」
「あと、ソフィアねーさんが使えるわ! 私は赤ちゃんの頃から魔法が使えたみたいだけど、ソフィアねーさんは幼稚園の頃からだって言ってたわ、突然幼稚園がワイバーンに襲われた時に、ねーさんが撃退したらしいの!」
「姉、強え~!」
「おばあちゃんからは、『人前で、魔法を使っちゃだめよ! 回りの人が警戒してしまうから』と言われていたんだけど、ソフィアねーさんは無意識で魔法を発動させたみたい、仕方ないわよね、防衛本能だものね……だけどほとんどの子どもの視線がワイバーンに向けられていて、ソフィアねーさんが魔法を使ったなんて分からなかったらしいのよ、だから有耶無耶にしちゃたらしいのよ! 私も、友達がUMAに襲わた時に、魔法を使っちゃたのよね、その友達は不思議な顔をしてたけど、『手品よ!』て、言ったら、信じてくれたから、たぶん大丈夫よ!」
『僕もその友達は知っているよ! とても可愛い女の子さ! マリンとは仲がとても良いんだ! 日本のお土産も買っていくって約束もしているんだよ! ね~マリン! もう一回、僕の首元噛んで~』
「何か良いお土産があれば良いんだけどね~」
『あ! いけない、僕の声は他の人には聞こえないからね! たぶん、裕翔は今、猫と話してる、ちょとだけ変な人として見られているから、注意してニャン!』
「ニャンって! おい、おい! 本当かよ……」裕翔が回りを見ると、冷ややかな視線を感じた……
「お兄ちゃん大丈夫?」近くで見ていた少女に声を掛けられ、心配される……
「あー、大丈夫だ! 問題ない……そろそろ時間か……出発するかな……」気まずそうに荷物をまとめ、宿代を払い、ミーシャを抱っこして蒸気船乗り場へ……
……
「さっき、女の子に話し掛けられた時の、裕翔の表情! 面白かったわ!」
「マリン、笑うなよ! ミーシャの声が他の人には聞こえないって知ってたんだよな~、マリン?」
「えへ!」
「えへ! じゃない! そういう事はちゃんと教えてくれよな~……」
「ごめんね裕翔! 今はまだ無理だけど、そのうち、ミーシャがみんなと話せるようにするわね!」
『ニャー』
……
2つの大きな外輪をもつ蒸気船が、汽笛をならし、長くたなびく煙を出しながら、船着き場へ入船してきた。
「蒸気船が来たわ! 今回は大丈夫よ、ちゃんと終点の小山まで行くから……」
「そうだな! 今回は途中下船は無しだぞ!」
2人と1匹は小山へ向かう蒸気船に乗り込んだ。
蒸気船は、利根川から渡良瀬川に入り、思川をマリンと裕翔、ミーシャを乗せて進む。あと2人の神様も一緒にね!
……
「もう体調は大丈夫そうだな! 小山からは馬車か人力車での移動になるが、どっちが良いかな?」
「歩くわよ! ずっと日本を旅したかったんだから、勿体ないわ!」
「そうか! そうだよな、分かった!」
「すごく楽しみね!」
……
蒸気船は黒い煙を細く長くたなびかせ、汽笛をたまに鳴らしながら、思川の川面を白波を立てながら進み、時刻どうりに終点の小山の船着き場へ着岸した……
「ねー裕翔! お腹空かない!」
「もう昼時か!」
小山の船着き場は、城(祇園城)の近くにあって、船を下りたら直ぐ近くに、茶屋があり、2人共お腹も空いていたので、迷わずに立ち寄る事にした……
「この辺りの名物は何ですか?」
裕翔は茶屋のお姉さんに、なにか美味しいものがあるか聞いてみる……マリンもお品書きに目を通してはいるが漢字に苦戦している様だ……考え込んでいる。
「お食事でしたら、甘露煮などは如何ですか?」
「裕翔! 甘露煮だって、食べたい!」
「マリンは甘露煮、知ってるのか?」
「知らな~い、でも美味しんでしょ! 日本の食べ物は美味しいからね! 楽しみ!」
「そうか……それじゃ! 2人分、頼みます」
「有り難うございます。 少々お待ち下さい、ご用意いたします」
……
「お待ちどうさま」
「あ! 黒いお魚がご飯の上にのってるわ? 焦げてるのかな? 苦くない? 食べれるの?」
『マリン! 僕にもちょうだい!』
「はい、どうぞ」
『にゃうにゃう、ニャー! 甘くて美味しいよ!』
「本当に? 苦くないの? ミーシャがそう言うなら……」マリンは恐る恐る、ほんの一口だけ食べてみる。
「う~ん! ほんと~うだ! 甘くて美味しい!」
甘露煮とは、小魚を醤油、砂糖、みりん、水飴、等と一緒に骨まで柔らかなるほどに甘く煮込んだ食べ物で、ご飯と一緒に食べると美味しい。
「箸の使い方上手になったな!」……マリンは練習の成果もあって、上手に箸を使ってご飯を食べられる様になっていた。
「ぜんぜん余裕で使えるわ、もう棒が2本でも、驚かないわよ!」
……
『お腹いっぱいだね! マリンこれからどうするの?』
「祇園城だって、何か感じないか?」
「何かが居るような?……取り敢えず本丸まで行って見ようかな……」
「そうだな、せっかくだから行ってみるか!」
「ご馳走さまでした、お代はここにおきますね!」
「有り難うございました」……茶屋のお姉さんが手を降って見送ってくれた。
……
城内へ……
「この場所は戦があったみたいね! やな感じがするわ!」
「そうだな、ここは小山氏の居城だったらしくて、その頃に戦があったらしいぞ!」
……その時どこからともなく幼い子供の声がした……『お前らはだれだ?』
「ミーシャ、何か言ったか?」
『僕は何も言ってないよ……』
『おい! お前! 何しに来た!』
「マリン、何か言ったか?」
「私じゃないわよ……」
『そこのお前! ちょつとイケメンだからっていい気になるなよ!』……裕翔は声のする方向を見たが、誰もいない?
「……?」
「裕翔! 後ろ見ちゃ駄目よ!」
「マリン、何かいるのか?」
「えー、ちょっとめんどくさいのがいるわ!」
「見えるのか?」
「見えるわ!」
『そこの女! 何をこそこそ話している! 何しに来た? と聞いてるんだが?」
「裕翔! どうしよう? やたらに絡んで来ているよ~……」
「そうだな、声はしっかり聞こえる! 子供か?」
「そうね、幼い女の子みたいね!」
「このまま気付かない振りして本丸まで行こう……」
その幼い子供は、暫らく後ろを付いて来ていたが、そのうちに、見当たらなくなった……
……
「何処かへ行ったみたいね、付いて来てはいないわ!」
「今の内に調べて、早く帰ろう」
「そうね!」……マリンは白銀色の綺麗な光を放つ魔法陣を転回させて、探知魔法を発動させる……
「どうだった?」
「んー、何もなさそうね……」
「そうか」……
『見つけたぞー!』……その幼い子供は、暫らくマリンと裕翔の後を付いて歩いていたが、足元にカエルの子供を見つけ、気になり……無視できず……何か、こう、子供の本能がと言うか、好奇心に勝てずに暫らくカエルで遊んでしまっていたらしい……
『マリン! 見つかっちゃたよ! 走って来るよ!』
「俺も見えるようにしてくれないか」……マリンは裕翔に魔法を掛ける。
「おー、見えた!」……幼女は凄い勢いで怒りながら走って来て、裕翔の目の前でつまずいて転んだ。
「大丈夫か?」……幼女は涙目になって、裕翔を見上げる。
『お前たち、逃げるとはずるいぞ! ん! ん! ん! ……私が見えるのか?』
「あー! 見えるぞ」……幼女は気まずそうに、裾の埃を払いながら起き上がる。
「この仕草は! マリン、もしかして?」
「そうね! また、神様よね?」
『如何にも、私はこの城を守る神だぞ! なぜ、お前たちには、私が見える? 大概のやからは、私が見えないから、脅かせば逃げてしまうのだがな?』
「私の中には、貴方と同じ神様が2人も入っているからね! それで、貴方の事も見えるのよ!」
『そんなわけあるか! 人の中に神が入る分けが無いでわないか! 嘘をつくと許さないぞ!』
「嘘じゃないわよ!」
『いいや、そんな事よりも、お前たちこの城で何をしている? 事と次第では許さないぞ!』
「あのー……それは……」
「逃げるぞ! ミーシャは、マリンを頼む!」
『わかったよ、裕翔! まかせて!』……裕翔とマリンは二手に別れて逃げる。
『こらー! ずるいぞ! まてー!』……城跡の中を走り回る。
『マリン、右へ!』……ミーシャはマリンの肩に乗り、逃げる方向を教える。
「次はどっち?」
『そこの石垣の陰に隠れて!』
……
『逃げ足が早い奴らだ、ずるいぞ!』……マリンの隠れている場所の近くを通るが気付かない……幼女の神様は顔を真っ赤にして地団駄を踏んで怒っている。
……
「神様って、おんなじ怒り方をするのね、ちょっと可愛いわね!」
……
『何やら騒がしいな? どうしたのじゃマリン?』
「しずか、ちょと面倒臭そうなのに会っちゃたみたいで……さっきから追われているのよ」
『どんな奴なのじゃ?』……しずかは、石垣の陰からそっと覗きこんだ。
『な、な、ななな、なぜ『小犬』がいる?』
「え! 知り合い?」
『そうじゃな、神々は年に一度、出雲でみな会うからな』
「苦手なんですか?」
『いや、そんな事はないぞ!』……しずかは、少し引きつった顔をした。
『わ!』
「きゃ!」……マリンは突然、後から脅かされ、悲鳴を上げた。
『見~つけた!』
『こ奴は、いたずらが大好きなのじゃ!』
……しずかは出雲での事を話し始めた。ある時は、肩をたたかれ振り返ると、頬に蛙をむぎゅ~とくっつけられた、またある時は、廊下で背後から蛙で驚かされる。
……蛙を背中に入れられる。
……大浴場で蛙。
……浴衣に蛙。
……寝床に蛙。
etc……
『全く飽きもせず、毎日同じ悪戯をしてくるのじゃ! こ奴の悪戯は、もう数えきれん! その後は、隣で可愛らしく一緒に寝ているのじゃがな……小犬の寝顔はとても可愛いのじゃ! そうじゃ、何時だったか、朝起きたら顔に落書きされていてな、そのまま、大会議場まで行ってしまい恥を掻いた事があったな……』
「出雲へはどのくらいの期間泊まるの?」
『1ヶ月じゃ!』……しずかは小犬の頭を『こつん』と叩いた。
「1ヶ月も同じ悪戯を……」同じ悪戯に毎回引っ掛かるしずかには、可愛らしいと思いながらも、マリンは少し呆れた顔をした。
『だって~! しずかの驚く顔が、可愛いいからな~!』
『こら! 呼び捨てにするな、『しずかお姉様』と呼ばぬか!……そうじゃ! 小犬も来ぬか? ここに居るのも飽きたじゃろう? 良い所が在るのじゃが!』
『行く、しずかと行く!』
『いたずらは無しじゃぞ!』
……
「マリン、遅かったな……わるいな、ちょっと休んでた……」
裕翔は、追われなくなったので、さっきの茶屋まで戻って、1人で休憩していた。
「酷いわ! 1人で休んでるなんて!」
「相手は神様なんだから、大丈夫だろう! と思ったんだがな? それでどうなった?」
「また1人増えたわよ!」
「そうか、それじゃ先を急ごうか!」
「何なの! 驚かないの?」
「もうなれたよ! それで名前は?」
「小犬ちゃんよ」
「分かった……後で紹介してくれ」
……
「そうだったのか、吸血鬼やUMAか? だけど大丈夫だったのか? 血を吸われたら、吸血鬼になっちゃうんだろ~? まさか、マリン?」
「裕翔~、血を吸わせて~~~!」
「ゔっ……冗談は止めろよマリン?」
マリンはミーシャの喉元に噛みついた……
『何で僕う~? ゔっ、やられた~~~! 吸血鬼になっちゃうよ~!』
「……」
ミーシャは、話を続ける……
『くすぐったいよ~マリン!……だけどマリンは森に行くのをやめなかったけどね。でも大丈夫さ! マリンは凄く強いからね!』
「ミーシャごめんね! 冗談よ! 裕翔も驚いた? 吸血鬼やUMAは人を襲うから、町に近付かない様に、追い払っていたのよ、丁度良い練習にもなるからね! だけど私、その頃はまだ魔法力は弱かったから、忍術と組み合わせる事を考えたの、それで練習で森へ行ってたのよ……」
「かなり強そうな相手に思えるけど……」
「他にもワイバーンもいて、そいつは飛べるから厄介なんだけどね」
「な~マリン、本当に同じ世界なんだよな?」
「おなじよ! 何言ってるのよ~、アメリカには普通にいるわよ!」
「……俺の修行相手は、熊や狼だったけどな……アメリカではそんなに強そうなのが普通にいるのか?……ま、それは良いとして……な~マリン、その能力は、やっぱり特別なのか?」
「忍術?」
「違う、違う、魔法の事!」
「そうね! 私達のご先祖は、イギリスの貴族の出身で、魔法が使える一族だったらしいの、おばあちゃんのお母様、私の曾祖母 、え~と、ひいおばあちゃんがその一族の出身らしいのよ、だからね、私のおばあちゃんもママも使えるわよ!」
「なるほど! 家族の中で魔法が使えるのはマリンを含めて3人だけなのか?」
「あと、ソフィアねーさんが使えるわ! 私は赤ちゃんの頃から魔法が使えたみたいだけど、ソフィアねーさんは幼稚園の頃からだって言ってたわ、突然幼稚園がワイバーンに襲われた時に、ねーさんが撃退したらしいの!」
「姉、強え~!」
「おばあちゃんからは、『人前で、魔法を使っちゃだめよ! 回りの人が警戒してしまうから』と言われていたんだけど、ソフィアねーさんは無意識で魔法を発動させたみたい、仕方ないわよね、防衛本能だものね……だけどほとんどの子どもの視線がワイバーンに向けられていて、ソフィアねーさんが魔法を使ったなんて分からなかったらしいのよ、だから有耶無耶にしちゃたらしいのよ! 私も、友達がUMAに襲わた時に、魔法を使っちゃたのよね、その友達は不思議な顔をしてたけど、『手品よ!』て、言ったら、信じてくれたから、たぶん大丈夫よ!」
『僕もその友達は知っているよ! とても可愛い女の子さ! マリンとは仲がとても良いんだ! 日本のお土産も買っていくって約束もしているんだよ! ね~マリン! もう一回、僕の首元噛んで~』
「何か良いお土産があれば良いんだけどね~」
『あ! いけない、僕の声は他の人には聞こえないからね! たぶん、裕翔は今、猫と話してる、ちょとだけ変な人として見られているから、注意してニャン!』
「ニャンって! おい、おい! 本当かよ……」裕翔が回りを見ると、冷ややかな視線を感じた……
「お兄ちゃん大丈夫?」近くで見ていた少女に声を掛けられ、心配される……
「あー、大丈夫だ! 問題ない……そろそろ時間か……出発するかな……」気まずそうに荷物をまとめ、宿代を払い、ミーシャを抱っこして蒸気船乗り場へ……
……
「さっき、女の子に話し掛けられた時の、裕翔の表情! 面白かったわ!」
「マリン、笑うなよ! ミーシャの声が他の人には聞こえないって知ってたんだよな~、マリン?」
「えへ!」
「えへ! じゃない! そういう事はちゃんと教えてくれよな~……」
「ごめんね裕翔! 今はまだ無理だけど、そのうち、ミーシャがみんなと話せるようにするわね!」
『ニャー』
……
2つの大きな外輪をもつ蒸気船が、汽笛をならし、長くたなびく煙を出しながら、船着き場へ入船してきた。
「蒸気船が来たわ! 今回は大丈夫よ、ちゃんと終点の小山まで行くから……」
「そうだな! 今回は途中下船は無しだぞ!」
2人と1匹は小山へ向かう蒸気船に乗り込んだ。
蒸気船は、利根川から渡良瀬川に入り、思川をマリンと裕翔、ミーシャを乗せて進む。あと2人の神様も一緒にね!
……
「もう体調は大丈夫そうだな! 小山からは馬車か人力車での移動になるが、どっちが良いかな?」
「歩くわよ! ずっと日本を旅したかったんだから、勿体ないわ!」
「そうか! そうだよな、分かった!」
「すごく楽しみね!」
……
蒸気船は黒い煙を細く長くたなびかせ、汽笛をたまに鳴らしながら、思川の川面を白波を立てながら進み、時刻どうりに終点の小山の船着き場へ着岸した……
「ねー裕翔! お腹空かない!」
「もう昼時か!」
小山の船着き場は、城(祇園城)の近くにあって、船を下りたら直ぐ近くに、茶屋があり、2人共お腹も空いていたので、迷わずに立ち寄る事にした……
「この辺りの名物は何ですか?」
裕翔は茶屋のお姉さんに、なにか美味しいものがあるか聞いてみる……マリンもお品書きに目を通してはいるが漢字に苦戦している様だ……考え込んでいる。
「お食事でしたら、甘露煮などは如何ですか?」
「裕翔! 甘露煮だって、食べたい!」
「マリンは甘露煮、知ってるのか?」
「知らな~い、でも美味しんでしょ! 日本の食べ物は美味しいからね! 楽しみ!」
「そうか……それじゃ! 2人分、頼みます」
「有り難うございます。 少々お待ち下さい、ご用意いたします」
……
「お待ちどうさま」
「あ! 黒いお魚がご飯の上にのってるわ? 焦げてるのかな? 苦くない? 食べれるの?」
『マリン! 僕にもちょうだい!』
「はい、どうぞ」
『にゃうにゃう、ニャー! 甘くて美味しいよ!』
「本当に? 苦くないの? ミーシャがそう言うなら……」マリンは恐る恐る、ほんの一口だけ食べてみる。
「う~ん! ほんと~うだ! 甘くて美味しい!」
甘露煮とは、小魚を醤油、砂糖、みりん、水飴、等と一緒に骨まで柔らかなるほどに甘く煮込んだ食べ物で、ご飯と一緒に食べると美味しい。
「箸の使い方上手になったな!」……マリンは練習の成果もあって、上手に箸を使ってご飯を食べられる様になっていた。
「ぜんぜん余裕で使えるわ、もう棒が2本でも、驚かないわよ!」
……
『お腹いっぱいだね! マリンこれからどうするの?』
「祇園城だって、何か感じないか?」
「何かが居るような?……取り敢えず本丸まで行って見ようかな……」
「そうだな、せっかくだから行ってみるか!」
「ご馳走さまでした、お代はここにおきますね!」
「有り難うございました」……茶屋のお姉さんが手を降って見送ってくれた。
……
城内へ……
「この場所は戦があったみたいね! やな感じがするわ!」
「そうだな、ここは小山氏の居城だったらしくて、その頃に戦があったらしいぞ!」
……その時どこからともなく幼い子供の声がした……『お前らはだれだ?』
「ミーシャ、何か言ったか?」
『僕は何も言ってないよ……』
『おい! お前! 何しに来た!』
「マリン、何か言ったか?」
「私じゃないわよ……」
『そこのお前! ちょつとイケメンだからっていい気になるなよ!』……裕翔は声のする方向を見たが、誰もいない?
「……?」
「裕翔! 後ろ見ちゃ駄目よ!」
「マリン、何かいるのか?」
「えー、ちょっとめんどくさいのがいるわ!」
「見えるのか?」
「見えるわ!」
『そこの女! 何をこそこそ話している! 何しに来た? と聞いてるんだが?」
「裕翔! どうしよう? やたらに絡んで来ているよ~……」
「そうだな、声はしっかり聞こえる! 子供か?」
「そうね、幼い女の子みたいね!」
「このまま気付かない振りして本丸まで行こう……」
その幼い子供は、暫らく後ろを付いて来ていたが、そのうちに、見当たらなくなった……
……
「何処かへ行ったみたいね、付いて来てはいないわ!」
「今の内に調べて、早く帰ろう」
「そうね!」……マリンは白銀色の綺麗な光を放つ魔法陣を転回させて、探知魔法を発動させる……
「どうだった?」
「んー、何もなさそうね……」
「そうか」……
『見つけたぞー!』……その幼い子供は、暫らくマリンと裕翔の後を付いて歩いていたが、足元にカエルの子供を見つけ、気になり……無視できず……何か、こう、子供の本能がと言うか、好奇心に勝てずに暫らくカエルで遊んでしまっていたらしい……
『マリン! 見つかっちゃたよ! 走って来るよ!』
「俺も見えるようにしてくれないか」……マリンは裕翔に魔法を掛ける。
「おー、見えた!」……幼女は凄い勢いで怒りながら走って来て、裕翔の目の前でつまずいて転んだ。
「大丈夫か?」……幼女は涙目になって、裕翔を見上げる。
『お前たち、逃げるとはずるいぞ! ん! ん! ん! ……私が見えるのか?』
「あー! 見えるぞ」……幼女は気まずそうに、裾の埃を払いながら起き上がる。
「この仕草は! マリン、もしかして?」
「そうね! また、神様よね?」
『如何にも、私はこの城を守る神だぞ! なぜ、お前たちには、私が見える? 大概のやからは、私が見えないから、脅かせば逃げてしまうのだがな?』
「私の中には、貴方と同じ神様が2人も入っているからね! それで、貴方の事も見えるのよ!」
『そんなわけあるか! 人の中に神が入る分けが無いでわないか! 嘘をつくと許さないぞ!』
「嘘じゃないわよ!」
『いいや、そんな事よりも、お前たちこの城で何をしている? 事と次第では許さないぞ!』
「あのー……それは……」
「逃げるぞ! ミーシャは、マリンを頼む!」
『わかったよ、裕翔! まかせて!』……裕翔とマリンは二手に別れて逃げる。
『こらー! ずるいぞ! まてー!』……城跡の中を走り回る。
『マリン、右へ!』……ミーシャはマリンの肩に乗り、逃げる方向を教える。
「次はどっち?」
『そこの石垣の陰に隠れて!』
……
『逃げ足が早い奴らだ、ずるいぞ!』……マリンの隠れている場所の近くを通るが気付かない……幼女の神様は顔を真っ赤にして地団駄を踏んで怒っている。
……
「神様って、おんなじ怒り方をするのね、ちょっと可愛いわね!」
……
『何やら騒がしいな? どうしたのじゃマリン?』
「しずか、ちょと面倒臭そうなのに会っちゃたみたいで……さっきから追われているのよ」
『どんな奴なのじゃ?』……しずかは、石垣の陰からそっと覗きこんだ。
『な、な、ななな、なぜ『小犬』がいる?』
「え! 知り合い?」
『そうじゃな、神々は年に一度、出雲でみな会うからな』
「苦手なんですか?」
『いや、そんな事はないぞ!』……しずかは、少し引きつった顔をした。
『わ!』
「きゃ!」……マリンは突然、後から脅かされ、悲鳴を上げた。
『見~つけた!』
『こ奴は、いたずらが大好きなのじゃ!』
……しずかは出雲での事を話し始めた。ある時は、肩をたたかれ振り返ると、頬に蛙をむぎゅ~とくっつけられた、またある時は、廊下で背後から蛙で驚かされる。
……蛙を背中に入れられる。
……大浴場で蛙。
……浴衣に蛙。
……寝床に蛙。
etc……
『全く飽きもせず、毎日同じ悪戯をしてくるのじゃ! こ奴の悪戯は、もう数えきれん! その後は、隣で可愛らしく一緒に寝ているのじゃがな……小犬の寝顔はとても可愛いのじゃ! そうじゃ、何時だったか、朝起きたら顔に落書きされていてな、そのまま、大会議場まで行ってしまい恥を掻いた事があったな……』
「出雲へはどのくらいの期間泊まるの?」
『1ヶ月じゃ!』……しずかは小犬の頭を『こつん』と叩いた。
「1ヶ月も同じ悪戯を……」同じ悪戯に毎回引っ掛かるしずかには、可愛らしいと思いながらも、マリンは少し呆れた顔をした。
『だって~! しずかの驚く顔が、可愛いいからな~!』
『こら! 呼び捨てにするな、『しずかお姉様』と呼ばぬか!……そうじゃ! 小犬も来ぬか? ここに居るのも飽きたじゃろう? 良い所が在るのじゃが!』
『行く、しずかと行く!』
『いたずらは無しじゃぞ!』
……
「マリン、遅かったな……わるいな、ちょっと休んでた……」
裕翔は、追われなくなったので、さっきの茶屋まで戻って、1人で休憩していた。
「酷いわ! 1人で休んでるなんて!」
「相手は神様なんだから、大丈夫だろう! と思ったんだがな? それでどうなった?」
「また1人増えたわよ!」
「そうか、それじゃ先を急ごうか!」
「何なの! 驚かないの?」
「もうなれたよ! それで名前は?」
「小犬ちゃんよ」
「分かった……後で紹介してくれ」
……
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ファンタジー
リーマンショックで会社が倒産し、コンビニのバイトでなんとか今まで生きながらえてきた俺。いつものように眠りについた俺が目覚めた場所は異世界だった。俺は中世時代の若き国王アルフレッドとして目が覚めたのだ。ここは斜陽国家のアルカナ王国。産業は衰退し、国家財政は火の車。国外では敵対国家による侵略の危機にさらされ、国内では政権転覆を企む貴族から命を狙われる。
目覚めてすぐに俺の目の前に現れたのは、金髪美少女の妹姫キャサリン。天使のような姿に反して、実はとんでもなく騒がしいS属性の妹だった。やがて脳筋女戦士のレイラ、エルフ、すけべなドワーフも登場。そんな連中とバカ騒ぎしつつも、俺は魔法を習得し、内政を立て直し、徐々に無双国家への道を突き進むのだった。
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