ちょとだけ不思議で、ちょとだけ夢のある、ちょとだけ昔の冒険物語

いぬっ

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≪蒸気船編≫

14.小山へ

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『マリンはね! アメリカにいる頃、日本の事ばっかり調べていてね! 1人で本ばっかり読んでいたんだよ。それからね、外へ遊びに出たら、1人で森のなかに入って、吸血鬼きゅうけつきUMAユーマを相手に魔法や、忍術にんじゅつ陰陽道おんみょうどう)の訓練をしていて、心配した両親がクリスマスに僕をプレゼントしたんだ! もう1人で森の中へ行かないようにね!』

「そうだったのか、吸血鬼きゅうけつきUMAユーマか? だけど大丈夫だったのか? 血を吸われたら、吸血鬼になっちゃうんだろ~?  まさか、マリン?」

「裕翔~、血を吸わせて~~~!」

「ゔっ……冗談じょうだんめろよマリン?」  

 マリンはミーシャの喉元のどもとに噛みついた……

『何で僕う~? ゔっ、やられた~~~! 吸血鬼になっちゃうよ~!』

「……」

 ミーシャは、話を続ける……
『くすぐったいよ~マリン!……だけどマリンは森に行くのをやめなかったけどね。でも大丈夫さ! マリンはすごく強いからね!』

「ミーシャごめんね! 冗談じょうだんよ! 裕翔も驚いた? 吸血鬼やUMAユーマは人をおそうから、町に近付ちかづかない様に、追い払っていたのよ、丁度ちょうど良い練習にもなるからね! だけど私、その頃はまだ魔法力は弱かったから、忍術と組み合わせる事を考えたの、それで練習で森へ行ってたのよ……」

「かなり強そうな相手に思えるけど……」

ほかにもワイバーンもいて、そいつは飛べるから厄介やっかいなんだけどね」

「な~マリン、本当に同じ世界なんだよな?」

「おなじよ! 何言ってるのよ~、アメリカには普通にいるわよ!」

「……俺の修行しゅぎょう相手は、熊や狼だったけどな……アメリカではそんなに強そうなのが普通にいるのか?……ま、それは良いとして……な~マリン、その能力は、やっぱり特別とくべつなのか?」

忍術にんじゅつ?」
「違う、違う、魔法の事!」

「そうね! 私達のご先祖は、イギリスの貴族きぞくの出身で、魔法が使える一族いちぞくだったらしいの、おばあちゃんのお母様かあさま、私の曾祖母そうそぼ 、え~と、ひいおばあちゃんがその一族の出身らしいのよ、だからね、私のおばあちゃんもママも使えるわよ!」

「なるほど! 家族の中で魔法が使えるのはマリンを含めて3人だけなのか?」

「あと、ソフィアねーさんが使えるわ! 私は赤ちゃんの頃から魔法が使えたみたいだけど、ソフィアねーさんは幼稚園キンダーガーデンの頃からだって言ってたわ、突然とつぜん幼稚園がワイバーンにおそわれた時に、ねーさんが撃退げきたいしたらしいの!」

あね、強え~!」

「おばあちゃんからは、『人前で、魔法を使っちゃだめよ! 回りの人が警戒けいかいしてしまうから』と言われていたんだけど、ソフィアねーさんは無意識むいしきで魔法を発動させたみたい、仕方ないわよね、防衛本能ぼうえいほんのうだものね……だけどほとんどの子どもの視線がワイバーンに向けられていて、ソフィアねーさんが魔法を使ったなんて分からなかったらしいのよ、だから有耶無耶うやむやにしちゃたらしいのよ! 私も、友達がUMAユーマに襲わた時に、魔法を使っちゃたのよね、その友達は不思議な顔をしてたけど、『手品てじなよ!』て、言ったら、信じてくれたから、たぶん大丈夫よ!」

『僕もその友達は知っているよ! とても可愛い女の子さ! マリンとは仲がとても良いんだ! 日本のお土産みやげも買っていくって約束もしているんだよ! ね~マリン! もう一回、僕の首元噛んで~』

「何か良いお土産みやげがあれば良いんだけどね~」 

『あ! いけない、僕の声は他の人には聞こえないからね! たぶん、裕翔は今、猫と話してる、ちょとだけ変な人として見られているから、注意してニャン!』

「ニャンって! おい、おい! 本当かよ……」裕翔が回りを見ると、ややかな視線を感じた……

「お兄ちゃん大丈夫?」近くで見ていた少女に声を掛けられ、心配される……

「あー、大丈夫だ! 問題ない……そろそろ時間か……出発するかな……」気まずそうに荷物をまとめ、宿代やどだいを払い、ミーシャを抱っこして蒸気船乗り場へ……

……

「さっき、女の子に話し掛けられた時の、裕翔の表情ひょうじょう! 面白かったわ!」

「マリン、笑うなよ! ミーシャの声が他の人には聞こえないって知ってたんだよな~、マリン?」

「えへ!」

「えへ! じゃない! そういう事はちゃんと教えてくれよな~……」

「ごめんね裕翔! 今はまだ無理だけど、そのうち、ミーシャがみんなと話せるようにするわね!」

『ニャー』

……

 2つの大きな外輪をもつ蒸気船が、汽笛をならし、長くたなびく煙を出しながら、船着き場へ入船してきた。

「蒸気船が来たわ! 今回は大丈夫よ、ちゃんと終点の小山おやままで行くから……」

「そうだな! 今回は途中下船は無しだぞ!」

 2人と1匹は小山おやまへ向かう蒸気船に乗り込んだ。

 蒸気船は、利根川とねがわから渡良瀬川わたらせがわに入り、思川おもいがわをマリンと裕翔、ミーシャを乗せて進む。あと2人の神様も一緒にね!

……

「もう体調は大丈夫そうだな! 小山おやまからは馬車か人力車での移動になるが、どっちが良いかな?」

「歩くわよ! ずっと日本を旅したかったんだから、勿体もったいないわ!」

「そうか! そうだよな、分かった!」

「すごく楽しみね!」

……

 蒸気船は黒い煙を細く長くたなびかせ、汽笛をたまに鳴らしながら、思川おもいがわ川面かわも白波しらなみを立てながら進み、時刻どうりに終点の小山の船着き場へ着岸ちゃくがんした……

「ねー裕翔! お腹空おなかすかない!」

「もう昼時ひるどきか!」

 小山の船着き場は、城(祇園城ぎおんじょう)の近くにあって、船を下りたら直ぐ近くに、茶屋ちゃやがあり、2人共お腹も空いていたので、迷わずに立ち寄る事にした……

「この辺りの名物めいぶつは何ですか?」
 裕翔は茶屋のお姉さんに、なにか美味しいものがあるか聞いてみる……マリンもお品書しながきに目を通してはいるが漢字に苦戦している様だ……考え込んでいる。

「お食事でしたら、甘露煮かんろになどは如何いかがですか?」

「裕翔! 甘露煮かんろにだって、食べたい!」

「マリンは甘露煮、知ってるのか?」
「知らな~い、でも美味しんでしょ! 日本の食べ物は美味しいからね! 楽しみ!」

「そうか……それじゃ! 2人分、頼みます」

「有り難うございます。 少々お待ち下さい、ご用意いたします」

……

「お待ちどうさま」

「あ! 黒いお魚がご飯の上にのってるわ? 焦げてるのかな? にがくない? 食べれるの?」

『マリン! 僕にもちょうだい!』
「はい、どうぞ」

『にゃうにゃう、ニャー! 甘くて美味しいよ!』
「本当に? にがくないの? ミーシャがそう言うなら……」マリンはおそおそる、ほんの一口だけ食べてみる。

「う~ん! ほんと~うだ! 甘くて美味しい!」

 甘露煮とは、小魚を醤油しょうゆ砂糖さとう、みりん、水飴みずあめ、等と一緒に骨まで柔らかなるほどに甘く煮込んだ食べ物で、ご飯と一緒に食べると美味しい。

「箸の使い方上手になったな!」……マリンは練習の成果もあって、上手に箸を使ってご飯を食べられる様になっていた。

「ぜんぜん余裕よゆうで使えるわ、もう棒が2本でも、おどろかないわよ!」

……

『お腹いっぱいだね! マリンこれからどうするの?』

祇園城ぎおんじょうだって、何か感じないか?」

「何かが居るような?……取りえず本丸まで行って見ようかな……」

「そうだな、せっかくだから行ってみるか!」

「ご馳走さまでした、お代はここにおきますね!」

「有り難うございました」……茶屋のお姉さんが手を降って見送ってくれた。

……

城内じょうないへ……
「この場所はいくさがあったみたいね! やな感じがするわ!」

「そうだな、ここは小山氏おやまし居城きょじょうだったらしくて、その頃にいくさがあったらしいぞ!」

……その時どこからともなく幼い子供の声がした……『お前らはだれだ?』

「ミーシャ、何か言ったか?」
『僕は何も言ってないよ……』

『おい! お前! 何しに来た!』

「マリン、何か言ったか?」
「私じゃないわよ……」

『そこのお前! ちょつとイケメンだからっていい気になるなよ!』……裕翔は声のする方向を見たが、誰もいない?

「……?」

「裕翔! 後ろ見ちゃ駄目よ!」
「マリン、何かいるのか?」

「えー、ちょっとめんどくさいのがいるわ!」

「見えるのか?」
「見えるわ!」

『そこの女! 何をこそこそ話している! 何しに来た? と聞いてるんだが?」

「裕翔! どうしよう? やたらにからんで来ているよ~……」

「そうだな、声はしっかり聞こえる! 子供か?」
「そうね、幼い女の子みたいね!」

「このまま気付かない振りして本丸まで行こう……」

 その幼い子供は、暫らく後ろを付いて来ていたが、そのうちに、見当たらなくなった……

……

「何処かへ行ったみたいね、付いて来てはいないわ!」

「今の内に調べて、早く帰ろう」

「そうね!」……マリンは白銀はくぎん色の綺麗な光を放つ魔法陣を転回させて、探知魔法たんちまほうを発動させる……

「どうだった?」
「んー、何もなさそうね……」
「そうか」……

『見つけたぞー!』……その幼い子供は、暫らくマリンと裕翔の後を付いて歩いていたが、足元にカエルの子供を見つけ、気になり……無視できず……何か、こう、子供の本能がと言うか、好奇心に勝てずに暫らくカエルで遊んでしまっていたらしい……

『マリン! 見つかっちゃたよ! 走って来るよ!』

「俺も見えるようにしてくれないか」……マリンは裕翔に魔法を掛ける。

「おー、見えた!」……幼女は凄い勢いで怒りながら走って来て、裕翔の目の前でつまずいて転んだ。

「大丈夫か?」……幼女は涙目になって、裕翔を見上げる。

『お前たち、逃げるとはずるいぞ! ん! ん! ん! ……私が見えるのか?』

「あー! 見えるぞ」……幼女は気まずそうに、すそほこりを払いながら起き上がる。

「この仕草しぐさは! マリン、もしかして?」

「そうね! また、神様よね?」

如何いかにも、私はこの城を守る神だぞ! なぜ、お前たちには、私が見える? 大概たいがいのやからは、私が見えないから、おどかせば逃げてしまうのだがな?』 

「私の中には、貴方と同じ神様が2人も入っているからね! それで、貴方の事も見えるのよ!」

『そんなわけあるか! 人の中に神が入る分けが無いでわないか! 嘘をつくと許さないぞ!』

「嘘じゃないわよ!」

『いいや、そんな事よりも、お前たちこの城で何をしている? 事と次第では許さないぞ!』

「あのー……それは……」

「逃げるぞ! ミーシャは、マリンを頼む!」

『わかったよ、裕翔! まかせて!』……裕翔とマリンは二手ふたてに別れて逃げる。

『こらー! ずるいぞ! まてー!』……城跡しろあとの中を走り回る。

『マリン、右へ!』……ミーシャはマリンの肩に乗り、逃げる方向を教える。

「次はどっち?」

『そこの石垣いしがきの陰に隠れて!』

……

『逃げ足が早い奴らだ、ずるいぞ!』……マリンの隠れている場所の近くを通るが気付かない……幼女の神様は顔を真っ赤にして地団駄じだんだを踏んで怒っている。

……

「神様って、おんなじ怒り方をするのね、ちょっと可愛いわね!」

……

『何やら騒がしいな? どうしたのじゃマリン?』

「しずか、ちょと面倒臭めんどうくさそうなのに会っちゃたみたいで……さっきから追われているのよ」

『どんな奴なのじゃ?』……しずかは、石垣の陰からそっとのぞきこんだ。

『な、な、ななな、なぜ『小犬こいぬ』がいる?』

「え! 知り合い?」

『そうじゃな、神々は年に一度、出雲いずもでみな会うからな』

「苦手なんですか?」

『いや、そんな事はないぞ!』……しずかは、少し引きつった顔をした。

『わ!』
「きゃ!」……マリンは突然、後から脅かされ、悲鳴を上げた。

『見~つけた!』

『こ奴は、いたずらが大好きなのじゃ!』

……しずかは出雲での事を話し始めた。ある時は、肩をたたかれ振り返ると、頬に蛙をむぎゅ~とくっつけられた、またある時は、廊下で背後から蛙で驚かされる。

……かえるを背中に入れられる。

……大浴場で蛙。

……浴衣に蛙。

……寝床ねどこに蛙。

etc……

まったく飽きもせず、毎日同じ悪戯いたずらをしてくるのじゃ! こ奴の悪戯は、もう数えきれん! その後は、隣で可愛らしく一緒に寝ているのじゃがな……小犬の寝顔はとても可愛いのじゃ! そうじゃ、何時いつだったか、朝起きたら顔に落書きされていてな、そのまま、大会議場まで行ってしまいはじいた事があったな……』

「出雲へはどのくらいの期間泊まるの?」

『1ヶ月じゃ!』……しずかは小犬の頭を『こつん』と叩いた。

「1ヶ月も同じ悪戯を……」同じ悪戯に毎回引っ掛かるしずかには、可愛らしいと思いながらも、マリンは少しあきれた顔をした。

『だって~! しずかの驚く顔が、可愛いいからな~!』

『こら! 呼び捨てにするな、『しずかお姉様』と呼ばぬか!……そうじゃ! 小犬も来ぬか? ここに居るのも飽きたじゃろう? 良い所が在るのじゃが!』

『行く、しずかと行く!』
『いたずらは無しじゃぞ!』

……

「マリン、遅かったな……わるいな、ちょっと休んでた……」

 裕翔は、追われなくなったので、さっきの茶屋ちゃやまで戻って、1人で休憩していた。

「酷いわ! 1人で休んでるなんて!」

「相手は神様なんだから、大丈夫だろう! と思ったんだがな? それでどうなった?」

「また1人増えたわよ!」

「そうか、それじゃ先を急ごうか!」
「何なの! 驚かないの?」

「もうなれたよ! それで名前は?」
小犬こいぬちゃんよ」

「分かった……後で紹介しょうかいしてくれ」

……
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