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江藤結衣
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なにか気になった僕は、いじめを苦に自殺をした少女の家に行くことにした。
理由は分からないが、日記の内容はその少女の方が近いように感じたからなのかも知れない。少女の母親と話をすることができ、少々は日記を書いていなかったか聞いてみた。そしてその日記は、途中の一冊が抜けていないかを重ねて聞いた、
「どうして知っているの。」
母親としては、初めて会う知らない男が、なぜ娘のことを知っているのか、驚くのは当然のことではある。
この事実を知った僕は、内心やっぱりかと思いながらも、日記がこちらの少女のものだったことに、驚きと混乱が襲ってきた。
「もうひとりの少女は何者なんだ。」
もう直接本人に確認するしか解決はしないだろう。
「あの日記は君のものではなかったんだね。」
再び彼女に会った僕がそう聞いても、初めて会った時と同様に、少女は落ち着いた表情のままだった。
「結構早くわかったんだね。見かけ以上に行動力あるんだ。」
やはり僕が訪ねて来ることを予測していたかのようである。
「君は誰なんだい。」
「私は江藤結衣。これは間違いないよ。」
ふたりとも江藤結衣で間違いないようだが、亡くなった少女は中学2年で、僕の目の前にいる少女は中学3年という違いはある。ふたりの接点はもともとない訳だが、目の前にいる少女は僕のことを知っていた。
「私もあの場所に行っているから。しかも、もう1人の江藤結衣と同じ部屋にね。」
偶然にも2人は入れ替わりで同じ部屋にいたのだった。そこで例のノートを見つけたようだ。その内容だけでは、自分に何が起こっているのか理解出来るものではなかったが、自らもいま起こっている状況を書き留めておくと良いと感じて残していたらしい。
元の世界に戻ってきたときに、何が起こっているのか理解することが難しかったが、書き留めておくことで、もう2度とあの世界には行くまいと思えたようだった。
「あのノートを見ていたら、いつかあなたが来そうな予感はあったのよ。そして現れて日記を見ることになった。その日記とあなたからのはなしで、ハッキリしなかったもうひとつ世界のことが良くわかったわ。」
「もう私には、この日記もノートもいらないから返すわ。おかげで私は死ななくて済むことになったわ。ありがと。」
目の前の少女は、僕にそれを渡すとあっけなく去っていった。
受け取ったノートは、学校で使うようなごく普通のものだった。僕はその場でノートを開いて読んでいるうちに涙が止まらなくなった。
日記とは明らかに内容が違う。日記はその時起こっている事実とその感想で、特に違う世界にいた時の内容には感情が感じられないものだった。
ノートはその逆で、ありのままの少女を感じさせるものだった。そのノートは僕が違う世界に現れてからのものだった。ふたりきりの時間が長く続いていても、あまり多くの話をしていた訳ではないが、少女は僕に好意を持っていたことが内容から伝わってきた。少女は、いじめられていた元の世界に戻ることを望んでいなかった。このふたりきりの状態が続いてくれることを願っていた。あの場に他の誰にも来て欲しくなかったようだし、僕が元の世界に戻ることも望んでいなかった。元の世界に戻った今となっては、その時の様子を思い出すことは出来ないか、急に戻ることになった少女が叫んだ「ノートがー。」は日記ではなく本当にノートだったのだ。僕は日記のことだと思っていたため、ノートを探すことに意識がいっていなかったのだろう。
そして少女が元の世界に戻って生きて行くために必要だったのは、日記ではなくノートだった。僕もノートに気づいていれば、もっと早く少女を探していたに違いない。
元の世界に戻った少女は、違う世界の記憶はなくても無意識の間に、自らの心の安らぎを得ていた感覚は残っていたのではないだろうか。そうなると、元の世界で変わらずいじめが行われていれば、少女の耐える気力弱くなって、自らの死を選んでしまうのも頷けなくもない。
僕は少女の母親に日記を渡すことにした。そこで少女の写真を1枚頂き、僕の写真と合わせてノートの最後のページに張り付けた。
「ありがとう。」の言葉を添えて。
理由は分からないが、日記の内容はその少女の方が近いように感じたからなのかも知れない。少女の母親と話をすることができ、少々は日記を書いていなかったか聞いてみた。そしてその日記は、途中の一冊が抜けていないかを重ねて聞いた、
「どうして知っているの。」
母親としては、初めて会う知らない男が、なぜ娘のことを知っているのか、驚くのは当然のことではある。
この事実を知った僕は、内心やっぱりかと思いながらも、日記がこちらの少女のものだったことに、驚きと混乱が襲ってきた。
「もうひとりの少女は何者なんだ。」
もう直接本人に確認するしか解決はしないだろう。
「あの日記は君のものではなかったんだね。」
再び彼女に会った僕がそう聞いても、初めて会った時と同様に、少女は落ち着いた表情のままだった。
「結構早くわかったんだね。見かけ以上に行動力あるんだ。」
やはり僕が訪ねて来ることを予測していたかのようである。
「君は誰なんだい。」
「私は江藤結衣。これは間違いないよ。」
ふたりとも江藤結衣で間違いないようだが、亡くなった少女は中学2年で、僕の目の前にいる少女は中学3年という違いはある。ふたりの接点はもともとない訳だが、目の前にいる少女は僕のことを知っていた。
「私もあの場所に行っているから。しかも、もう1人の江藤結衣と同じ部屋にね。」
偶然にも2人は入れ替わりで同じ部屋にいたのだった。そこで例のノートを見つけたようだ。その内容だけでは、自分に何が起こっているのか理解出来るものではなかったが、自らもいま起こっている状況を書き留めておくと良いと感じて残していたらしい。
元の世界に戻ってきたときに、何が起こっているのか理解することが難しかったが、書き留めておくことで、もう2度とあの世界には行くまいと思えたようだった。
「あのノートを見ていたら、いつかあなたが来そうな予感はあったのよ。そして現れて日記を見ることになった。その日記とあなたからのはなしで、ハッキリしなかったもうひとつ世界のことが良くわかったわ。」
「もう私には、この日記もノートもいらないから返すわ。おかげで私は死ななくて済むことになったわ。ありがと。」
目の前の少女は、僕にそれを渡すとあっけなく去っていった。
受け取ったノートは、学校で使うようなごく普通のものだった。僕はその場でノートを開いて読んでいるうちに涙が止まらなくなった。
日記とは明らかに内容が違う。日記はその時起こっている事実とその感想で、特に違う世界にいた時の内容には感情が感じられないものだった。
ノートはその逆で、ありのままの少女を感じさせるものだった。そのノートは僕が違う世界に現れてからのものだった。ふたりきりの時間が長く続いていても、あまり多くの話をしていた訳ではないが、少女は僕に好意を持っていたことが内容から伝わってきた。少女は、いじめられていた元の世界に戻ることを望んでいなかった。このふたりきりの状態が続いてくれることを願っていた。あの場に他の誰にも来て欲しくなかったようだし、僕が元の世界に戻ることも望んでいなかった。元の世界に戻った今となっては、その時の様子を思い出すことは出来ないか、急に戻ることになった少女が叫んだ「ノートがー。」は日記ではなく本当にノートだったのだ。僕は日記のことだと思っていたため、ノートを探すことに意識がいっていなかったのだろう。
そして少女が元の世界に戻って生きて行くために必要だったのは、日記ではなくノートだった。僕もノートに気づいていれば、もっと早く少女を探していたに違いない。
元の世界に戻った少女は、違う世界の記憶はなくても無意識の間に、自らの心の安らぎを得ていた感覚は残っていたのではないだろうか。そうなると、元の世界で変わらずいじめが行われていれば、少女の耐える気力弱くなって、自らの死を選んでしまうのも頷けなくもない。
僕は少女の母親に日記を渡すことにした。そこで少女の写真を1枚頂き、僕の写真と合わせてノートの最後のページに張り付けた。
「ありがとう。」の言葉を添えて。
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