チェンジ

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別世界

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しかしまだ疑問が残る。
僕はどんな理由で別世界に行ったのだろう。そして別世界はどこなのだろう。知らなくても良いかも知れないが、ここまで来たら調べてみたい。ただ問題はどうやって調べるかなのだ。別世界に行くときに何を思ったのか、別世界で何を見ていたのか、いずれにしても記憶に残っていない。
その存在を示しているものは、亡くなった少女の残した日記とノート、そして自らが残したノートしかないのだ。
そしてその別世界にいったのではないかと自覚しているのは、僕ともう1人の江藤結衣だけだということだ。手がかりが多い方がいいし、僕はもう1人の少女に会って協力をお願いすることにした。

彼女に会いにいくと、もう1人の江藤結衣は驚いたように、
「ノートは返したのに、まだ何かあるの。」と少し不満げだった。
これからのお願いを言いにくい感じではあったか、
「別世界の存在を調べたいと思っているから協力してとらえないか。」と、もう1つの理由は伝えることなく聞いてみた。
「えっ。本気で言ってるの。そもそも調べる手段がないじゃない。無理無理。」
「そんなことは分かってる。ただ本当にあるか分からないけど、その存在を理解しているのは君と僕だけなんだよ。うっすらとした記憶に何か残っているかも知れないし、他の人にお願いしたら、僕がおかしい人だと思われるだけでしょ。」
「嫌なら無理にはお願いしないけど。」
彼女はしばらく考えたあと。
「わかった。おもしろそうだからやるわ。」
「でも何から始めればいいの。」
その通りなのだ。僕自身も何をどう始めればいいのか見当もつかない。
「何か記憶に残っていることで、おかしな点はない。」
僕自身の記憶としては、別世界のことはノートの範囲しかわからない。別世界に行くことになったキッカケも分からなければ、戻った時の状態が前のままなのかも定かではない。周りの家族や友人にも変わった様子は感じられない。
「変わったのは、僕自身の記憶やノートに書いてあることが事実なのかを、自分自身に自信がもてないことくらいだ。」
「なにそれ。全然ダメじゃない。」
「そういう自分はどうなんだよ。」
彼女の話も僕と同じような感じで、別世界前後の記憶がハッキリしていないようだ。
「でも何か今の自分がこうだったのか自信がもてない。何か違和感を感じるのよね。」
「結局、僕と同じじゃないか。」
これじゃ何も始まらないと顔を合わせて笑っていたのだった。
その後、彼女とは頻繁に会い何かキッカケになることはないか、記憶を呼び戻すためにいろいろ話をしていたが、一向に変化が見られなかった。
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