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邂逅
食べきれないスパゲッティ 3
しおりを挟む「・・・・・・・・・・・は?なんだこれは?希井。」
「便器だ。」
「それは見れば分かるが・・・そうじゃなくて、転送装置はここにはないのか。」
「そこにある便器が、転送装置だ。」
「ええ・・。もっとこう、なんというか、ワープ用の球体を発生させるいかにも近未来的な機械とか、いかにも『異世界の扉』みたいなやつとか、そういったものはないのか。」
「ない。」
「じゃあこいつでどうやって4次元世界に行くんだ。」
「ズボンとパンツを脱いでもらって、その便器の上に座る。そしたら、お尻から便器の中に吸い込まれていくから、そのまま便器の中に入っていけばいい。」
ああ、なんという情けない恰好での転送なんだ。もっと高エネルギーをバチバチさせて、ダイナミックにカッコよくやるものかと思っていた万金は、大きなため息をついた。
「なんだそのため息は。万金。いいか、便器というのは重力をコントロールするのに最も適した形をしているんだ。見ろ!このすり鉢状の形状を!万物が一転に向かって吸い込まれていくとても合理的な形だ!『人口ブラックホール』という人智を超えた馬鹿みたいな存在を作り出すんだ、形状に贅沢など言ってられるか!」
最終調整の忙しさも相まってか、稀井はやや切れ気味にしゃべっている。
「わかったよ。じゃあ俺はお尻を出して座っていればいいのか?」
「そうだな。おケツを出してしばらくリラックスしておいてくれ。」
万金は言われるがままに便器の上に座った。こんな転送あるか?こっちは家庭も顧みず出てきたってのに、半ケツでワープしろだなんて。ちっとも納得できない。
座ってから10秒ほど経つと、転送シーケンスが開始された。物凄い爆音と振動だ。万金は便器の上で激しく揺れている。万金は股の間から便器の中を覗くと、便器の中にそれを見つけた。特異点。時空と空間の定義ができない、もはやこの世界の理では説明できない場所。一切の光を逃がさないため、もはや黒というより”無”だ。強力な重力の影響で便器自体も歪んで見える。
「ぅおおおお!稀井!これ、大丈夫なんだろうな!」
バチバチとなり散らすエネルギー音のなかに微かに稀井の声が聞こえる。
「・・・mんだい無い。・・・・制御h・・・正常・・・・」
もう無線が使い物にならない。そうこうしているうちに便器が俺を包み込む様にして広がっていった。便器が大きくなったのか、俺が小さくなったのかは分からない。もう視界に映るすべての物の輪郭がぐちゃぐちゃだ。
便器の中に、落ちていく。便器のなかにはだだっ広い空間が広がっていた。陶器の壁が、上下左右に、東京ドームくらいの空間に広がっている。その中央に例のブラックホールがある。膠着円盤からは強烈なX線やら可視光線やらが発せられていて非常にまぶしい。
そこに向かって、万金は引き寄せられていく。手足が引っ張られ、飴細工のように伸ばされていく。10m、20m、と伸ばされていく自分の体。痛くはないが、気味が悪い。
掴まるものもなく、万金はどんどん中央の特異点に引き寄せられる。
そして中央の特異点に触れた時、万金の体は、砂の様に、粉の様に、霧散していった。
「うぉおおぉぉ・・・・・」
叫びとともに、万金はこの世から消滅した。
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