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作戦

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 作戦で必要となる実験は無事成功。
あとは準備を進めるだけ。
 まずは武器である鉄パイプと包丁の手入れをしておく。
鉄パイプに異常はない。相変わらず鈍色に輝いていて惚れ惚れする。
 青アリとの戦闘で虫の体液を浴びたせいで少し変色してるけど、強度は落ちていないはずだ。
愛着も湧いてきたし、名前でも付けてみようかな。

「えーと、オーソドックスにエクスカリバー?完全に名前負けしてるよね」

 アニメや漫画から取るのはやめてカイシキにした。
由来は灰色を音読みにしただけ。
見た目通りの名前だけど、悪くないと思う。


 ついでに強化しておきたいけど、変に弄る必要はなさそう。
強いて言えば持ちやすくするぐらいだ。  
 空洞に何か詰めることも考えたけど、重くなるからやめた。
今の重さが一番取り回しがいい。
 体重を掛けて、本気で振り下ろせば、重さぐらいカバーできる。
結局、強化は持ち手の部分に落ちてあったボロ布を巻いて滑らないようにするだけに留めておいた。


 包丁も錆を落としただけ。
研ぎ直しはできなかったけど、これでも突き刺すくらいはできる。
 元が元だから強度は高くない。武器として使えるのはおそらく一回が限度だ。
それでも急所を突けば一殺ぐらいはできるだろう。


 メインウェポンはカイシキだ。
包丁はサブウェポン。カイシキを振り回せないぐらい至近距離まで接近された場合に使う予定だ。


 武器の整備が終わった。次はバリケードを作成する。
積む場所は広間に続く通路。その最後の隔壁から10mほど離れた場所。
材料は各部屋にあった価値がまったくないガラクタたちだ。
 このガラクタたちはレアリティがない。ゴミのように無星ではなく存在しないのだ。
レアリティの存在しないアイテムは練成によってLCクズにできないので、節約せずに大胆に使おう。


 バリケードの作成はこの作戦の肝の一つ。
適当に積むんじゃなく、ガラクタたちが組み合うように考えながら積んでいく。
 全てのガラクタを使ったおかげで中々良いバリケードを作成することができた。
これなら怪物も易々と突破できないだろう。


 一番工夫したのは中央の四角い穴。
これのおかげでバリケードの反対側にも崩さずに行ける。
 僕でギリギリ通れるくらいだから、怪物は通れないだろう。
作戦実行時はちゃんと閉じるように設計したので問題はない。


 ボロ布を集めて作ったロープも予定通りの長さへ達した。
他の準備も完了したので作戦を実行しよう。
 この作戦は不完全で賭けの要素が多い。
その中でも作戦のファーストステップは行き当たりばったりだ。
 

 まずは広場への隔壁を管制室で開ける。
すぐにバリケードまで走り、穴をくぐって広場の方へ。
 隔壁の真下に仕掛けを施しておいた空箱を置く。
怪物に気付かれる前にバリケードの向こう側へ戻った。
 再び管制室で最後の隔壁を下ろす操作をする。
またバリケードへ全力疾走。


「よし!怪物がいない」

 この段階で怪物に遭遇したら、作戦は失敗だった。
ボロ布ロープを手に取る。
ロープの先はさっきの空箱に繋がっている。


「怪物!食べれるものなら食べてみろ!」

 腹の底から大声を出した。
何度も怪物が来るまで叫び続ける。
 叫んでいて思ったんだけど、あの怪物って耳があるのかな。
無かったらこの作戦は破綻する。


 作戦の致命的な問題点に気付いた時、怪物が現れた。
よかった。耳があったみたいだ。
 怪物はこちらに気付くと、突撃してきた。
腕が伸びるといっても無限じゃないようだ。

「通った。今だ!」

ロープを引くと、結び付けられていた箱が引き寄せられる。
その瞬間、広場への隔壁が下りた。


「よし!分断成功」

 隔壁にはセンサーがあるらしく、下に物があると下ろすことができなくなる。
人を挟まない為の機能なんだと思う。今回は箱があったせいで、隔壁は下りていなかった。
 今作戦は隔壁の真下に物を置いて、怪物を誘導、ポイントを通過したら物を取り除くといったモノだ。
こうすることで管制室じゃなくても隔壁をタイミングよく下ろすことができる。
ちゃんとリハーサルを繰り返したおかげでちゃんと成功した。


 実験っていうのは隔壁の操作が解除されないかのチェック。
隔壁を下ろすことができない状態が続いた場合、操作自体がキャンセルになる可能性があった。
実験した結果は30分以上続いても、操作はキャンセルされることはなかった。


 ここまでが作戦のファーストステップ、分断だ。
向こうの方が強いのに1対2なんてできない。そのために分断の策を取る必要があった。
 怪物はバリケードを壊そうと爪を振るっていた。
目を離さずに後退を始める。


 セカンドステップの舞台はここじゃない。
バリケードは徐々に壊れているから時期に突破されるけど、時間稼ぎにはなる。
この隙に次の舞台へ移動しよう。


 本日四回目の全力疾走。疲れているので速度は落ちているけど何とか間に合った。
置いておいた箱を持ち上げ、怪物が来るのを待つ。
 なんでここまで下がったのかというと、この通路の幅は他の場所よりも狭くなっているからだ。
ここならどんなに素早くても回避ができない。
さあ、早く来い!
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