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霧の魔

要塞機とヴィニア2

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 一つの集団を全滅させても、次のゴブリンの集団が断続的に出現し続け、全ての撃退するのに一時間は掛かった。
僕らが倒したのだけでも100体以上。
他のファルシュが倒した物も含めると300はいたと思う。
 森にいた全てのゴブリンが侵攻してきたのかも。

 
 激戦を終えた僕らは港に控えていた人員と交代し、休憩中。
ガーディフォースと紅霞とフォートレスはいないけど、数は多いから任せても大丈夫だろう。 
 体力の回復のためにポーションを飲みながら、機体の状態のチェックをする。
何度か攻撃を受けてしまったため無傷ではないが、動作に異常が出るほどの大きなダメージは受けていなかった。


 今回の戦闘で使用したのはアシュラのCユニットとシザーアームズと胸部バルカンのみ。
Aユニットは弾薬の温存のために使用しなかった
 胸部バルカンは弾切れ。補給をしておかないと。
その他の兵装に問題は起きていない。


 ガーディフォースは終了。次は紅霞の整備。
紅霞の方へ向かうと、ユラさんとヴィニアさんは一緒に居た。
 彼女たちに近づくと、僕に気付いたヴィニアさんはユラさんの背に隠れた。

「何かやったの?」
「何もしてないよ」
「嘘だ!私にあんな物を渡そうとしただろ!」

 そういえば、コネコのクリーチャー飴をあげようとしたんだっけ。
最近、色々ありすぎて忘れてた。
 
「ごめんね。あれは間違って出したんだ。こっちを渡そうとしたんだ」

 デバイスから普通の飴を取り出し、ヴィニアさんに渡そうとした。しかし、彼女はユラさんの背に隠れたままで渡せなかった。
一旦ユラさんに渡して、彼女から渡してもらった。


 ヴィニアさん……もうヴィニアちゃんでいいや。ユラさんもそう呼んでるし。
 ヴィニアちゃんは依然として僕を警戒していたが、飴をあげたことで多少薄れているようで、背中から出てきてくれた。
 コックピットに乗り込み、紅霞のチェックを開始する。

「どう?」
「問題なし。腕を上げたね」

 ユラさんは稼働による機体への負荷を考えた動きをしていたようで、僕が想定していたよりも消耗は少なかった。
ダメージがある部分も生体金属で出来ている箇所だからポーションですぐに直る。
 武装のヒートダガーは溶断機能はこの戦闘では使用しておらず、投げるなどの無茶な使い方もしてなかったので、損傷はなかった。


 苦無は弾切れ。補給をしておかないと。
苦無は鋳造装置で量産してあるから、まだ数がある。
 整備は苦無の補給とポーションの塗布だけ済みそうだ。
手早く終わらせよう。
 

「ふう。終了っと」
「お疲れさま。はいジュース」
「ありがとう」

 これでやっと休憩ができる。
そういえば、ヴィニアちゃんがいない。
 ユラさんに聞くと、彼女は自分の機体の所に行ったそうだ。
彼女の機体はシルフフォートレス。とても気になる。


 ユラさんと一緒にフォートレスの方へ向かった。
フォートレスは整備中で、メカニックの人たちが弾薬を補給していた。
ヴィニアちゃんは派手に撃ちまくっていたせいで、とても大変そうだ。
 彼らにヴィニアちゃんの居場所を聞くとコックピットで作業中だそうだ。
彼らの許可を貰い、コックピットまで登る。


 コックピットのハッチは開かれており、中から唸り声が聞こえた。
覗くと、ヴィニアちゃんが機体のコンピューターを操作していた。
悩んでいるのか唸り声を上げながら、頭を抱えている。

「忙しそうだから、帰ろうか」
「そうだね」

 邪魔しないように音を立てず下に降りよう。
そうしたら、ヴィニアちゃんに引き留められた。
正確には僕じゃなくてユラさんだけど、彼女が残るなら僕も残っておく。


「ユラ姉ちゃん!待って。もうすぐ終わりそうだから」

 どう考えても、すぐに終わりそうな感じはしない。
どうやら、システム面で異常が起きているらしい。


「スワロ君がやってあげたら?」
「たぶん出来るけど、まずくないかな?」

 機体のコンピューターには武装の情報など機密があるため、部外者が操作するのは好ましくないはずだ。
これが通常のファルシュなら機密はほとんどないけど、これはシルフフォートレスだ。機密は多い。


 だけど、ヴィニアちゃんはその提案を受け入れた。

「本当?ならよろしく」
「えっ!いいの?」
「大丈夫だって。機密が漏れて困るのは軍だけ、あいつらの邪魔が出来るなら近衛隊としてはそっちの方が嬉しいし」

 まずいと思ったメカニックの一人が慌てて止めに入るが、彼女が説得して、僕がすることになった。
軍への嫌がらせになるならと、メカニックの人も納得してくれた。
やっぱり近衛隊と軍、二つの組織の対立は深刻みたい。
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