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風吹く星よ
勲章
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彼は侍女さんの命令でテーブルセットの交換にきたそうだ。
僕たちが壊すことを恐れて、椅子に座ろうとしないから、新しいテーブルセットを準備してくれたらしい。
新しいテーブルセットも高級品だけど、最初の物に比べると安物みたいだ。
執事さんはお茶と焼き菓子をテーブルに並べていく。
彼に侍女さんのことを聞くと、彼女は城の使用人を統括する上級官僚だそうだ。
そんな偉い人がなんで僕らの世話を担当しているんだろう?
お茶と菓子を楽しみながら、侍女さんの帰りを待つ。
二つは勿論、高級品。和三盆さんたちが作ったお菓子に匹敵しているかも。
しばらくすると、分厚い本を抱えて、侍女さんが戻ってきた。
「その本は?」
「勲章についての法が書かれた本です。銀章についても書かれているんです」
本にはしおりが挿まれていた。
本を受け取り、しおりのページを開くと、箇条書きで銀章について説明されていた。
色々と書かれていたが、その中でも注目したのは、授与者への待遇だ。
銀章の持ち主は一等民待遇が約束される。
三等民や二等民は功績を上げ続ければ、昇格出来るが、一等民は違う。
どんなに功績を上げても、一等民にはなることはできない。
一等民の場合、ニ等民や三等と違って、血筋などが問われるからだ。
そのため、ぽっと出であるプレイヤーではどんなに頑張ってもなることはできない。
あくまで待遇が一等民になるだけで、本当に一等民になるわけではない。
一等民には様々な義務が課せられるが銀章は待遇だけなので、僕らは義務を果たす必要はないそうだ。
例えば、一等民は年間に支払う税金が高い。
国に仕えるのなら大幅に免除されるが、外で働くとなると、超高額な税金を毎年払う必要がある。
偉いというは想像するよりもずっと大変なことなのだ。
本には過去の風霊銀賞授与者も書かれていた。
ヴィンディスの歴史に名が残されている有名人が名を連ねていた。
その中にはルドフィー博士もいる。マカラさんのことではなく、ルドフィー技研創始者の方だ。
様々な偉大な発明をしてきた彼が貰っているということは、本当に希少な勲章なのだろう。
他の勲章の情報もある。
勲章の授与条件も書かれてあった。
例えば、勤続勲章。これにも金、銀、銅がある。
国が運営する施設で長期間勤続しると貰える勲章らしい。
金は80年、銀は50年、銅は30年。
少し長いけど、大丈夫。
ヴィンディス人、というよりコスモス・リバイブの住人の寿命は長いから、授与されるまで生き続けることは可能だ。
ただし、寿命の前に死ぬ人の方が圧倒的に多い。
病やモンスターに殺されることがあるからだ。
特に死亡率が高いのは、トラアルカ。
あそこは人体に有害な物質で汚染されている。
抵抗力がある若いうちは大丈夫だけど、年を取り、抵抗力が弱くなると一気に死ぬそうだ。
勤続勲章の話に戻ろう。
この勲章は退職時に効果を発揮する。
勲章があると、退職金が増えるそうだ。
侍女さんによると、銅を授与後、銀まで待たずに退職する人が多く、金まで勤続する人は少数らしい。
勲章の情報の価値は高い。
貸してほしかったが、この本は持ち出し禁止だそうだ。
そこで、紙とペンを用意してもらった。
勤続勲章は無理だけど、プレイヤーにも取得可能な勲章をメモしていく。
メモは終了。
もう王城でやることはない。
そろそろマイグラントに帰ろう。
ピギとヴィニアちゃんが待っているはずだ。
「お待ちください」
準備を整えていると、侍女さんに引き留められた。
「この後、パーティーが催されます。出来れば出席をお願いしたいのですが」
「聞いてませんが」
「先ほど決まりました」
謁見はイフェンさんの教えのおかげで、うまく乗り切れた。
でも、これ以上偉い人の前に行くと、ボロが出てしまう。避けるのが吉だ。
「帰っていいですか?」
「構いません。女王が主催する場合は駄目ですが、今回の主催は法務大臣ですので」
「じゃあ帰ります」
部屋から出ようとすると、肩を掴まれた。
痛くはないが、振り解かれないようかなりの力で掴まれている。
「欠席なさると、大臣が臍を曲げてしまいます」
「なんだかめんどくさそうな人ですね。出席しないとまずいんですか?」
「それだけのことで、危害を加える狭量な方ではないのですが、しばらく不機嫌になって、正直面倒くさいです。傍で仕える使用人から苦情も来て、私の仕事も増えます。どなたかお一人だけでも出席しては頂けないでしょうか?」
少し悩んだが、侍女さんにはお世話になったし、一人だけ出席させることにした。
誰が出席するかジャンケンで決めることにした。
で、僕が負けてしまった。
僕たちが壊すことを恐れて、椅子に座ろうとしないから、新しいテーブルセットを準備してくれたらしい。
新しいテーブルセットも高級品だけど、最初の物に比べると安物みたいだ。
執事さんはお茶と焼き菓子をテーブルに並べていく。
彼に侍女さんのことを聞くと、彼女は城の使用人を統括する上級官僚だそうだ。
そんな偉い人がなんで僕らの世話を担当しているんだろう?
お茶と菓子を楽しみながら、侍女さんの帰りを待つ。
二つは勿論、高級品。和三盆さんたちが作ったお菓子に匹敵しているかも。
しばらくすると、分厚い本を抱えて、侍女さんが戻ってきた。
「その本は?」
「勲章についての法が書かれた本です。銀章についても書かれているんです」
本にはしおりが挿まれていた。
本を受け取り、しおりのページを開くと、箇条書きで銀章について説明されていた。
色々と書かれていたが、その中でも注目したのは、授与者への待遇だ。
銀章の持ち主は一等民待遇が約束される。
三等民や二等民は功績を上げ続ければ、昇格出来るが、一等民は違う。
どんなに功績を上げても、一等民にはなることはできない。
一等民の場合、ニ等民や三等と違って、血筋などが問われるからだ。
そのため、ぽっと出であるプレイヤーではどんなに頑張ってもなることはできない。
あくまで待遇が一等民になるだけで、本当に一等民になるわけではない。
一等民には様々な義務が課せられるが銀章は待遇だけなので、僕らは義務を果たす必要はないそうだ。
例えば、一等民は年間に支払う税金が高い。
国に仕えるのなら大幅に免除されるが、外で働くとなると、超高額な税金を毎年払う必要がある。
偉いというは想像するよりもずっと大変なことなのだ。
本には過去の風霊銀賞授与者も書かれていた。
ヴィンディスの歴史に名が残されている有名人が名を連ねていた。
その中にはルドフィー博士もいる。マカラさんのことではなく、ルドフィー技研創始者の方だ。
様々な偉大な発明をしてきた彼が貰っているということは、本当に希少な勲章なのだろう。
他の勲章の情報もある。
勲章の授与条件も書かれてあった。
例えば、勤続勲章。これにも金、銀、銅がある。
国が運営する施設で長期間勤続しると貰える勲章らしい。
金は80年、銀は50年、銅は30年。
少し長いけど、大丈夫。
ヴィンディス人、というよりコスモス・リバイブの住人の寿命は長いから、授与されるまで生き続けることは可能だ。
ただし、寿命の前に死ぬ人の方が圧倒的に多い。
病やモンスターに殺されることがあるからだ。
特に死亡率が高いのは、トラアルカ。
あそこは人体に有害な物質で汚染されている。
抵抗力がある若いうちは大丈夫だけど、年を取り、抵抗力が弱くなると一気に死ぬそうだ。
勤続勲章の話に戻ろう。
この勲章は退職時に効果を発揮する。
勲章があると、退職金が増えるそうだ。
侍女さんによると、銅を授与後、銀まで待たずに退職する人が多く、金まで勤続する人は少数らしい。
勲章の情報の価値は高い。
貸してほしかったが、この本は持ち出し禁止だそうだ。
そこで、紙とペンを用意してもらった。
勤続勲章は無理だけど、プレイヤーにも取得可能な勲章をメモしていく。
メモは終了。
もう王城でやることはない。
そろそろマイグラントに帰ろう。
ピギとヴィニアちゃんが待っているはずだ。
「お待ちください」
準備を整えていると、侍女さんに引き留められた。
「この後、パーティーが催されます。出来れば出席をお願いしたいのですが」
「聞いてませんが」
「先ほど決まりました」
謁見はイフェンさんの教えのおかげで、うまく乗り切れた。
でも、これ以上偉い人の前に行くと、ボロが出てしまう。避けるのが吉だ。
「帰っていいですか?」
「構いません。女王が主催する場合は駄目ですが、今回の主催は法務大臣ですので」
「じゃあ帰ります」
部屋から出ようとすると、肩を掴まれた。
痛くはないが、振り解かれないようかなりの力で掴まれている。
「欠席なさると、大臣が臍を曲げてしまいます」
「なんだかめんどくさそうな人ですね。出席しないとまずいんですか?」
「それだけのことで、危害を加える狭量な方ではないのですが、しばらく不機嫌になって、正直面倒くさいです。傍で仕える使用人から苦情も来て、私の仕事も増えます。どなたかお一人だけでも出席しては頂けないでしょうか?」
少し悩んだが、侍女さんにはお世話になったし、一人だけ出席させることにした。
誰が出席するかジャンケンで決めることにした。
で、僕が負けてしまった。
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