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滅びし水晶の惑星
かつての繋がり
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セクション3から上は閉鎖中。
安全が確保でき次第、随時開放するつもりだった。
その予定を狂わしたのは当然コネコだ。
彼はセクション5のミュージアムを陣取ってしまったのだ。
ミュージアムがあることを漏らしたのは失敗だった。
何度も追い出したが、目を離した隙にミュージアムまで戻ってしまう。
結局、僕が折れるしかなかった。
セクション3~5への動線とミュージアムの整備に作業ロボを回して、安全は確保した。
作業の順番が変わっただけだから、全体の工程にほとんど影響はない。
コネコにはチョップ一発で許してあげた。
ミュージアムのついでに展望台の整備も終わらせる。
ユラさんたちからの希望があったからだ。
展望台は全方向がガラス張りになっており、宇宙の星々を眺めることができる。
どうせなので、望遠鏡を設置しておく。
予定とは順番が違うけど、セクション5の整備はかなり進んでいる。
面積は他のセクションと変わりないけど、一つ一つの部屋が大きいから、作業効率が良いのだ。
ただし、同セクションにあるガーデンには絶対に立ち入り禁止だ。
あそこはベース22で今一番、危険なフロアなのである。
除草剤が齎した汚染はかなり酷い。
甲乙は頑張ってくれたが、除染はまだまだ完璧じゃない。
僕は至高の肉体があるから平気だけど、常人は入っただけで、体調が崩れる。
ガーデンの入口はシャッターで閉じられている。
汚染物質を外に漏らさないためだ。
ガーデンへのシャッターを開けると、嫌な空気が漂ってきた。
すぐに中に入り、シャッターを閉じた。
ガーデン内は一体の作業ロボが除染作業を行っていた。
彼は弐拾号。のんびりとした性格をしている。
「除染の調子は?」
「こんな感じです。まだまだ時間が掛かりそうですよ」
これでも除草剤を撒いた直後よりも大分マシになっている。
しかし、こんな土では何も育てることはできない。
除染に使用しているのは、バキュームグラスという名の草だ。
見た目はクローバーに似ている。
生命力は強く、水と空気、そして土さえあればどんな場所でも育つ。
除草剤がまだ残っているはずの土でもちゃんと芽が出ていた。
この植物は汚染された土地の浄化に使用される。
バキュームという名が示す通り、土に含まれる汚染物質を吸収してくれるのだ。
汚染されていない土地に植えれば、葉っぱは二枚だけ。
汚染度が高い土地に植えると、葉っぱの数が多くなる。
トラアルカで植えた場合、平均で百枚以上の葉っぱが生えてきてしまう。
最高記録は千を超える。
そこはトラアルカの中でも特に汚染が酷い地帯で、人間よりも生命力が強いはずのモンスターでさえ生息できないそうだ。
トラアルカの環境は劣悪。
それゆえに、フラワー姫親衛騎士団が農業施設を占拠したことは大罪なのである。
トラアルカ人が安全な食べ物を求めて、絶え間ない努力で建造した施設を花を作るために占拠するなんて本当に馬鹿げている。
「今、何枚あるのは?」
「ざっと数えましたけど、80枚ぐらいでした」
80枚かぁ。トラアルカよりはマシだけど、十分酷い。
それは見越して、バキュームグラスの種は大量に購入しておいて良かった。
何度も繰り返せば、いずれ土壌は回復するだろう。
栽培には特製の栄養剤を使っている。
ポーションに植物に必要な栄養を加えた物である。
これを使えば、植物の成長速度を格段に早めることができる。
ちょっと前に植えたばかりのバキュームグラスがすでに芽を出しているのはその効果の高さの証明だ。
栄養剤の効果は抜群だけど、野菜などの食物への使用は控えなければならない。
これを使って育てても、スカスカ。野菜の旨味も栄養もほとんどない。
農家の人によると、早く育ちすぎるのが原因らしい。
食物に使用する場合は数倍に希釈しなければならない。それでも若干味が落ちる。
今回は食べないから希釈する必要はなく、原液を種に振り掛けている。
バキュームグラスと栄養剤の相性は最高だった。
他の植物よりもその効果は大きく表れていた。
バキュームグラスの存在はあることを示している。
それは各星の関係性だ。
バキュームグラスは全ての星に存在している。
これはおかしいことだ。
全ての星は生態系が異なるはずなのに、同種の植物が存在していることはありえない。
世界観の考察をしているプレイヤーはかつて、星々の間で交流があったと推測している。
その考えは正しい。ベース22が証明してくれている。
他にも全ての星の罪人の追放先がトラアルカになっていることなどもそれを裏付けしていた。
たぶん、コネクトバインダーの解説文にあった同盟が関わっている気がする。
安全が確保でき次第、随時開放するつもりだった。
その予定を狂わしたのは当然コネコだ。
彼はセクション5のミュージアムを陣取ってしまったのだ。
ミュージアムがあることを漏らしたのは失敗だった。
何度も追い出したが、目を離した隙にミュージアムまで戻ってしまう。
結局、僕が折れるしかなかった。
セクション3~5への動線とミュージアムの整備に作業ロボを回して、安全は確保した。
作業の順番が変わっただけだから、全体の工程にほとんど影響はない。
コネコにはチョップ一発で許してあげた。
ミュージアムのついでに展望台の整備も終わらせる。
ユラさんたちからの希望があったからだ。
展望台は全方向がガラス張りになっており、宇宙の星々を眺めることができる。
どうせなので、望遠鏡を設置しておく。
予定とは順番が違うけど、セクション5の整備はかなり進んでいる。
面積は他のセクションと変わりないけど、一つ一つの部屋が大きいから、作業効率が良いのだ。
ただし、同セクションにあるガーデンには絶対に立ち入り禁止だ。
あそこはベース22で今一番、危険なフロアなのである。
除草剤が齎した汚染はかなり酷い。
甲乙は頑張ってくれたが、除染はまだまだ完璧じゃない。
僕は至高の肉体があるから平気だけど、常人は入っただけで、体調が崩れる。
ガーデンの入口はシャッターで閉じられている。
汚染物質を外に漏らさないためだ。
ガーデンへのシャッターを開けると、嫌な空気が漂ってきた。
すぐに中に入り、シャッターを閉じた。
ガーデン内は一体の作業ロボが除染作業を行っていた。
彼は弐拾号。のんびりとした性格をしている。
「除染の調子は?」
「こんな感じです。まだまだ時間が掛かりそうですよ」
これでも除草剤を撒いた直後よりも大分マシになっている。
しかし、こんな土では何も育てることはできない。
除染に使用しているのは、バキュームグラスという名の草だ。
見た目はクローバーに似ている。
生命力は強く、水と空気、そして土さえあればどんな場所でも育つ。
除草剤がまだ残っているはずの土でもちゃんと芽が出ていた。
この植物は汚染された土地の浄化に使用される。
バキュームという名が示す通り、土に含まれる汚染物質を吸収してくれるのだ。
汚染されていない土地に植えれば、葉っぱは二枚だけ。
汚染度が高い土地に植えると、葉っぱの数が多くなる。
トラアルカで植えた場合、平均で百枚以上の葉っぱが生えてきてしまう。
最高記録は千を超える。
そこはトラアルカの中でも特に汚染が酷い地帯で、人間よりも生命力が強いはずのモンスターでさえ生息できないそうだ。
トラアルカの環境は劣悪。
それゆえに、フラワー姫親衛騎士団が農業施設を占拠したことは大罪なのである。
トラアルカ人が安全な食べ物を求めて、絶え間ない努力で建造した施設を花を作るために占拠するなんて本当に馬鹿げている。
「今、何枚あるのは?」
「ざっと数えましたけど、80枚ぐらいでした」
80枚かぁ。トラアルカよりはマシだけど、十分酷い。
それは見越して、バキュームグラスの種は大量に購入しておいて良かった。
何度も繰り返せば、いずれ土壌は回復するだろう。
栽培には特製の栄養剤を使っている。
ポーションに植物に必要な栄養を加えた物である。
これを使えば、植物の成長速度を格段に早めることができる。
ちょっと前に植えたばかりのバキュームグラスがすでに芽を出しているのはその効果の高さの証明だ。
栄養剤の効果は抜群だけど、野菜などの食物への使用は控えなければならない。
これを使って育てても、スカスカ。野菜の旨味も栄養もほとんどない。
農家の人によると、早く育ちすぎるのが原因らしい。
食物に使用する場合は数倍に希釈しなければならない。それでも若干味が落ちる。
今回は食べないから希釈する必要はなく、原液を種に振り掛けている。
バキュームグラスと栄養剤の相性は最高だった。
他の植物よりもその効果は大きく表れていた。
バキュームグラスの存在はあることを示している。
それは各星の関係性だ。
バキュームグラスは全ての星に存在している。
これはおかしいことだ。
全ての星は生態系が異なるはずなのに、同種の植物が存在していることはありえない。
世界観の考察をしているプレイヤーはかつて、星々の間で交流があったと推測している。
その考えは正しい。ベース22が証明してくれている。
他にも全ての星の罪人の追放先がトラアルカになっていることなどもそれを裏付けしていた。
たぶん、コネクトバインダーの解説文にあった同盟が関わっている気がする。
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